(本記事は、新開強氏の著書『Tシャツだけで年商30億。』実務教育出版、2019年9月30日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

「できない理由」は絶対に考えない──1勝9敗の法則

勝利
(画像=garagestock/Shutterstock.com)

人間、何かに不安なときや失敗したとき、「できない理由」を必要以上に深く考えがちです。前の章でもお伝えしましたが、私もかなり悩むタイプなので、たくさんの「できない」を経験し、そのたびに「できない理由」を探してしんしんと悩み続けてきました。

経験を経るごとに考え方はシンプルになり、「できないこと」や「失敗」に立ち止まって悩むことはずいぶん減りました。今は、そんな時間がもったいない、「はい、次いってみよう!」です。以前よりも視野が広くなったことで、ひとつのことに固執することが少なくなったからなのだと思います。

失敗からの「次いってみよう!」の行き先には、「よい方向」と「悪い方向」があります。

失敗したことと180度異なる方向へ向かうのではなく、失敗した経験や自分のスキルを活かせる方向へ向かうのが、私が考えるよい方向です。

失敗はまったく問題ありません。問題なのは、失敗したあとです。

失敗したことをすべて捨ててしまって、まったく新しいことに取り組もうとする人をよく見かけますが、これでは経験やスキルが活きません。すでにはじめた大きな方向は「変えない」ことが大切です。

私の事例でいえば次のようなことが挙げられます。

・日本の大学では英文科に進んだが物足りなくて退学。その後、「英語」のスキルを活かしたいとアメリカへ留学した。

・アメリカの大学も結局退学したが、輸入ショップをはじめたことで「アメリカ」にはかかわりを残した。

・アメリカにかかわりがあったおかげで、デザイナーの元で働く機会を得、ショップの輸入品が売れなくなったときに、自分でデザインしたTシャツを売ろうとした。

・ショップは廃業になったが、自分のデザインを発信していたことで、オーダーメードTシャツ販売サービスに進化した。

当初の目的(それぞれの行動の、一般的な成功の定義)からすると、最後のひとつ以外はすべて「失敗」です。

しかしどの「失敗」が欠けていても、今はありません。

そのときは確かに「失敗」したのですが、完全なる失敗にしてしまわないように、道筋を少し修正して、うまくいくまでやり続けたのです。

スポーツの勝敗は、野球やサッカー、テニス、卓球など、ひとつのカテゴリーの中での戦いです。私の場合はひとつのカテゴリーの中の戦いとはいえません。でも最初にはじめたビジネスの方向を少しずつ変えながら、近接するテリトリーの中で起業という戦いをしてきたということはできると思います。

繰り返しになりますが、今の自分を最大限活用できる範囲の「別の試合」を作って、私は挑戦し続けてきました。でも試合をやるたびに負けて(失敗して)いる。負けたので、また少し別の視点からの試合をやってみる。

この繰り返しの中で、私は勝つ(うまくいく)試合を見つけた。

今から振り返ると、これが1勝に当たります。当時はそんなふうに思いませんでしたが。

逆に、うまくいったその時点で、「勝った」とはこれっぽっちも思っていません。「うまくいく」までに、何度も失敗を経験してきたわけですから当然です。うまくいったことがない以上、今回に限ってうまくいくなんて思えるはずがないですよね。

1年前の自分と今の自分を比較してみてください。

1年前にやろうとしていたことが実現できていたとしても、今の自分は、1年前とはまた違った目標と課題を掲げていることに気がつくでしょう。それらは1年前と比べて、少しだけ大きく複雑になっているはずです。

2004年に今の事業をはじめたとき、30億という売上の会社になるなどとは微塵も考えていませんでした、いえ、正直にいえば考えようがありませんでした。夢でさえなかった。だから、当時の自分の目線からしたら、今は「夢かなって大成功」のはずです。

ところが、当時とは比べ物にならないプレッシャーがあります。責任も覚悟も天と地ほどの差があることを実感します。

15年間失敗をし続けて、その都度自分を最大限に活かせる範囲で軌道修正してきた。その結果として今がある。目標がさらに大きくなり、課題のレベルも段違いに高くなってしまいました。

「9回負けても最後に1勝すれば勝ち」というのは、目標も課題も大きくなって、さらに大きいことにチャレンジすることのできる権利を獲得したことと同じ、そんなふうに私は考えます。


風呂敷は大きく広げる──小さな風呂敷では包めるものが少ない

「大風呂敷を広げる」という言葉があります。「大げさにいう」「ほらを吹く」など、普段はあまりいい意味では使われませんよね。

しかし(私が尊敬する経営者の方々に共通していると思いますが)、結果を出す(1勝する)人は、ほとんどが大風呂敷を広げているのをご存知でしょうか。

マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は、まだできてもいないプログラミング言語BASICを開発したと大風呂敷を広げてMITS社(世界最初のパーソナルコンピュータを作った会社)に売り込み、契約をまとめてから着手しました。

またソフトバンクグループの創業者、孫正義氏は、会社創業日にみかん箱の上に立ち、「これから私たちは、売上を豆腐のように1丁、二丁(1兆、2兆)と数える会社にする」といったというエピソードが有名です。ちなみにこれを聞いた従業員は、「この社長は頭がおかしい」と逃げ出したというおまけ付きです。

