どのような業界であっても、新規事業の立ち上げにはリスクがつきまとう。ただし、正しいプロセスで計画を立てて、かつ効果的なフレームワークを活用すれば、そのリスクは大きく抑えることが可能だ。今回は、新規事業を立ち上げるメリットやプロセス、成功率を高める考え方などを見ていこう。
目次
新規事業を立ち上げる3つのメリット
新規事業の立ち上げには、どのようなメリットがあるのだろうか。まず、新規事業を立ち上げる3つのメリットを解説する。
メリット1.収益の柱を増やせる
新規事業を立ち上げて収益化に成功すると、会社として収益の柱を増やせる。増収によって、利益を社内に蓄積したり、経営資源(ヒト・モノ)に投資したりできるようになる。結果として、さらなる成長・発展を目指せるだろう。
メリット2.長期的なリスクヘッジになる
世の中のニーズは時代とともに変化し、必要な商品・サービスも変わっていく。
1つの商品・サービスに依存する状況は、会社としては望ましくない。新規事業の立ち上げは事業の多角化につながり、会社として長期的なリスクヘッジとなる。
メリット3.優秀な人材を育成できる
新規事業の立ち上げには、さまざまなプロセスがあり、社員を育成するチャンスも多くなる。
また、新規事業の立ち上げに挑戦する会社には、優秀な人材も集まりやすい。採用戦略においても、新規事業の立ち上げが効果を発揮することがある。
新規事業の立ち上げに必須な6つのプロセス
業種や内容にもよるが、新規事業の立ち上げには多くのコストが発生する。新規事業が軌道に乗らなければ、会社には多額の赤字が残ってしまうため、慎重に計画を立てる必要があるだろう。 そこでまずは、新規事業を立ち上げる際に必須とも言えるプロセスを解説する。
プロセス1.顧客や自分の「課題」を見つける
需要のある新規事業を立ち上げるには、「顧客の課題」を見つけることが必要だ。ターゲット層が抱える課題を解決できる商品・サービスを提供すれば、自然と需要は伸びるはずである。しかし、実際にはモチベーションが先行し過ぎて、「自分たちがやりたいこと」を重視するケースが珍しくない。このような考えで計画を進めると、市場から求められていない商品・サービスを提供してしまう恐れがあるだろう。
顧客の課題を見つける手段としては、「自分自身が抱えている課題」に目を向ける方法が効果的だ。既存の商品やサービス、市場、業界などを確認し、顧客や自分が抱えている課題から、すでに顕在化している需要を見極めていこう。
〇ポイント
・「自分たちがやりたいこと」ではなく、課題を解決できる事業を計画する
・顧客やターゲット層が抱えている課題を見つける
・自分自身が抱えている課題にも目を向ける
プロセス2.事業ドメインを決定する
顕在化している需要を見つけたからと言って、すぐにビジネスプランを立てるべきではない。単なるアイデアで計画を進めると失敗につながるため、データや根拠をもとにひとつずつ組み立てることが重要だ。
そこで次に取り組みたいものが、「事業ドメイン」の決定である。事業ドメインとは事業を展開する領域のことであり、ここを明確にすることで取り組むべき事業内容が見えてくる。事業ドメインの決め方には、具体的な商品・サービスを基点とする「物理的定義」と、顧客のニーズや不満を基点とする「機能的定義」の2種類がある。この説明だけでは少しわかりづらいため、以下でいくつか例を見ていこう。
上記を見てわかる通り、物理的定義は事業内容がわかりやすく、従業員にも方針を伝えやすい。ただし、商品・サービスがすでに明確であるため、将来的に事業規模を拡大・発展させることが難しい点がデメリットだ。
一方で機能的定義をもとにすれば、将来的に商品・サービスを多角化しやすくなる。しかし、従業員に内容が伝わりづらく、場合によっては方向性にブレが生じる恐れもあるため注意が必要だ。つまり、どちらにもメリット・デメリットが存在するので、事業の将来像をしっかりと意識しながら、各ケースに最適な方法で事業ドメインを決定しよう。
〇ポイント
・いきなりビジネスプランを立てるのではなく、まずは事業ドメインを決定する
・事業ドメインの決定方法には、「物理的定義」と「機能的定義」の2種類がある
・商品やサービスを明確にしたい場合は「物理的定義」、将来的に多角化したい場合は「機能的定義」を選ぶ
プロセス3.理念・ビジョンを明確にする
