日本株の値動きが堅調となっています。日経平均株価は10/18(金)には一時22,649円まで上昇し、終値でも前日比40円高の22,492円となり、年初来高値を更新しました。米中通商協議において部分合意が成立したことが追い風になりました。

こうした中、東京株式市場では決算発表シーズンが到来しています。9月中旬から10月中旬にかけては、2月・8月決算企業等の発表が続いてきましたが、10月下旬以降は3月・9月決算企業等の発表が本格化していきます。米中通商協議の部分合意や、足元の円安・ドル高基調もあり、市場の企業業績に対する警戒感はやや後退したと見受けられますが、企業業績に関する発表や報道を受け、株価が動きやすい時期になることに変わりはないと思います。決算発表シーズンが峠を越えるまで、様子を見たいと考える投資家も多いように思われます。

いずれにせよ、市場の関心は決算発表シーズンを迎える3月・9月決算企業等に集まってくると考えられます。ただ、腰を据え、成長性等を見極めながら投資対象を選ぶのならば、この時期は2月・8月決算企業等が好ましいかもしれません。決算発表の終了で、企業業績に関する発表や報道を背景に株価が乱高下する可能性が後退すると考えられるからです。これらの決算期の銘柄は、決算発表やそれに伴う説明会開催の時期を終え、アナリストの個別調査が本格化し、中には再評価される企業も出てくると考えられます。今回の「日本株投資戦略」は2月・8月決算企業等を対象に、好業績を発表した銘柄、今後値上がりが期待できる銘柄をスクリーニングにより抽出してみました。

株価上昇に期待したい好決算銘柄はコチラ!?

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

今回の「日本株投資戦略」では、9月中旬から10月中旬にかけ、決算発表が行われた銘柄から好業績銘柄を抽出すべく、スクリーニングをおこなってみました。この時期、決算発表を実施する企業の決算期は通常、2月、5月、8月、11月となります。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)東証1部上場銘柄であること。
(2)時価総額が1千億円以上の銘柄であること。
(3)2月、5月、8月、11月決算銘柄であること。
(4)広義の金融や、投資法人等を除く業種の銘柄であること。 (5)直近の四半期累計(または前年度)営業利益が事前の市場コンセンサスを上回った銘柄であること。
(6)直近の四半期累計(または前年度)営業増益率が前年同期比10%増以上の銘柄であること。
(7)直近の四半期累計(または前年度)営業増益率が今期の会社予想営業増益率を上回った銘柄であること。
(8)市場コンセンサスで、今期・来期ともに営業増益が予想されている銘柄であること。
(9)決算発表の前営業日から直近営業日(10/17)まで、株価上昇率が10%未満の銘柄であること。

上記のすべての条件を満たした銘柄を、(6)の営業増益率が高い順に並べたものが表1となります。「日本株投資戦略」では、これらの銘柄は好業績銘柄と評価でき、今後値上がりが期待できる銘柄であると考えています。なお、スクリーニングの結果、5月決算および11月決算の銘柄は抽出されず、8月決算銘柄はサイゼリヤ1銘柄のみでした。表1に掲載された銘柄はそのほとんどが2月決算銘柄となりました。

一般的にアナリストは、分析やレポート執筆の対象としている銘柄(カバレッジ銘柄)について、四半期単位で業績予想を行い、その業績予想と実際の決算数字や会社公表の予想数字を比べ、投資判断の材料としています。無論、実際の決算数字や会社公表の予想数字がアナリストの予想を上回れば「ポジティブ・サプライズ」となり、前向きな投資判断につながりやすくなります。すなわち、四半期の収益が大きく伸びている上に、アナリスト予想を上回っている銘柄は、将来、目標株価やレーティングの引き上げ、ひいては株価上昇を期待しやすくなると考えられます。

決算発表が佳境となっている時期、発表された決算数字や予想数字をもとに、瞬時に正しい投資判断を行うことは、一般投資家のみならず、アナリストにとっても困難を伴います。勢い、株価はどうしても、市場コンセンサスを上回ったとか、下回ったという刹那なる材料に振り回されることになります。しかし、決算発表後時間が経ち、アナリストの企業取材が進み、冷静な評価に基づく投資判断が増えてくると、真の好業績銘柄は再評価され、株価が上昇してくると考えられます。決算発表後に好業績銘柄へ投資することは、必ずしも、投資タイミング的に遅いという訳ではありません。

SBI証券のWEBサイトには、有望な投資テーマへのパッケージ投資を可能にする「テーマキラー!」という投資ツールがあります。その中で、過去に提案された投資テーマに「第1四半期好決算」というものがあります。3月期決算が対象の投資テーマですが、構成銘柄の上昇率は過去1年で48%(10/17現在)にも達し、全投資テーマの中でも最右翼のひとつになっており、その上昇基調は、決算発表後も着実に続いています。他の決算期の四半期業績が好調な銘柄についても、同様の成果を期待できるかもしれません。

株価上昇に期待したい好決算銘柄
(画像=SBI証券)

表1 株価上昇に期待したい好決算銘柄はコチラ!?
コード / 銘柄 / 株価(10/17) / 決算発表以降騰落率 / 営業増益率(前年比)四半期 / 通期予想
<9861> / 吉野家ホールディングス / 2,620 / -6.0% / 53.4倍 / 855.0%
<2685> / アダストリア / 2,592 / 6.4% / 13.5倍 / 39.1%
<9716> / 乃村工藝社 / 1,332 / -1.0% / 90.0% / 1.6%
<9602> / 東宝 / 4,700 / 0.3% / 32.8% / 11.2%
<9793> / ダイセキ / 2,822 / 2.3% / 16.3% / 10.9%
<7649> / スギホールディングス / 6,160 / 6.2% / 14.8% / 8.5%
<7581> / サイゼリヤ(8) / 2,645 / -3.9% / 11.1%(前期) / 5.2%

※Bloomberg、会社公表データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。四半期増益率は第2四半期累計(2019年3~8月期)営業増益率。なお、表1は10/17(木)までの情報をもとに作成されており、その後に報道や業績修正があった場合、反映できない場合がありますので、注意が必要です。なお、結果的に掲載銘柄のほとんどが2月決算銘柄で、サイゼリアのみ8月決算でしたので、銘柄名の右横に(8)と記載しています。また、同社の四半期増益率の欄に記載の数字は前期(通期)の営業増益率です。なお、決算発表以降騰落率は、決算発表日前営業日から10/17(木)までの株価騰落率になっています。

掲載銘柄の投資ポイントを吟味

ここでは、表1に掲載した銘柄の一部について、業績やチャート等の投資ポイントをご紹介したいと思います。

吉野家ホールディングス(9861)はご存知、牛丼チェーンの他、「京樽」や「はなまる」など43社からなる外食グループです。2020年2月期・第2四半期累計は売上高1,071億円(前年同期比6.7%増)、営業利益29億円(同53.4倍)と増収増益でした。通期の会社予想営業利益10億円(前期比855%増)をすでに上回っており、いかにも保守的で、営業利益について市場では40億円超への着地を見込んでいるようです。

図1にあるように、同社の株価は過去半年で大きく上昇しており、予想PERは来期予想EPS(市場コンセンサス)基準でも50倍超に達しています。足元は利益確定売りに押されている印象です。ただ、10/18(金)には一時、10/4(金)の高値2,573円まで下落し「窓埋め」が完了しました。押し目買い妙味は出てきているようです。中長期的には、(1)外食の売上トレンドに影響しやすい若年層の賃金上昇が期待できること、(2)日米通商協議を経て、米国産輸入牛肉の関税引き下げ等の追い風が期待できそうです。

図1 吉野家ホールディングス(9861)・日足
(画像=当社チャートツールをもとにSBI証券が作成)

アダストリア(2685)

内外で17ブランドを展開するファッションブランド専門店です。前期に大幅計画未達に陥った反省も含め、常に変化を求める経営を行っています。現在は2025年の社会を見据え、相手先ブランドや外部生産に依存したビジネスから垂直統合によるビジネスへと転換しつつあります。ECの売上比率も足元では2割弱程度まで拡大傾向にあります。

国内1,349店、海外80店を展開し、積極的なスクラップ・アンド・ビルドを行っています。基幹ブランドの好調もあり、2020年2月期・第2四半期累計は売上高1,090億円(前年同期比3.8%増)、営業利益72億円(同13.5倍)と増収増益でした。通期の会社計画営業利益は100億円(前年同期比39.1%増)と、かなり保守的にみえる数字になっています。

株価は9/30(月)の決算発表を好感し、急騰した後利益確定売りに押されていますが、ほぼ「窓埋め」が完了し、25日移動平均線も下値支持ラインとして固めにみえます。再評価から反発に転じる余地もありそうです。

図2 アダストリア(2685)・日足
(画像=当社チャートツールをもとにSBI証券が作成)

乃村工藝社(9716)

商業施設の内装施工では国内最大手企業です。リーマンショック後は毎期、着実に営業利益を増やし、それにつれて配当も増やしてきました。過去10年、期初会社予想の営業利益を実績が上回っており、「業績予想が保守的な企業」としても知られています。

足元は東京五輪直前ということもあり、特に好調なようで、2020年2月期・第2四半期累計は売上高707億円(前年同期比35.4%増)、営業利益66億円(同90.9倍)と増収増益でした。9/30(月)には上期の業績予想を上方修正しました。ただ、その後決算発表を経ても、通期の業績予想修正には至っていません。2019年6~8月期だけをみれば、前年同期比での受注は減少しており、足元の業績ピークアウトが警戒されている可能性はありそうです。

ただ、東京五輪後も大阪万博やIR等のビッグイベントが視野に入っており、内装施工の市場は高水準で推移する可能性がありそうです。株価も、市場マインドの強弱対立を反映してか、ボックス圏での推移になっています。現在は、そのボックス圏の下限を推移している形になっています。

図3 乃村工藝社(9716)・日足
(画像=当社チャートツールをもとにSBI証券が作成)

東宝(9602)

阪急阪神系映画大手。2020年2月期は、第1四半期決算発表後および第2四半期発表後の2回にわたり業績予想を上方修正しました。自社で出資する「天気の子」のヒットなどが理由です。

本決算を発表した4/12(金)の終値は4,380円で、そこからの株価上昇率は5%を超える程度に過ぎません。それに対し、2回の業績予想上方修正で予想EPS(1株利益)は14%上方修正されています。

今後は洋画でも、「アナと雪の女王2」、「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」等で映画館部門の好調も見込めそうです。

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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