(本記事は、藏本猛Jr氏の著書『誰も知らなかったラーメン店投資家になって成功する方法』=合同フォレスト、2019年10月10日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

ラーメン店は1日何杯売れば儲かる?

ラーメン
(画像=hijodeponggol/Shutterstock.com)

ラーメン店は1日に何杯売れば儲けが出るのかという質問をよく受けるのですが、実のところかなり幅があるので、正確な数値で即答することは難しいです。

座席数やメニューの種類、仕入れている材料費や、人件費、家賃など、経費によってずいぶんと変わってくるためです。

ただ、それでもざっくりとしたイメージを持っていただくためにあえてお答えしているのは、黒字と赤字の分岐点は60~70杯というあたりです。

1日に100杯売っているラーメン店も結構あるのですが、このクラスならかなり儲かっている優秀なお店と考えてよいでしょう。

この業界では月に1席で20万円売り上げれば繁盛していると言われています。

10席あるお店なら月に200万円売り上げているということです。

たとえば私が当時関わっていた「麺屋一燈」というお店は11席で月に500万円ほど売り上げていますから、かなりハイレベルと言えます。

ラーメン店を始めるとき、店舗が決まっている場合は別ですが、まだ店舗が決まっていない場合は、10席ほどの店舗をお勧めすることが多いのです。多くても24席止まりです。

これは、10席くらいであれば、1人でなんとか切り盛りできるというのが理由です。24席になるとやはりスタッフが3人はいないと回せなくなります。

さらにこれ以上の席数になると、スタッフが5~6人は必要になりますので、人員の確保や管理が難しくなってきます。

ですから私は、席数は10~24の間を勧めているのです

ただ、先に大きな物件が手に入ってしまって、これを前提にプロデュースしなければならないときがあります。このようなときは私でもかなり神経を使います。

やはり大型の店舗になると、ファミリー層のお客さまも当て込まなくてはいけません。そのために、メニューの幅も広げる必要が出てきます。

ですから、25席以上の物件で出店するときは、結構な大勝負をすることになります。

プロの意見を退けたオーナーを待っていたのは…

以前、不動産のオーナーが100席も入る大型物件を用意してお店を出すことになったことがあります。そこで私は出店した後も1年間コンサルティングを続けました。この規模になると気を抜けません。

ところが売上が順調だったので、途中でオーナーがもう大丈夫だと判断してしまいました。それでもう、私のコンサルティングは必要ないと言い出します。

「いや、ここで手を抜くとまずいですよ。この規模のお店は3年間は私に見させてください。コンサルティング料がかかる分儲けが少なくても、この3年間さえしっかり経営すれば、息の長い名店になりますから」

と私は忠告したのですが、すっかり売上に気を良くしていたので、「もう、藏本さんのコンサルは要りませんよ」と聞く耳を持ちません。

私としてもコンサルティングを押し売りするつもりはまったくありませんでしたので、

「それならお好きにどうぞ」と手を引きました。

すると3ヵ月ほどで売上が激減してしまいました。

―ああ、まずいなぁ。

それでもコンサルを押し売りする気がまったくありませんでしたので、傍観しておりました。もしかするとご自分で何か手を打つかもしれませんし。

すると半年後にオーナーが血相を変えて私の元にやってきました。

「なんとかしてくれ。もう一度コンサルしてくれないか」
「だから手を抜いてはいけませんよ、と忠告したのです」

とはいえ、困っているオーナーの依頼を断るほど私も鬼ではありませんので引き受けましたが、「一度下がった業績を立て直すのは、コンサルを継続していたときよりも難しいですよ」と念を押しておきました。

それは嫌みではなく、本当のことだからです。順調な売上を維持することよりも、一度激減した売上を戻すことのほうがはるかに難しい。たとえば3ヵ月間売上が下がっていたとすると、売上を戻すまでには倍の6ヵ月間が必要になります。もうこれで安心だ、という状況にまで立て直すには3倍の期間がかかることもあるのです。

「それなりに予算もかかりますよ」

分かった―と納得されたので、立ち上げ直しを行いました。

お店の規模に見合った品揃えが必要

売上が激減してしまったお店の状況をチェックすると、味も盛り付けも雑になっていました。お店を仕切っている店長にもよりますが、プロの監視がなくなると、これほどあっけなく品質が下がるものなのです

やはり雇われている人たちから見れば、お任せでほったらかしのオーナーがいるだけでは緊張感が続かないのでしょう。店の規模が大きい分、雑になりやすかったということもあります。

