(本記事は、新開強氏の著書『Tシャツだけで年商30億。』実務教育出版、2019年9月30日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
自分本位でうまくいく──心の負担を軽くするコツ
「小さな勇気」を出して、決めたことをはじめる。
そう決意したときに最初の分岐点が現れます。
何の分岐点でしょうか。
「自分が楽しく変われるか?」 VS 「今までの楽しくない状況のままいるのか?」
という分岐点です。
はじめるのか、はじめないのか。
はじめなければ変わらないし、はじめれば変わる。
実際にはじめればわかりますが、次にやってくるのは次々に見つかる課題への対処です。
ですので、はじめるのであればできるだけ早くはじめて、課題を発見し、微修正を重ねていく必要があります。運よくスタートダッシュが決まれば、などと考える人もいるかもしれませんね。でも、個人的にどんなに楽しいと思うことでも、あるいはどんなにすごいベンチャー企業であっても、最初からうまくいくことはほぼ100%ありません。
早めに課題が見つかったり、失敗したりすれば、ケガは小さく、しかも正しい方向への軌道修正も行いやすい。
私の場合も、見よう見まねでグラフィックデザインをやりはじめてから、今の事業に転向するまで、(自分が楽しい条件で)方向の調整と軌道修正の連続でした。
まとめてみると以下のようになります。
・アメリカでデザイナー会い、マックのデザインソフトを使ってみた ↓ ・それっぽいグラフィックデザインを作ることができるようになってきた ↓ ・画面上だけでは面白くないので、現物Tシャツを作ってみた ↓ ・自分のショップに展示して、お客や知り合いに自慢した ↓ ・お客のひとりが地元のラーメン店(ユニフォームニーズ)を紹介してくれた ↓ ・そのオーナーのデザインの要望を何度も聞いて、修正しながら受注 ↓ ・他の飲食店にもニーズがあるはず(知り合いの飲食店に当たってみる) ↓ ・学校にもニーズがもあるはず(高校の恩師に紹介してもらって学校も回ってみる) ↓ ・部活の先生に「サイトがあったほうが便利」といわれる ↓ ・ハガキDMをやめてHP作成ソフトを買う ↓ ・今の通販サイトの原型を自作 ↓ ・親にお金を借りて、少し(5万円)だけネット広告をしてみた ↓ ・2日後に、東京の人から見積もり依頼が入る ↓ ・このネット第1号の問い合わせは失注(自分の知識と接客力不足) ↓ ・しかし、「これはいけるかも!」という気づきを得る ↓ ・現在のビジネス1本に転向
この間要した時間は約2年。最初から「Tシャツプリントの通販ビジネスで会社を大きくする」と決めていたわけではありません。ご覧の通りで、楽しそうな方向にアンテナを張って動きながら、さまざまな要望を吸い上げているうちに、いつの間にか進化していたのです。
ある程度の準備もして、リスクを最大限に回避しているつもりでも、動き出すと途中で思いもしないいやな展開になることがあります。でも行き詰まったら、別の方法で試してみればいいだけ。やらずにできない理由を四の五の考えているより、動きながら軌道修正したほうが成功(楽しい自分の実現)に近づいていけるのです。
準備をすることで心の負担を軽くする。大切なテクニックですね。
忘れないでほしいのは、仮に準備不足でも、一時的にうまくいかなくても、
「自分本位に妄想を続けるだけで、結局最後はすべてうまくいく」
ということ。
「自分本位」というのが大切なのです。
誤解を恐れずにいえば、自分でどうにもならない他人のことをあれこれ考える必要はありません。そんなことを考え出すと間違いなくフリーズしてしまいます。
社会にしがらみは付きもの。かといってしがらみを前提にあれこれ考えても視野が狭くなるだけです。思考する範囲が小さくなってしまいます。つまり自身の可能性を狭めていくことにつながるのです。
妄想のイメージを膨らませる段階では、自由に発想するほうが楽しさも増して、いい意味での勘違いも起こりやすくなる。この勘違いは、先に触れたように後からいくらでも調整可能。
他人のことはさて置いて、まずは自分が楽しくなれることやその方法を、見つけてみてください。
楽しいことをやっていればチャンスは誰にでも必ずやってくる──偶然は必然
2003年の秋、営業で訪問したある先生の何気ないひと言が、私の人生をさらに大きく変えることになります。
「あなたのところはネットやってないの? ホームページがあったら、いちいち時間合わせて来てもらわなくても、生徒と一緒に決められると思うけどな」
ネット通販(EC)が一般的に信用を獲得しはじめた時期ではありましたが、このころはまだ一部の都市圏の話で、高松で小規模で商売をする自分たちには無関係と思っていました。コンピュータオタクの話程度にしか受け止めていなかったのです。
しかし、この先生の言葉が頭の隅に残って、気になっていたのだろうと思います。
なぜかというと、
「ホームページってどうやって作るんだろう?」
「業者に頼めるようなお金はないけど、ホームページつくるのにお金はいくらかかるのか」
などと、ネット検索をするようになったからです。
でもこれは、単なる興味から。ホームページで商売が大きくなるなどとは、まだこれっぽっちも考えていませんでした。
実はこのころはDMで顧客を増やせないかと模索していた時期に重なります。予算は約8000円(160部)。自分で作ったチラシをプリントして、四国の学校に送ろうとしていました。
自問自答がはじまりました。
「ホームページの話を持ち出した先生はほんとうにただのコンピュータオタクなのだろうか?」
「オタクしか興味がなければ広がりもないだろうけど、実態はどうなってるんだ?」