大風呂敷は、よい意味にも悪い意味にも使われる言葉です。悪い意味ならできもしないことを大言壮語する大うそつきになるし、よい意味なら、多くの人が目を疑うような結果を出す成功者になります。

成功する大風呂敷の人は、「できる」と思い込んでいることが共通していると私は考えています。

「楽しい、やりたい」という内発的な気持ちに後押しされて設定する目標は、「自分はできる」と信じ込むことができているので、具体的な行動計画を立てやすいのです。

ここが大きなポイントだと思うのですが、大きな目標に対する角度の高い目線をもち、そこから逆算してマイルストーン(進捗を管理するためにつくる折々の節目のこと)をつくり、実行計画に沿って行動する人は、そうでない人に比べて、成長と結果に大きな差が出てきます。

最初は誰でも、差はほとんどありません。しかし時間がたてばたつほど、高い目線の人と低い目線の人との間には大きな差が生まれるでしょう。

※上のイラストを見てください。

そもそも目指すところそのものが高いと、簡単には途中のマイルストーンも達成できないことのほうが多いでしょう。ギリギリ達成できたり、できなかったり、もしかしたら8対2や、9対1くらいで達成できないことのほうが多いかもしれない。それこそ1勝9敗です。でもそれでいい、いえ、それがいいのです。

高い目標に合わせた逆算の行動計画と、目線の低い目標を立てた行動計画とは、当然、内容がまったく変わってきます。

高い目標に合わせた行動計画のほうが、経験の質・量ともに、大幅にブラッシュアップされ、その結果、成長量も大きくなるのです。

ここで、行動の量と質について、少し考えてみましょう。

●行動の量

あえて早い期限と高めの目標を設定すると、早く動かざるを得なくなります。無理矢理ではなく、やりたいことを楽しい方法でトライしようとすれば、結果を早く知りたのいので、「自動的に」行動してしまう。

このように行動していくと、頭の中で、次の選択肢が枝分かれして増えていきます。

うまくいけばそれでいいし、ダメなら他の選択肢をためしたい。そんな気持ちになるはずです。

行動量は想像量(先のシミュレーション)に比例します。

「行動しながらの想像」を繰り返していると、「打つ手」がたくさん出てきますから、どんなに悪くても、ひとつはうまくいくことが見えてくるでしょう。これが、物ごとを1歩進める小さな成功体験になります。

その小さな成功体験の階段を1段ずつ上り続けると、見える景色がどんどん変わってきて、視野も広くなり、俯瞰的に自分やまわりの状況を把握できるようになります。

そうすると自然に情報量が増えるので、想像できる幅が大きくなり、点だったものが線になり、面になり、立体的になりますから、高確率で、小さな成功体験が同時多発的に発生する場面に遭遇するようになります。

こうなったら、このサイクルを繰り返していくだけ。気づいたときには、以前からは考えられないような景色を見ている自分を発見するでしょう。

●行動の質

行動の質にもいろいろありますが、大切な判断基準としては、やろうとしていることが「自分ごと」なのか、「他人ごと」なのかが挙げられます。

一般論では、「質のよい行動」とは結果を出すための正しい方法、と説明されます。しかし、何度も説明してきたように、どこまでいっても、当事者には「正しい方法」などわかりません。「わかる」という人は、ただの評論家です。プロセスを知らない外野からの結果論です。

結果がどうであれ、目指すものやそこに向かうプロセスが他人ごとである限り、行動の質はよくなりません。すべてを自分ごととして考えられるようになってはじめて、やっと行動の質が上がってきます。

その際、「自分ごと」のレベル(熱量)、行動量(想像量)が高ければ高いほど、行動の質は高まっていきます。

私の事例ですと、1998年にセレクトショップをオープンし、翌年ディジタル(当時駆け出しのアメリカのストリートブランド)の日本総代理店をはじめたときが、それに当たるでしょうか。

私も大胆に大風呂敷を広げていたと思います。アメリカ発の新進ブランドを日本に紹介して流行の最先端ショップ経営者として成功するんだ。

何の準備もなく「カッコいい!」「商売できるかも!」という、安直な発想ではじめた起業でした。

安直ではありましたが、あのとき広げた大風呂敷があったからこそ、あらゆる失敗の先に成功をつかむことができたと思うのです。

「人間万事塞翁が馬」といいますよね。

何度でも繰り返します。

好きなことなら何をしてもいい。

無理に今の環境を変える必要もありません。

だからといって法に触れるようなことだけはやめてくださいね。刑務所生活になったらそれこそ後悔だけの人生になってしまいますから。

本当に楽しくてやりたいと思えること(や方法)を目一杯妄想(想像)して、行動する。

行動して経験したことから、また想像を膨らませる。

これが私のいう「大風呂敷を広げる」の意味です。

Tシャツだけで年商30億。
新開強(しんがい・つよし)
株式会社プラスワンインターナショナル代表取締役。1975年生まれ。独協大学を中退しアメリカISU(IndianaStateUniversity)に留学。地元高松にセレクトショップをオープンし、シカゴのストリートブランド「D-gital」と日本総代理店契約を結ぶなど、学生起業家として活躍。しかし、その後のアメカジブーム衰退もあって大借金を抱え、アルコールにハマり、異国の地で路頭に迷う。心身ともにどん底の中、代理店時代に見よう見まねではじめたグラフィックデザインでTシャツのPBを作ったことが大きな転機に。帰国後の2003年、オーダーメードプリントTシャツ事業を創設。

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