積立投資の効果は、運用成績トップ3の投信会社も認めるところだ。しかし、積立投資信託はリターンが見えにくいため敬遠されやすい。シミュレーションを用いて、積立投資信託の複利の効果を利回りごとに試算する方法を紹介する。
積立式の投資信託は事前にシミュレーションして投資計画を立てたい
積立投資信託は、毎月、毎週など一定期間ごとに自動的に投資信託の買い付けをおこなう投資方法だ。少額から始められ時間的リスク分散ができるメリットがある。少しずつ投資して運用するため最終的にいくら積み立てられるのかイメージしにくいが、インターネット上には投資計画をシミュレーションできるツールが多く公開されているので活用したい。
投資信託の最終積立金額をシミュレーションするには、「毎月の投資金額」・「想定利回り(年率)」・「積立期間」といったパラメーターの設定が必要だ。ひと月の投資金額と積立期間は資金が必要となるライフイベントに合わせて設定すればよいが、問題は想定利回りだ。想定利回りはこちらの希望的観測ではなく、現実的に期待できる水準で設定したい。
投資信託の積立シミュレーションで用いる「想定利回り」の目安
投資信託は資産の種類(アセットクラス)によって平均利回りが大きく異なる。アセットクラスとは、投資対象が国内株式なのか海外株式なのかといった違いのことだ。インデックス型の投資信託は特定の株価指数に連動するものが多く、株価指数の過去データを参照すればおおよその平均利回りを推測できる。千葉銀行の試算によると、それぞれのアセットクラスの投資信託を過去20年間運用した場合の税引き後の平均利回りは以下のようになっている。
・TOPIX(国内株式)……1.17%
・MSCI World Index(先進国株式)……2.19%
・MSCI Emerging Markets Index(新興国株式)……3.10%
・S&P500(米国株式)……3.26%
・MSCI ACWI Index(全世界株式)……3.05%
カッコ内は該当するアセットクラスを示す。アセットクラスが複数あるバランス型や、特定の指標に連動しないアクティブ型の投資信託は試算から除外されている。
驚くべきことに、20年の間にはリーマンショックなど大きな市場変動もあったにもかかわらず、いずれの指数もプラス利回りとなっている。実績データに基づく予測なので今後の運用益を保証するものではないが、長期投資による複利の効果と、積立投資による時間分散効果がうかがえる結果といえる。
積立投資信託を20年運用した場合をシミュレーション
先ほどの想定利回りを使用し、月々3万円を20年間(元本720万円)積立投資した場合、それぞれのアセットクラスでは最終的にどのくらいの積立金額になるのか、運用イメージを示したものが次だ。
・国内株式(1.17%)→810万7,706円
・先進国株式(2.19%)→902万4,435円
・新興国株(3.10%)→995万7,397円
・米国株式(3.26%)→1,013万3,886円
・全世界株式(3.05%)→990万3,041円
平均利回りのわずかな違いが、最終積立金額に大きな差を生むことが分かる。国内株式のみが対象の投資信託だと運用収益は100万円に満たないが、米国株式連動型だと280万円のプラスになる。国内株式と先進国株式の最終積立金額に90万円もの差があることを考えると、利回り1%の違いがいかに大きいか実感できるだろう。
月3万円20年間の積立投資は、利回りが年率3.14%を超えれば1,000万円貯まる。ひとつの目安として覚えておきたい。
積立投資で資産増に必要なのは「利回り」よりも「投資額」
積立投資でいつまでにいくら貯めたいという目標がある場合、最終的な資産を増やすには「利回りの高い商品を選ぶ」か「毎月の投資額を増やす」しかない。しかし、利回りの高い投資信託をそう簡単に見つけられるのなら誰も苦労しない。先ほどの積立金額の予測もリターンを保証するものではなく、いつマイナスに転じてもおかしくないのが投資の世界だ。
実は、リターンを重視するより投資額を増やすほうが確実に資産形成できる。月々の投資額を少し増やす効果は侮れないのだ。たとえば、月3万円・利回り3%、月3万5,000円・利回り2%でそれぞれ20年間運用したシミュレーション結果は以下のようになる。
月3万円・利回り3%→最終積立金額:984万9,060円
月3万5,000円・利回り2%→最終積立金額:1,031万7,889円
そもそも、利回りは不確実性の高い要素だ。高利回り商品はそれだけマイナスになるリスクをはらむことを意味する。一方で投資額はわずかな追加で確実に資産を増やすことにつながる。目標額を増やしたい場合は、まずは投資額の見直しをおこなうのがいいだろう。
積立投資をする上で一番大切なのは「継続すること」
積立投資は少ない投資額で気軽に始めることができる。しかも、投資金額はいつでも変更することができ、iDeCoと違って引き出すのも簡単だ。しかし、積立投資の複利効果、リスク分散効果を最大限に生かすためには、何と言っても続けることが最も重要である。
投資信託を積立購入する場合は、一度設定したあとしばらく忘れているくらいがちょうどいい。市場の浮き沈みに左右されずじっくり取り組めるのが大きなメリットだ。
積立投資で大きなリターンを得ることができたとしても、運用益の20.315%を税金で持っていかれることに納得がいかない人もいるだろう。その場合はつみたてNISAを活用してはどうだろうか。つみたてNISAは特定の投資信託から得られる分配金や譲渡益が最長20年間非課税になる制度だ。投資額に上限があるのが残念だが、銘柄が低コスト低リスク商品に限定されているため、初心者でも安心して活用できる。
文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES
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