魅力的な理念・ビジョンを持っている企業には、それだけで優秀な人材が集まってくる。また、各メンバーが迷わず同じ方向に進むためにも、経営や事業に関する絶対的な理念は必要だ。ここで重要になるポイントは、理念・ビジョンを「文字化」すること。経営者が頭の中でざっくりとした理念を持っていても、文字化しなければ正確には周りに伝わらない。明確な理念・ビジョンを伝えて、各メンバーがそれに共感してくれれば、企業のポテンシャルは一気にアップするだろう。
また、想定外のトラブルや困難に直面したときにも、理念・ビジョンがしっかりと固まっていれば、本来の目的を常に思い出させてくれるはずだ。
〇ポイント
・各メンバーから共感を得られる、魅力的な理念やビジョンを決める
・正確に周りに伝えるために、理念やビジョンは「文字化」する
プロセス4.「市場性」と「事業性」を見極める
ここまで進めば、新規事業の内容はある程度固まってきただろう。しかし、事業の成功率を少しでも高めるために、分析や予測にも力を入れておきたい。新規事業の立ち上げでは、「市場性」「事業性」の2つの見極めが必要だ。簡単に言い換えれば、「需要がどれくらいあり、どれくらいのお金が動くのか?(=市場性)」や、「顧客のどんな課題を解決し、どんな人であれば絶対に買うのか?(=事業性)」をリサーチすることが重要になる。市場性・事業性を見極めるには、以下で挙げるような点を調べておく必要があるだろう。
上記をもとに分析を進めて、「市場性があるか?」「事業性があるか?」という問いに対する明確な答えを用意できれば、新規事業のビジョンはいよいよ固まりつつある。手間や時間はかかるが、市場性・事業性の分析は基本的なプロセスとなるため、しっかりと力を入れて取り組むようにしよう。
〇ポイント
・事業の成功率を高めるために、「市場性」「事業性」を事前に見極めておく
・市場やターゲット層、事業に関する分析を行う
・「市場性があるか?」「事業性があるか?」という問いに対して、明確な答えを用意する
プロセス5.製品・サービス作りに必要な環境を整える
新規事業を成功させるには、環境を整えることも必要だ。特に以下で挙げるものは、ほとんどの事業で必要な要素と言える。
事業内容によって必要な環境は変わってくるため、まずは「自社の製品・サービス作りに何が必要になるのか?」をひとつずつ洗い出そう。
〇ポイント
・ノウハウやチーム、資金など、新規事業に必要な環境を整える
・新規事業に不足している要素を、ひとつずつ洗い出す
プロセス6.具体的な行動計画を立てる
ビジネスプランが明確になってきたら、最後に「いつ・誰が・何をするのか」という具体的な行動計画を立てていく。行動計画を立てる際には具体性だけではなく、現実性のあるプランを考えることが重要だ。
たとえば、資金調達や設備投資などは、会社によっては長い期間を要することもあるだろう。無理をしてスケジュールを組むと、万全な準備を整えられない可能性があるため、現実的なスケジュールを組まなくてはならない。その点を意識して、今後の行動計画を慎重に考えてみよう。
〇ポイント
・「いつ」「誰が」「何をする」など、具体的な行動計画を立てる
・無理のないスケジュールを組み、現実的な行動計画を意識する
新規事業の立ち上げを成功させるポイント
新規事業の立ち上げを成功させるためには、各プロセスをおろそかにせず、着実にクリアしていくことが重要だ。また、自社の状況や強み・弱みを客観視したうえで、事業戦略を練る必要がある。
しかし、理念・ビジョンの明確化や、市場・事業の見極め、自社・競合の分析にあたって、具体的な方針がわからない方も多いだろう。やみくもに分析をスタートしても、主観的で網羅性のない中途半端な分析になってしまう恐れがある。思考を整理するためにフレームワークの活用も検討したい
新規事業の立ち上げを成功させる5つのビジネスフレームワーク
フレームワークとは、事業計画や課題解決を検討する場合に活用できる分析方法だ。特に重要な5つのビジネスフレームワークを解説していこう。
フレームワーク1.MVV
MVVは「Mission・Vision・Values(使命・未来像・価値観)」の略語であり、理念やビジョンを決めるときに効果的なフレームワークだ。以下の3つの点を考えることで、新規事業の理念やビジョンを明確にできる。
上記の【1】~【3】は、新規事業に携わる各メンバーに共有し、しっかりと理解してもらうことが重要になる。MVVは企業や事業の根幹であり、判断に迷ったときの指針となる部分なので、ひとつずつ丁寧に決めていこう。
たとえば、キリンビールで有名なキリンホールディングスは、次のようなミッション・ビジョン・バリューを掲げている。
企業が果たすべき役割や社員が大切にすべき価値観などが、顧客や従業員に対してわかりやすく明文化されている。