「俺が知らないだけで、ネットにはすごい可能性があるんじゃないのか?」
「実はすでにはじめてる人がいい思いをしている?」
「一般にはまだあまり知られてなくても、これからとてつもないニーズが生まれるのではないのか?」
あれこれと自問自答がはじまった段階で、答えは決まっていたも同然です。
「これ、ここまで考えて、やらないことなんてあり得るの?」
結局、必殺の自問にたどり着きました。
もちろん答えはNOです。
「やらないなんて、あり得ない」
これが結論でした。
すぐに8000円を握りしめ、HP作成ソフトを買いに行きました。
はじめてみると、使い方が何もわからず、最初はお手上げ状態。でも多少なりとも磨いてきたデザインスキルに助けられて、おそるおそるソフトをいじりはじめました。
昼間はショップ、夜はバイトをしながらホームページ作成(昼間はほとんどお客が来なかったので、じっくり作業できました)をすること3ヵ月。
ここでまた、疑問が湧いてきました。
「サイト作るのはいいけど、どうやって見てもらうの?」
店のURLを印刷した名刺をもらった人がいても、パソコンでその文字列を打ち込むという面倒なことをする人がいるとは思えないし、無名のショップだから検索もしてもらえない。これは、どうやったら集客ツールになるのだろうか。
HP制作の合間にネット検索をしていたところ(今では当たり前の手法ですが、当時はネット検索そのものがメジャーではありませんでした)、リスティング広告やSEO対策(どちらも検索結果の上位表示で集客する方法)というものがあるということを知りました。
ひと通りECサイトが完成するタイミングで、私は「SEO対策」というワードで検索をかけ、できるだけ上位で、まだ規模の小さそうな会社にコンタクトを取りました。
サイト内に社長直通のアドレスが載っていたので、
「これから事業を立ち上げようとしているのでお金がない」
「料金は出世払いにしてほしい」
と直談判。
当然ですが、あえなく撃沈でした。
多少は意気に感じてもらえたのでしょう。いくらかの値引きと成果報酬を絡めた料金体系にしてもらい、初期投資としては格安でスタート。マイナススタートの身としては、かなり助かりました。
自然検索の検索結果を上げていく「SEO対策」は、効果が出てくるまでに時間がかかるのですが、検索結果画面のさらに上の部分に「広告枠」があるということも知り、調べました。
これはクリック課金広告(1クリックに対して、キーワードごとに入札制で課金額を決める広告)で、すぐに出稿でき、広告の出稿停止も自由。予算に応じて好きな分だけ上位表示広告ができるというもので、個人事業主でも出稿が可能でした。
当初、検索結果の上位に表示されることがどれほどの意味をもつのか半信半疑でした。
それでも作ったサイトはなるべく多くの人々に見てもらいたい、ダメならダメでほかのことを考えるから早く結果を知りたい、そんな思いでサイトの広告枠を少しだけ試しました。
広告は検索サイト(Yahoo、Googleなど)へのクレジットカード払いでしたが、当時自分名義のカードはなく、母親に事情を説明して、5万円だけ頼み込んで借りました。
そのときの母親のセリフが、
「あんた、また訳のわからないことにお金使ってるんじゃないだろうね?」
でした。
今となっては、「あのときに俺を信用して5万貸さなかったら今はないよ」と笑い話ですが、当時の状況からすると疑われてあたりまえでした。
正直、ネット広告を少しやったくらいで問い合わせが来るとは思っていませんでしたが、広告を出してから2日後、東京から見積もり依頼が入ったのです。同業者の冷やかしか何かだろうと思っていたのですが、リアルなお客でした。第1号の問い合わせは予算が合わず(もしかしたら私の知識不足やつたない対応もあったかもしれません)、失注。
けれどそんなことはどうでもよかったのです。
高松にいたままだったら絶対にあり得ない、東京からの問い合わせです。
暗闇に光が見えた瞬間でした。
ここから再び、妄想のスタートです。
「もしかしたら、ネットは全国区で営業できる最高のツールになるのではないか?」
妄想はほどなく現実になりました。ビジネスは雪だるま式に大きくなっていったのです。売上のほとんどを広告に回しては売上を作り、また広告に還元。これを繰り返しました。
ネットではじめての問い合わせをもらった2004年1月から1年後、何と売上は6000万になっていました。店のほうの売上が、年商200万に落ち込んだにもかかわらずです。
アメリカでデザインを少し学び、自分ブランドを作ってショップに置くことで情報発信、そこからお客のユニフォームTシャツをデザイン。それがきっかけで「ホームページが便利」という情報を入手。ここから、今の事業の土台をつくることに成功しました。
楽しそうなので即行動。行動したならうまくいくのかどうか早く知りたい。仮にうまくいかなくても動き出しが早いので、軌道修正もかんたん。
考え過ぎてネガティブな妄想に捕らわれることも少なくありません。けれど考えを推し進めて、やってみなければわからない、というところまで考えたら、実際にやってみるしかないのです。
「やらない選択肢はない」
のです。
やってみないとわからない先のことに対して、楽しい妄想(やりたい気持ち)が勝っていれば、
「よし、やってみよう」
です。
妄想を形にしながら、楽しい想像をめぐらせ、細かく動きながら軌道修正を続ける。
その先にはチャンスしかありません。誰にでも必ずチャンスがやってくる意味が、おわかりいただけましたか。
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