しかも売上が順調だった時期もあったので、店のスタッフも自分たちだけでも好きなようにやらせてもらえればもっと売上を上げられると錯覚してしまいます。

そのため、私がいなくなってから最初の1ヵ月間くらいまでは私に言われたことを忠実に守っていたのですが、2ヵ月目あたりからだんだんと自分たちなりのやり方を始めてしまうのです。

そしていったん味や盛り付け、店内の清潔感などが劣化してしまうと、お客さまに「最近、この店の質が落ちたな」と思われてしまいます。そうなると、それまでに育ててきたブランドイメージがあっけなくダウンしてしまいます。

しかも私がいなくなってから、メニューも勝手に減らしていました。これはスタッフが滅多に注文されないメニューはなくても同じだろう、たまに注文されると対応が面倒くさい、という素人判断をしてしまったのです。

私は「勝手にメニューを減らしてはダメだ。注文されなくてもこの規模の店舗ではそれに見合った品揃えがあることが大切なんだよ」と言いました。

つまり、注文されないと分かっていても、お客さまに選択肢を与えることが重要なのですね。

ネギ味噌ラーメンは注文されるけどネギ塩ラーメンは滅多に出ないからといってメニューからなくしてしまうと、ネギ味噌ラーメンも売れなくなるのです。

また、値段の面からも店舗の規模に見合った選択肢を用意しておく必要があります。

600円のラーメンと700円のラーメン、そして800円のラーメンしかなければ、700円のラーメンが最も売れます。次に600円のラーメンです。

これは、一番高いのはぜいたくかな、と思って避けてしまう心理と安いほうがお得だと思う心理が働くためです。

しかしここに900円のラーメンを加えれば、同じ心理でも800円のラーメンが売れるようになります。ぜいたくかな、と感じる基準が上がるためです。

ですから、めったに注文されなくても用意しておくべきメニューというものがあります。

つまり、お店のメニューは全品まんべんなく売るつもりで揃えるのではなく、お客さまに選ばせるために揃えておく必要があるのです。

ただし、準備することで余分な経費がかかりすぎるようなメニューは削除しても構いません。

ラーメン店は月に300店近く開店している人気飲食店

ラーメン店は月に300店舗開業しているとも言われるほど人気がある飲食店ですが、ほぼ同じ数だけ閉店しているとも言われるほど、競争が激しく難しいというのもまた現実です。

ですから、すでにレッドオーシャンであり、いまさら参入するのは得策ではないと考える人も多いでしょう。

ところが私に言わせれば、閉店してしまうところにはそれなりの問題があるわけで、その点を改善できていれば売上を上げることができるのです。

つまり、一見多くの競合がひしめき合っているように見えるのですが、多くの店がきちんとしたノウハウを持っていないために、実は本当の意味での競合は少ないとも言えます。

自分の店の欠点や問題点に気付かないまま営業を続けてしまっているお店のなんと多いことでしょうか。

そのような欠点や問題点を指摘して改善する方法をお教えするのが、ラーメンプロデューサーである私の仕事です。

ラーメン店がつぶれる理由はケース・バイ・ケースですので、一概にこれが原因と言い難いのですが、要するにお客さまが店に付かないのです。

ではなぜお客さまが付かないのかというと、その原因にはお店の造りや立地条件、あるいは清潔感など様々あるのですが、最も多い原因は味が不安定であることです。

極端な場合は午前中と午後では味が大きく変わってしまうお店もあります。

たまたま味がうまく出せているときに入ったお客さまはリピートしてくれますが、その2度目の来店時に味が変わっていたら、がっかりしてもう二度と来てくれません。また、味が落ちているときに来たお客さまは、もちろん次の来店はありません。

しかも、がっかりしたお客さまの何割かは、ネット上に「まずかった」「期待外れだった」「もう行かない」などと書き込んでしまうかもしれません。すると、それを見た人は、よほど好奇心旺盛な人でもない限り、最初から来てくれません。

その結果、お客さまが店に付かないのです。

誰も知らなかったラーメン店投資家になって成功する方法
藏本猛Jr(くらもと・たけし・ジュニア)
ラーメンプロデューサー。国際ラーメン協会代表(International Ramen Association CEO)1996年、父親の急死によって、27歳で父親の経営するゴルフ場の社長に就任。その後、ゴルフ場で売れ行きの良かった「ラーメン」に注目し、ラーメン店開業を目標に試行錯誤が始まる。簡単でおいしい、誰でも作れるスープを開発し、スープメーカーからの製品化を果たす。2010年に念願のラーメン店を東京に開業。2014年にラーメンプロデューサーとしての活動を開始する。2019年に国際ラーメン協会を設立。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます