国や多くの自治体において、事業者を下支えしたり、その事業を発展させたりなど、さまざまな目的で補助金や交付金が給付されている。支給の対象になるのであれば積極的に補助金や交付金を利用したほうが、企業にとっては資金面で有利になる。しかし「補助金と交付金の違いや補助金などを受け取るにはどうすればよいか分からない」という人も少なくないだろう。

そこで今回は補助金と交付金の違いや補助金を受け取るまでの流れについて解説する。

目次

  1. 補助金とは?
    1. 主な補助金例
  2. 交付金とは?
    1. 主な交付金例
  3. 補助金と交付金の違いは?
  4. 補助金を受けるための5ステップ
    1. 1. 補助金を知る
    2. 2. 申請する
    3. 3. 補助金交付の決定
    4. 4. 事業の実施
    5. 5. 補助金の交付
  5. 補助金を探せるサイト2選
    1. 1. ミラサポ
    2. 2. J-Net21
  6. 補助金を受け取る際の注意点5つ
    1. 1. 提出書類に注意する
    2. 2. 資金繰りに注意する
    3. 3. 当初の事業内容とずれないように注意する
    4. 4. 募集期間と事業期間に注意する
    5. 5. 補助金受給後のモニタリング期間に注意する
  7. 補助金の審査を通過する書類作成のポイント5つ
    1. ・補助金を使って実行したい事業の内容を具体化する
    2. ・事業に合った補助金を探し、公募要項を確認する
    3. ・実現性の高い事業計画を立てる
    4. ・読んでもらえる工夫をする
    5. ・加点項目に取り組む
  8. 補助金・交付金に関するQ&A
    1. Q1.交付金の種類は?
    2. Q2.支援金とは何? 
    3. Q3.交付金の返済義務は? 
    4. Q4.助成金と補助金の違いは?

補助金とは?

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(写真=Song_about_summer/Shutterstock.com)

補助金とは、国や地方公共団体が特定の事務または事業補助など、各種の行政目的のために交付される金銭その他のもので主に経済産業省が管轄するものを指す。補助金の性格として次の3つが挙げられる。

  1. 公益性があると認められる事務、事業に給付される
  2. その事務、事業の実施に使用するための金銭である
  3. 財政援助の作用を持つ

「財政援助の作用を持つ」とは、返済の義務がないということだ。補助金はあくまで事業の推進を補助することを目的に給付するお金であるため、返済の義務はない。ただし数十万円から数百万円におよぶものまであり、給付を受けるには審査が必要だ。また補助金を給付目的以外に使用した場合には、罰則が科される。

補助金は「技術協力活用型・新興国市場開拓 事業費補助金」「中小企業組合等課題対応支援事業補助金」「伝統的工芸品産業支援補助金」など、さまざまな種類がある。

補助金と似ているものに助成金というものもある。助成金も補助金と同じく国や地方公共団体から給付される返済の義務がない金銭その他のものであるが、厚生労働省が管轄しているのが特徴だ。

助成金は事業というよりも人を雇ったり研究開発をしたりするなどの目的に対して給付される。審査の必要がなく、一定の条件を満たした場合に必ず支給されるのが補助金とは異なる点だ。厳密にいうと補助金と助成金は違うものだが、補助金として支給されるものの中に助成金があったり、その逆のケースもあったりするなど、実質的には同様の意味合いで取り扱われている場合も多い。

主な補助金例

ここで、先に挙げた補助金のほかどのような補助金があるか、いくつか例を紹介しよう。

・ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
物価高などの事業環境の変化への対応や成長分野への投資や賃上げ、海外展開のため、試作品や新サービスの開発、生産プロセスの改善に取り組む中小企業・小規模事業者などに対し、設備投資費などの一部を補助するもの。

申請には6つの枠があり、補助額・補助率は従業員数や補助枠によって異なる。補助額の最大は5,000万円、補助率の最大は3分の2だ。申請枠は「通常枠」のほか、経営状況は厳しいが賃上げや雇用拡大に取り組む「回復型賃上げ・雇用拡大枠」、DXに取り組む「デジタル枠」などがある。

・小規模事業者持続化補助金
販路開拓や生産性向上を目的とした商品開発や店舗改装などに取り組む小規模事業者に対し、かかった費用の最大3分の2を補助するもの。申請枠は「通常枠」「賃金引上げ枠」「創業枠」など5つの枠があり、最大補助額は通常枠が50万円、その他の枠が200万円だ。

・事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・M&Aを行って実行した経営革新に関わる費用、事業承継・M&Aの実施にあたって専門家から受けたサポート費用や廃業に関わる費用について最大3分の2を補助するもの。「経営革新事業」「専門家活用事業」「廃業・再チャレンジ事業」の3事業に分けて募集が行われ、補助額・補助率は事業によって異なる。最大補助額は800万円、最大補助率は3分の2。

・IT導入補助金
売上や業務効率を上げるため、ITツールを導入する中小企業・小規模事業者に対して導入費用の一部を補助するもの。「通常枠」のほか、会計ソフトや受発注ソフトの導入を対象とした「デジタル化基盤導入類型」やセキュリティツールの導入を対象とした「セキュリティ対策推進枠」など、4つの枠がある。

枠によって最大補助額・補助率が異なり、最大補助額は450万円、最大補助率は4分の3。

・サービス付き高齢者向け住宅整備事業補助金
サービス付き高齢者向け住宅として登録される住宅等の建設・改修費に対し、国が民間事業者・社会福祉法人・医療法人等に直接補助をするもの。国の補助に加え、単独で上乗せ補助金を支給する地方自治体もある。

・高校生国際交流促進事業補助金
日本の将来を支えるグローバルに活躍できる人材を育てることを目的に、高校生が外国へ一定期間留学する場合の留学費用の一部を国が都道府県を通して補助するものだ。日本語を学ぶ外国人高校生を受け入れる団体に対する補助金もある。

交付金とは?

交付金とは、国などが特定の目的のもとに交付する金銭のことだ。広い意味で使われる言葉で、補助金も交付金に含まれるという考え方もある。ただし実務上は、交付金といえば国から地方自治体に義務的に交付される金銭のことを指す。地方自治体はそのお金を目的に沿った団体や組合などに対して報償とし一方的に交付する。

交付金は「地域経済循環創造事業交付金」「電源三法交付金(原発交付金)」など多種多様だ。よく交付金と間違えられるものに、負担金というものがある。負担金とは、国に一定の義務や責任のある事務、事業について、国が義務的に負担する給付金のことだ。交付金と異なるのは「負担金は法律で国の負担であることが定められている」という点である。

なお、負担金には地方公共団体の事業費を国が負担するものも含まれているのが特徴だ。また、地方公共団体が各種団体への会費など、法令上の特定の事業に対して一定額を負担するものも負担金とする場合がある。

主な交付金例

交付金の例もいくつか紹介しよう。国が都道府県を通して市区町村や団体に交付するものが多いが、補助金同様に事業者などに対して交付するものもある。

・社会資本整備総合交付金、防災・安全交付金
「社会資本整備総合交付金」は、道路や上下水道、ガスなどインフラ整備に対し、かつては国土交通省から地方公共団体に個別で出していた補助金を2010年に一括化したもの。一括交付することで、地方公共団体はお金の使い道を自治体の状況に合わせて自由に活用でき、地域活性などにつなげることができる。

さらに2022年には、インフラの老朽化や防災対策のための交付金として「防災・安全交付金」を創設した。地方公共団体が立てた整備計画に対し、国が交付金を配分。地方公共団体は配分された範囲内で、各事業に対して自由に交付金を使える。

・地域脱炭素移行・再エネ推進交付金
脱炭素の取り組みを行う地方公共団体に対し、国が複数年にわたって交付金を配分する交付金。支援内容は「脱炭素先行地域への支援」「重点対策に取り組む地域への支援」に分かれている。「脱炭素先行地域への支援」は、再生エネルギー設備や省CO2設備の導入などを進める地方公共団体などが対象。

また「重点対策に取り組む地域への支援」は、「地域脱炭素ロードマップ」に基づく重点対策(自家消費型の太陽光発電、ゼロカーボンドライブなど)について、国の基準以上のレベルで進めている地方公共団体などが対象だ。交付率は2分の1~4分の3。

・運輸事業振興助成交付金
旅客または貨物の輸送の安全確保、サービスの改善および向上、共同利用に供する施設の設置または運営、災害時の物資輸送体制の整備に関する事業等の経費をバス協会やトラック協会に交付するものだ。

・農業次世代人材投資事業交付金
青年の就農意欲の喚起と就農後の定着を図ることを目的に研修中の就農予定者に対し、資金を交付するもの。

補助金と交付金の違いは?

今まで説明してきた補助金と交付金の違いをまとめると、次のようになる。

・補助金
特定の事務または事業を補助するために交付する金銭。奨励、助成的な性質を持つ給付金であり、不正・他用途使用の場合は罰則が科される。

・交付金
特定の目的で交付する金銭。義務負担的性格を持つものが多いが、なかには助成目的で交付する補助的なものもあり交付金が指す範囲は広い。そのうち国に一定の義務もしくは責任のある事務または事業について義務的に負担する給付金で法律上国の負担が明定されているものが「負担金」だ。

補助金と交付金の違い

上記は、一般的なものをまとめた表だ。名称は補助金だが内容は助成金であるなど、使われている名称が混在したり、特別な補助金や交付金には特定の条件があったりする。そのため、あくまでも目安として利用し、詳細は各補助金や交付金の内容を都度確認することが必要だ。

補助金を受けるための5ステップ

支給の対象が一般企業となっているものは、交付金よりも補助金のほうがはるかに多い。そこで補助金を受けるための一般的なプロセスについて解説していく。主な流れは下記の5つだ。

  1. 補助金を知る
  2. 申請する
  3. 補助金交付の決定
  4. 事業の実施
  5. 補助金の交付

以下、それぞれの詳細を解説する。

1. 補助金を知る

まずは「補助金とはどのようなものか」「自社に合った補助金があるのか」などを知るところから始めることが必要だ。国土交通省や経済産業省、内閣府などの各省庁、都道府県や市区町村などの地方自治体のホームページには、現在募集している補助金の情報が掲載されている。自社が行っている事業に関係する省庁や所在地の自治体のホームページを常に確認し、補助金の情報を得ることが重要だ。また後述するように補助金の情報をまとめたホームページなどもある。

2. 申請する

申請したい補助金を見つけたら、申請書を作成して事務局などに申請を行う。申請書の用紙や募集要項などは、助成金のホームページからダウンロードが可能だ。募集要項には必要書類や申請の期限などの詳しい内容が記載されているため、申請前に不備がないか十分に確認しておこう。

3. 補助金交付の決定

補助金の申請が終わったら、事務局が補助金を交付する企業を決定する。ただし、決定までには以下のような3つのプロセスを踏むことが必要だ。

・審査
事務局は受け取った申請書を受理し、内容を審査する。多くの場合、審査委員会を別で設けて審査を行う。申告書の内容をもとに審査を行い、交付を受ける事業(企業)を選定する。

・採択
「審査が通れば終わり」というわけではなく、選定された企業はその後何回か事務局とやりとりを行う。各補助金事務局から、選定結果通知とともに補助金交付規程や補助金交付申請書を受け取る。補助金交付規程を確認したら、補助金交付申請書と経費相見積もり(書)を作成。作成した書類を再度、補助金事務局に提出する。

・交付
補助金事務局は、提出された補助金交付申請書と経費相見積もり(書)を確認し、問題がなければ交付決定通知書を発行。この交付決定通知書を受け取ると、補助金交付の決定となる。

4. 事業の実施

補助金は、該当事業を実施して初めて交付される。そのため、該当事業はまず自己資金で行うことになるのだ。交付決定された内容で事業をスタートし、事業の途中で実施状況について事務局のチェックを受けなければならない。原則、交付時の計画を勝手に変更することはできないため、途中で変更が必要な場合は補助金事務局へ計画変更申請を行い、審査・承認される必要がある。

5. 補助金の交付

事業が終了したら、実施した内容やかかった経費を報告するため、実績報告書や経費エビデンス(証跡)を作成し、補助金事務局に提出する。

※補助金の対象となる経費に関しては、領収書などの証拠書類を保管しておかなければならない。

補助金事務局は、提出された書類をもとに実施状況を確認。その際にヒアリングなどが行われることもある。きちんと実施されたと確認されれば、補助金の額が確定し、補助金額確定通知が発行されるという流れだ。補助金額確定通知を受け取ったら請求書を補助金事務局に発行し、補助金の受け取りが可能になる。