フレームワーク2.ペルソナ分析
これは事業ドメインの決定や、市場性・事業性の分析に役立つフレームワークだ。ペルソナ分析では仮想の顧客(ペルソナ)を想定し、その顧客が求める製品やサービスを考えていく。仮にペルソナ分析をして、需要につながる製品・サービスを立案できれば、新規事業の成功率は高いと判断できるだろう。ただし、ペルソナ分析では「徹底的な調査」が必要になるため、多くの時間を要する点には注意しておきたい。
ペルソナ分析では、想定する顧客の精度を高めることがポイントになる。ペルソナと実際のターゲット層にズレが生じると、需要の高い商品・サービスを作り出すことは難しいため、市場や需要に関する調査は徹底しておこう。
たとえば富士通は、富士通キッズサイトを公開するにあたり、ペルソナを設定している。ペルソナの記述を一部ご紹介してみよう。
ユーザーを満足させるコンテンツの提供に向けて、詳細なペルソナが設定されている。
フレームワーク3.3C分析
市場性・事業性の判断には、自社や競合他社の強み・弱みを見極める「3C分析」が役立つ。3C分析は、以下の3つの観点で分析を行う手法だ。
この3C分析では【2】で自社の強み・弱みを分析した後に、【3】で競合他社と比較することが重要になる。「競合他社にどの部分で勝てるのか?」や「自社の弱みをどの部分で打ち消すのか?」などを意識することで、より勝算のあるビジネスプランに近づけるだろう。
とんかつチェーン店を展開する「かつや」を例に挙げてみる。ファミリー層の外食が増え、競合が女性向けメニューの開発に注力する中、あえて男性客をターゲットにしたメニューに集中することで、男性客の支持を集め大成功を収めた。
市場の変化や競合他社の動向を分析し、自社の強みを客観的にとらえたからこその成功といえるだろう。
フレームワーク4.VRIO分析
「Value・Rarity・Imitability・Organization(経済価値・希少性・模倣困難性・組織)」の4つの観点から、自社の経営資源の強さを判断するためのフレームワーク。これは市場性・事業性の判断に加えて、上記で解説した3C分析をするための手法としても活用できる。
経済価値や希少性の高さは、事業にとって言うまでもなく重要だ。また、ライバルとなる競合他社を増やしすぎないために、「真似をすることが難しい事業(模倣困難性)」も意識しておきたい。最後の「組織」については、商品・サービスをスムーズに販売する仕組みのことを指す。優れた商品・サービスを生み出しても、需要に追いつくだけの生産力がなければ、大きな利益は見込めないだろう。
この4点を満たすプランを考えることは難しいが、いずれの項目も成功に直結する要素であるため、しっかりと押さえておくことが重要だ。
経済価値で成功を収めたのが、ユニクロ(ファーストリテイリング)だ。製造から販売までを自社で行い、高品質と低価格の両立に成功した。
模倣困難性については、コカ・コーラの例がわかりやすい。コカ・コーラのレシピは絶対秘密とされており、市場で圧倒的なブランド力を誇っている。
フレームワーク5.ポジショニングマップ
自社と競合他社を、手っ取り早く比較するための分析手法。X軸とY軸に異なる指標を書き出し、各社がどの位置にいるのかを図示することで、自社のポジションを客観的に判断しやすくなる。ただし、このフレームワークでは軸の取り方が重要だ。たとえば、X軸にもY軸にも自信のある指標を書き出すと、自社が非常に有利なポジションにいるように見えてしまう。
一般的なケースでは購買行動に結びつきやすく、かつそれぞれが独立した指標を使うことが望ましいとされている。「コストとサービスレベル」や「価格と多機能性」などが、ひとつの例として挙げられるだろう。
また、商品やサービスに対して「市場が何を求めているのか?(ターゲットの購買決定要因)」を意識すると、適した軸を取りやすいはずだ。ポジショニングマップを作成すると、これから取り組むべき課題も見えてくるため、時間のある企業はぜひ取り組んでおこう。
たとえば、牛丼チェーンで有名な吉野家とすき家も、ポジショニングに成功している。吉野家が働く男性客をメインターゲットにスピードや量を重視したのに対し、すき家はファミリー層や女性をターゲットに豊富なメニューを開発した。
新規事業を立ち上げる3つの方法
新規事業を立ち上げる方法には、いくつか選択肢がある。事業の特性や自社の経営ステージなども考慮して、最も効果的な選択肢を選ぶことが大切だ。
方法1.自社でゼロから新規事業を立ち上げる
自社でゼロから新規事業のアイデアを出し、リサーチや事業計画の策定を行い、新規事業を立ち上げる方法がある。自由度が高いうえに腰を据えて取り組めるほか、社員の育成にもつながる。
方法2.M&Aで新規事業に参入する
M&Aで会社や事業を買収して新規事業に参入する方法もある。会社や事業を買収すれば、会社の資産や人材、技術力、ノウハウなどを獲得できる。
M&Aであれば、新規事業の立ち上げにかかる時間や費用も大幅に削減できる。参入障壁の高い業界に参入できる可能性もあるだろう。
方法3.子会社を立ち上げて新規事業に参入する
子会社を立ち上げて新規事業に参入する方法も選択肢のひとつだ。子会社とは、親会社が株式の過半数を保有する会社のことである。子会社を立ち上げることで、親会社とは別の経営体制や組織文化を持つことが可能だ。子会社を立ち上げることのメリットは、新規事業に特化した戦略や方針を立てやすいことである。
また親会社との連携によって資金や人材、ノウハウなどのリソースを活用できることもメリットだ。さらに子会社の業績が悪くても親会社の業績に影響を与えにくいこともある。
それぞれのメリット・デメリットを踏まえ、自社に合う方法を選ぶようにしたい。
新規事業を立ち上げる3つのデメリット
新規事業の立ち上げでは、既存の事業にはないメリットを享受できる。しかし一方でデメリットも伴う。新規事業立ち上げの主なデメリットは「先行投資の必要性」「マネジメントの負担増大」「ランニングコストの増大」の3つだ。ここでは、この3つにスポットを当てて解説していく。
先行投資が必要
新規事業は、新しい市場や顧客に対応するために新たな設備やシステム、人員などのコストが必要だ。また新規事業は、予測が難しくリスクが高いため、先行投資は回収できない可能性もある。市場の反応や競合の動向、技術の変化などで事業計画が大きく変わることもあるため、先行投資は慎重に検討しなければならない。
マネジメントの負担増大
新規事業は、既存の事業とは異なるビジネスモデルや組織文化を持つ。そのため新規事業を運営するには、マネジメントレベルの人材が必要だ。しかしマネジメントレベルの人材は、既存事業からの抜け出しが難しいケースが多い。また新規事業は、不確実性や変化に対応するために柔軟で迅速な意思決定やコミュニケーションが求められる。
そのためマネジメントレベルの人材は、常に高いストレスや責任感にさらされ、負担が大きくなりがちだ。
ランニングコストの増大
新規事業は、事業の成長に伴ってランニングコストも増大しやすい。ランニングコストとは、事業継続のために必要な経費だ。例えば人件費や材料費、広告費、研究開発費などがある。これらのコストは、事業の収益に見合うように管理しなければならない。しかし新規事業は、収益の安定性や規模が低いことが多くランニングコストの増大に対応するのが難しいケースもある。
新規事業に向いている人材の選び方とチーム編成のポイント
ここまで述べてきた新規事業立ち上げのデメリットに対処するためには、新規事業に向いている人材の選び方とチーム編成の方法が重要だ。以降では、新規事業に向いている人材の選び方とチーム編成のポイントについて解説する。
リーダーシップと論理的思考を重視して選ぶ
新規事業に向いている人材の選び方としては、リーダーシップと論理的思考を持つ人材を重視することが望ましい。リーダーシップとは、自らビジョンや目標を掲げてチームを引っ張り、周囲の情報を分析して判断や行動を下す能力を指す。一方、論理的思考とは問題や課題を明確に定義し、原因や仮説を検証し解決策や改善策を提案する能力である。
新規事業においてこれらの能力は、問題や課題に対処するために必要だ。なぜなら新規事業では、常に問題や課題が発生し、それらに対処するためには自律的で創造的かつ合理的な思考や行動が必要だからである。
その分野の経験者を1人は入れる
新規事業のチーム編成では、その分野の経験者を1人は入れることが望ましい。その分野の経験者とは、新規事業の対象となる市場や顧客、技術やサービスなどに関する知識やノウハウを持つ人材である。その分野の経験者は、新規事業の方向性や戦略を決める際に有効な情報やアドバイスを提供できるだろう。
また新規事業の実行や評価においても既存の事例やベストプラクティスを参考にできる。この人材は、新規事業の成功に欠かせない存在だ。
将来性のある人材を中心に編成する
