分配金がいくら受け取れるか――投資信託を検討している投資家が最も気になるポイントではないだろうか。分配金は常に一定額支払われるとは限らない。ここでは投資信託の分配金の計算方法と、分配金の種類や税金、基準価額への影響などについて解説する。

投資信託の分配金は年1回の決算が一般的

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(画像=ShutterstockProfessional/Shutterstock.com)

投資信託の利益には、基準価額の値上がりによる差益と分配金の2つがある。分配金は決算日における運用益から諸費用を差し引いた金額を投資家に分配するものだ。

分配金がいつ支払われるかは決算の頻度による。一般的なのは年1回だが、日本で人気の毎月分配型の投資信託は毎月決算があり、年12回分配金が支払われる。QUICK資産運用研究所によると、決算頻度別の投資信託の本数は年1回が2,690本、年2回が1,162本、年4回が285本、年6回(隔月)が85本、年12回(毎月)が1,395本となっている(2019年1月19日時点)。

分配金の金額は決算の際に運用結果などを反映して算出される。過去の実績よりも少ない場合や、全く支払われない場合もある。ただし毎月分配型は運用成績に関係なく決まった水準を支払うことを想定しているので、十分な運用益が得られなかった場合は元本を取り崩して分配金にあてられる場合がある。

投資信託の分配金の計算方法

投資信託の分配金の支払い額は以下の計算式で算出できる。

投資信託の分配金額(税引後)=1万口あたりの分配金額 ×(保有している口数 ÷ 10,000)×(1-20.315%)

たとえば1万口あたり月額50円の分配金が支払われるファンドを100万口保有している場合、50円×(1,000,000÷10,000)×(1-20.315%)=月額3,985円が支払われる(小数点以下切り捨て)。

分配が年1回の場合も計算方法は同様だ。1万口あたり年額5,000円の分配金が支払われるファンドを10万口保有している場合、5,000円×(100,000÷10,000)×(1-20.315%)=年額3万9,842円が受け取れる(小数点以下切り捨て)。

毎月分配型の場合は投資信託の情報サイトなどでシミュレーションツールが提供されているので活用するといいだろう。金融商品仲介業者の「投資信託相談プラザ」では、購入金額・基準価額・月々の分配金・購入手数料を入力すると自動的に計算され税引後分配金額が表示される。たとえば「LM・ブラジル高配当株ファンド」を100万円分買ったと想定すると、税引後の分配金月額は4,474円、分配金利回りは5.37%という結果となった(2019年8月26日時点での基準価額で計算)。

このように、購入を考えている投資信託で自分の投資額ならいくら分配金が受け取れるのかあらかじめ計算しておくのがいいだろう。ただし、分配金には税金がかかることがあるので実際にはこの計算通りになるとは限らない。

投資信託の普通分配金と特別分配金の違い

分配金には「普通分配金」と「特別分配金」の2種類がある。普通分配金は運用収益から支払われるため課税対象となる。一方、特別分配金(元本払戻金)には税金がかからない。特別分配金は運用益でまかなえる以上の分配金を支払うために元本を取り崩して払い戻すものだ。自分のお金が戻って来るだけなので課税されないのは当然といえる(特別分配金は非課税だからお得などと勧めてくる販売員がいたら要注意)。

先ほどのシミュレーションでは全額普通分配金扱いで試算したが、特別分配金が含まれる場合はその部分だけ非課税になる。分配金の額が一定のはずなのに振り込まれる額が違う場合があるのはこのためだ。

投資信託は分配金を支払うと基準価額が下がる

投資信託の分配金は銀行の預金とは大きく異なる点がある。銀行の預金は利息が支払われても預金金額に変化はないが、投資信託は分配金を支払うとその値段である基準価額が下がる。その理由は、分配金の原資が投資信託の純資産となっていることにある。

分配金が支払われると投資信託の価格が下がる

投資信託が持つ資産のすべてである純資産を、取引単位である口数で割ったのが基準価額だ。純資産から分配金が支払われることで純資産額が減り、連動して基準価額が下がる。分配金が多く支払われると得をした気分になるが、保有している投資信託の価値は下がるので、トータルでプラスかどうかは分からない。したがって投資信託のリターンは基準価額の損益と分配金を併せて考える必要がある。

投資信託の分配金は再投資したほうが受け取るよりも資産を増やす効果がある

決算時に分配金が支払われても、受け取らずに再投資にまわすという方法もある。この方法であれば投資元本に利益分が上乗せされるので、複利の効果を得ることができる。分配金を受け取った場合と再投資した場合では、20年後の資産にどのように影響するか計算してみよう。

連動するインデックスは日経225、年1回分配型、分配金は50円、投資額は100万円とする。計算の結果、分配金を受け取った場合は残高が93.8万円、受取分配金総額8.2万円の計102万円、再投資をした場合は残高105万円になった。再投資するほうが分配金を受け取るより資産を増やす効果があるというわけだ。

分配金を再投資する方法もアリだと分かるが、分配金を一度受け取ったとみなされるため、決算を迎えるたびに税金が発生する。分配金再投資による複利の効果を最大化したいのであれば、決算頻度が少ないファンドを選ぶのがいいだろう。

投資信託は目的にあった分配をするファンドを選ぶ

毎月分配型や公的年金の支払いがない月に合わせた隔月分配型は、年金生活者が資産を取り崩して生活費を補う場合に適している。一方、長期的な資産形成を考えている場合は分配金の少ないファンドを選ぶほうが運用効率は良い。

分配は多ければいいというわけではないことを繰り返し述べてきた。目先の分配金の額だけでなく、トータルで見込める利益を計算して、投資の目的にあったファンドを選ぶことが何よりも大切である。

文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

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