なお補助金の交付後も一定期間は補助金の対象となる領収書や証拠書類の保管、定期的な事業状況の報告が必要になるため、念頭に置いておこう。今回紹介したプロセスは、あくまで一般的な流れである。補助金の種類によっては、プロセスが異なる場合もあるので注意が必要だ。

※助成金の場合は、審査など一定のプロセスが省略される。ただし実際には補助金と助成金の名称が混在している支給も多いため、助成金という名称でも審査が必要なケースもある。

補助金を探せるサイト2選

補助金や助成金は、原則として各省庁や地方自治体などのホームページに公表されている。あらかじめ申し込みたい補助金や助成金が分かっている場合は、すぐに目当ての情報にたどり着くことができるだろう。しかしそうでない場合は複数のホームページを確認しないといけないため、手間や時間がかかってしまいがちだ。

そこで利用したいのが、これらの補助金や助成金の情報がまとめて記載されているサイトだ。補助金や助成金を探せる公的なサイトとして「ミラサポ」と「J-Net21」がある。ここでは、それぞれに詳細を確認しておこう。

1. ミラサポ

「ミラサポ」は中小企業庁の委託事業として、中小企業や小規模事業者向けに事業に役立つ情報を提供しているサイトである。会員登録(無料)をすると、さまざまなコンテンツが利用可能になる。ミラサポでできる主なことは、以下の通りだ。

  • ニュースやメールマガジンなどで、自社に必要な情報が得られる
  • 補助金の虎の巻、公共機関の使い方などで、さまざまな施策やツールについて理解できる
  • 成功事例などで他社の取り組みを知ることができる
  • 年3回まで専門家の派遣や事業展開のサポートツールなどを利用できる
  • よくある質問などで、中小企業の困りごとの解決方法を検索できる

補助金については「ものづくり補助金」「小規模事業者補助金」「IT導入補助金」の3つの情報を確認することが可能だ。詳しくは以下のホームページで確認できる。

「ミラサポ」TOPページ
「ミラサポ」補助金・助成金ヘッドライン

2. J-Net21

「J-Net21」は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する中小企業や小規模事業者、創業予定者向けのポータルサイト。公的機関の支援情報が中心となっているが、その他にも経営に関するQ&Aや、数多くの企業事例などが利用できる。「J-Net21」で注目したいのが、支援情報ヘッドラインだ。支援情報ヘッドラインでは、国や都道府県等の中小企業向けの支援施策情報がまとめられている。以下のような情報が検索可能だ。

  • セミナー・イベント
  • 補助金・助成金・公募
  • 調査・報告書・お知らせ

このうち「補助金・助成金・公募」は、もともとミラサポで検索が可能だったが、2019年8月時点では支援情報ヘッドラインに統合されている。各省庁や地方公共団体のホームページなど、複数のサイトへ補助金の情報を確認しにいく手間が省けるので便利だ。詳しくは以下のホームページで確認できる。

「J-Net21」TOPページ
「J-Net21」支援情報ヘッドライン

返済の必要のない補助金や交付金は、企業にとても有利な制度である。しかし、自ら情報を獲得していかないと、知らないまま募集期限が過ぎてしまうことも多い。自社に必要な補助金を逃さないためにも、補助金と交付金の違いや注意点を理解し「ミラサポ」や「J-Net21」などのホームページで、常に補助金などの情報を確認しておきたい。

補助金を受け取る際の注意点5つ

ここまでは補助金を受け取るまでの流れについて解説してきた。補助金を受け取るまでには多くのプロセスがあるが、手続きが若干複雑になっているため、注意すべき点がいくつかある。ここでは補助金を受け取る際の主な注意点を5つ説明していく。

  1. 提出書類に注意する
  2. 資金繰りに注意する
  3. 当初の事業内容とずれないように注意する
  4. 募集期間と事業期間に注意する
  5. 補助金受給後のモニタリング期間に注意する

1. 提出書類に注意する

補助金の申請から交付を受け取るまでには、各プロセスでいくつもの書類を提出する必要がある。提出書類に漏れがあると、補助金の交付までに時間がかかったり、そもそも補助金の交付が受けられなかったりする可能性も出てくるのだ。そのため必ず要項などを確認して提出書類の漏れを防ぐことが重要となる。プロセスごとの一般的な提出書類は、以下の通りである。

補助金と交付金の違い

2. 資金繰りに注意する

補助金は、事業を実施しない限りは交付されない。そのため先に経費の出費が生じ、中には数百万円程度の先払いが必要になることもある。補助金の対象になる事業以外にも、通常の事業の経費や給料の支払いなどの出費があるのが一般的だ。そこで資金繰りが悪くならないように、きちんと資金計画を立てておくことが重要になる。

また当初の資金計画とずれが生じた場合は、金融機関からの融資が必要なのかどうかを精査し、資金がショートしないような対策を立てておくことも必要だ。

3. 当初の事業内容とずれないように注意する

補助金を受けるには、最初に申請を行い補助金交付が決定したのち実際に事業を行う。そのため最初の計画と実施後の事業内容にずれが生じてしまう場合もあるだろう。もし補助金を本来の目的や趣旨と違った使い方をした場合には、補助金が出なかったり、補助金の一部を返納することが必要だったりすることもある。

そのため事業を実施していくうちに当初の事業内容とずれが生じそうになった場合は、できるだけ早く補助金事務局などの関係機関に相談することが肝要だ。疑問点や不安な点がある場合も同様である。せっかくの補助金だからこそ、有効に活用するため抜けがないように注意したい。

4. 募集期間と事業期間に注意する

補助金を受けるためには、対象の補助金のスケジュールに合わせることが必須である。その中で特に注意が必要なのが、募集期間と事業期間だ。

・募集期間
募集期間とは、補助金の申し込みを受け付ける期間のことである。補助金の中には、募集期間が1ヵ月程度と短いものも多い。補助金を知ったのが募集期間の途中であった場合は、締め切りまでさらに短期間となってしまうことも考えられる。補助金の募集を知ってから事業の計画を立てていたのでは、間に合わない可能性もあるのだ。

そこで「普段からどのような事業をしたいのか」といった構想や、計画を立てておくことが重要になる。そのうえで該当する補助金があれば事業を実行すると考えておけば、募集期間が短くてもスムーズに申し込めるだろう。

・事業期間
事業期間とは、補助金の事業を行う期間のことである。具体的には、補助金の交付決定通知がされてからの期間のことを指す。ただし、事業期間外で支出した経費は補助金の対象にならないため、注意が必要だ。補助金の交付決定通知がされる前に支出した経費や、事業期間終了後に支出した経費には、補助金が出ない。そのため、事業期間で支出できるように留意し、あらかじめ計画しておくことが重要になる。

5. 補助金受給後のモニタリング期間に注意する

補助金を受けるための注意点は、受給前だけではなく受給後にもある。例えば、補助金受給後のモニタリング期間だ。補助金受給後には、5年間程度のモニタリング期間がある。本来、補助金は公益性があると認められる事業に給付されるものだ。事業期間にだけ公益性があり、補助金を受け取った後に公益性がなくなったのでは、当初の目的と違ってしまう。

そこで補助金受給後にモニタリング期間を設け、この間に一定以上の収益が認められた場合は補助金の額を上限として国に納付する仕組みになっている。モニタリング期間については、一定以上の利益を計上しないようにチェックしていくことも必要だ。

補助金の審査を通過する書類作成のポイント5つ

補助金の審査を通過するには、応募申請書や事業計画書をしっかりと作成することが重要だ。ここでは、書類作成のポイントを5つ挙げる。

・補助金を使って実行したい事業の内容を具体化する

自社の現状分析を行って課題を洗い出し、課題を解決するために補助金を使ってどのような事業を行うか明らかにする。補助金は、従業員の賃金アップや生産性向上、IT導入など社会的な意義のある事業が対象となっていることが多い。そのため社会貢献につながるような事業を立案する必要がある。

・事業に合った補助金を探し、公募要項を確認する

立案する事業に合った補助金をピックアップし、公募要項に記載されている対象事業者や補助金の目的、スケジュール、対象となる経費・ならない経費などをチェック。事業と補助金の目的が合致し、自社が対象事業者であることを確認したら応募申請書や事業計画書を作成する。

対象事業者には、業種や会社の規模などの要件があるため、注意したい。対象となる経費・ならない経費の把握は、事業に必要な予算を組むうえで重要だ。

・実現性の高い事業計画を立てる

事業の目標やスケジュール、予算を立てて応募申請書や事業計画書を作成することになるが、実現できそうなスケジュールや「賃金〇%アップを目指す」といった目標数値を示しておきたいところだ。実現性の高さを審査員に印象づけることができれば、審査に通過する可能性も高くなる。

・読んでもらえる工夫をする

実現性の高さを印象づけることに加え、読んでもらうことを意識した応募申請書や事業計画書を作成しよう。自社の現状分析から事業計画の立案、補助金を活用して事業を行うことで実現したいことに至るまで、これまで考えた過程を審査員に伝わるように分かりやすい表現を心がけたい。図や表なども活用するとよいだろう。

・加点項目に取り組む

加点項目とは、審査時に加点される項目だ。例えば、ものづくり補助金には「成長性加点」「政策加点」「災害等加点」など5つの加点項目がある。災害等加点は「事業継続力強化計画」とよばれる自然災害などに対する防災・減災計画書を策定し、経済産業大臣から認定されることで受けられる加点だ。

加点項目をクリアするには、時間がかかるものもあるが、すぐに取り組めるものもある。自社にできそうな項目があれば、積極的に取り組んで審査を通過する可能性を高めよう。

補助金・交付金に関するQ&A

Q1.交付金の種類は?

A.交付金とは、国または地方自治体が特定の目的で一方的に交付する金銭のことを指す。交付金の支給は、法令又は条例、規則等に基づき行われる。例えば地方公共団体の事務を委託している団体あるいは組合等に対して当該事務の報償として交付されるといった具合だ。交付金の範囲は広く、分類の仕方によってもその種類は変わってくる。

交付金の性格で分類すると大きく次の2種類に分けられる。

・義務負担的性格を持つ交付金
・助成を目的とする補助的性格を持つ交付金

また使途で分類すると大きく次の2種類がある。

・使途の特定されない一般交付金
・使途の特定された特定補助金

支給先で分類すると以下のように種類も増える。

・国から地方自治体(都道府県)へ支給する交付金
・国が都道府県を通して市町村へ支給する交付金
・国が都道府県を通して特定団体や企業に支給する交付金
・都道府県から個人へ支給する交付金、など

Q2.支援金とは何? 

A. 支援金とは、その名が示す通り、災害などに遭った機関や団体、企業、個人などに対して支援(サポート)することを目的として支給するお金だ。支援金と一口にいっても種類は多種多様だが、基本的な特徴として次のような点が挙げられる。

・被災者(団体・企業)自身または支援活動をする機関・団体を応援するために支給するお金
・一時支援金や月次支援金のように支給対象や条件が定められているものもあるが、基本的に支援金の使途は支援先団体等に任せられる。ただし支援金の使途や収支の報告を行うなど透明性の確保は大切

近年でいえば、以下のようなものがある。

・一時支援金や月次支援金
コロナ禍での緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業、不要不急の外出・移動の自粛などの影響を受けて売上が減少した企業や個人事業者、フリーランスの人などの事業継続支援として支給された。

・被災者生活再建支援制度
自然災害などによる被害地の復興・復旧のための支援金

Q3.交付金の返済義務は? 

A. 交付金は、国・地方自治体または、国が地方自治体を通して団体・企業・個人などに「一方的」「義務的」に交付する金銭のことである。そのため交付金を受給した者は、その金銭を返済する必要はない。ただし交付金は、特定の目的で支給されるものであるため、基本的に使途や成果などの報告義務がある。

支給金額は、少額のものから億円単位まで、複数年にまたがる事業であれば交付金も複数年に分けて支給されることを考えると返済不要の事業資金としてうまく活用したいものだ。自社の事業活動にあった交付金があるかどうかを調べてみるといいだろう。ちなみに特定の目的とは、例えば地域活性化や地方創生、防災・復興、教育などの地域経済への貢献などが主となっている。

Q4.助成金と補助金の違いは?

A.助成金も補助金も国や地方公共団体、民間団体などから支給されるお金のことであり、受給のためには申請や審査が必要だ。しかし両者には、受給できる(審査に通る)可能性に大きな違いがある。

補助金と交付金の違い

応募要項をしっかりと確認するだけでなく、制度の内容を熟慮し、提出書類の内容にも細心の注意を払うことが大切だろう。

文・長谷川よう(金融ライター)

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