新規事業のチーム編成の方法としては、将来性のある人材を中心に編成することが望ましい。将来性のある人材とは、新規事業に対する情熱やモチベーションが高く、学習意欲や成長意欲が強い人材である。将来性のある人材は、新規事業の挑戦や変化に対して積極的に取り組み、自らスキルや知識を向上させる。
また新規事業の発展や成功に対して「貢献したい」という気持ちが強い傾向のため、この人材は新規事業の活力となる存在だ。
新規事業の立ち上げで失敗しがちな3つのポイント
新規事業の立ち上げはリスクが高く、不測の事態が発生して失敗するケースも珍しくない。失敗の要因はケースごとにさまざまだが、特に失敗しやすい以下のポイントを意識しておけば、さらにリスクを抑えた形で事業を始められるだろう。
ポイント1.事業撤退のラインを決めていない
事業が想定通りに進まないときには、「撤退」もひとつの選択肢になる。しかし、これまで時間を費やしてきた新規事業をなかなか諦めきれず、ズルズルと続けてしまう場合もあるだろう。採算が取れないにも関わらず事業を続けると、会社の赤字はどんどんと膨らんでいく。その結果として会社が倒産すれば、新しいチャレンジへの道も閉ざされてしまう。
ダメージを最小限に抑えるには、「事業撤退のライン」は確実に必要だ。撤退するべきタイミングですばやく決断ができるように、撤退のラインとなる具体的な数値や状況は事前に決めておこう。
ポイント2.チームを膨張させてしまう
新規事業を進めるために、優秀な人材を新たに雇い入れるケースもあるだろう。確かに事業に人材は必要だが、チームを膨張させると意思決定が遅れてしまう点には要注意だ。規模が大きいチームでは、個々の意見を反映させることがどうしても難しい。つまり、新しいチャレンジや方向転換が困難になるため、急な状況変化に対応できなくなる恐れがある。
また、頻繁にコミュニケーションを取れなくなったり、コミュニケーションコストが上がったりする点にも注意したい。生産性が上がるなどのメリットはあるが、チームの膨張には軽視できないデメリットやリスクも潜んでいるのだ。 その点をしっかりと理解し、まずは必要最小限のチーム構成で取り組むことを検討してみよう。
ポイント3.市場参入のタイミングが遅れる
入念に準備を進め、優れたビジネスプランや必要な環境を用意したとしても、市場参入のタイミングを見誤れば新規事業は失敗してしまう。たとえば、ビジネスプランを考案した段階では目新しい事業であっても、参入のタイミングが遅れると新規性は下がっていき、競合他社の参入により競争は激化するだろう。
市場状況や顧客のニーズは時間とともに変化していくため、参入の最適なタイミングを見極めなければならない。特に流行を取り入れた商品・サービスを展開する場合には、少しの遅れが致命的なミスにつながってしまう。そのため、市場やニーズの現状を冷静に分析し、市場参入の最適なタイミングに間に合うよう準備を進めていこう。
新規事業の立ち上げには時間がかかる
今回解説した通り、新規事業の立ち上げには多くのプロセスが必要だ。各工程を丁寧に進めることで、事業に潜んでいるリスクはある程度抑えられる。ただし、本格的な市場分析や顧客分析に取り組むとなると、業種によっては長い時間を要することもあるだろう。中には分析だけで数ヵ月、新規事業の立ち上げまでに数年を要するケースもあるほどだ。そのため、新規事業を始める場合はいち早く計画を立てて、すばやく行動に移すことを意識しよう。
新規事業に関するよくある質問
Q1.新規事業はなぜ必要なのか?
新規事業は、既存事業に依存せず持続的な成長を目指すために必要だ。また新規事業は、市場や顧客のニーズに応えることで競争力を高めることにもつながる。
Q2.新規事業開拓のメリットは?
新規事業開拓の主なメリットは、以下の3つだ。
- 収益の柱を増やせる
- 長期的なリスクヘッジになる
- 優秀な人材を育成できる
Q3.新規事業を立ち上げるには何をすればいいですか?
新規事業を立ち上げるのに必要なステップは以下の6つ。
- 顧客や自分の「課題」を見つける
- 事業ドメインを決定する
- 理念・ビジョンを明確にする
- 「市場性」と「事業性」を見極める
- 製品・サービス作りに必要な環境を整える
- 具体的な行動計画を立てる
Q4. 新規事業に必要な人材は?
新規事業に必要な人材は、以下のような特徴を持つ人材である。
- リーダーシップを持ち、論理的思考ができる人
- 新規事業分野の経験者
- 新規事業に対する情熱やモチベーションが高く、学習意欲や成長意欲が強い、将来性のある人
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