金融商品を買った後、価格変動などを見ずに放置しておく個人投資家は少なくありません。「保有資産の価格変動が気になる」という人にとっては、余計な売買をしないで済むためパフォーマンスの向上につながることがあります。しかし「完全放置」は避けたほうがよいでしょう。資産配分に着目した一定期間ごとのリバランスは必要です。その理由や方法をお伝えします。リスクを抑え、人生設計に合った運用をしたい人は参考にしてください。

なぜ資産運用にリバランスが必要なのか

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(写真=Burdun Iliya/Shutterstock.com)

リバランスとは、資産配分を運用開始当初の状態に戻すことです。長期的に安定した運用をするためには、分散投資が欠かせません。投資先を株式や債券など、いくつかの種類(資産クラス)に分散するポートフォリオ運用が最も手堅い方法です。資産クラスの比率(資産配分)を、許容できるリスクに応じて決めることで、その人に最適なポートフォリオができます。

保有する資産の配分比率は、時間の経過とともに変わります。値動きがそれぞれ異なるからです。例えば株式と債券が50%ずつのポートフォリオを組み、500万円ずつ買ったとします。1年後に株価が1.5倍になり、債券価格が変わらなかった場合、保有資産の残高は株式750万円、債券500万円です。

1年後の時点で資産配分は株式60%、債券40%となり、当初に決めた比率である50%ずつから変わってしまいました。そこで株式の比率を下げ、債券の比率を上げることで、資産配分を戻します。このようにリバランスすることで、自分に見合ったリスクを保つことができます。

リバランスの方法とメリット・デメリット

リバランスの方法として最もシンプルでわかりやすいのは、「比率を下げたい資産クラスを売却し、上げたいほうを買う」ことです。先ほどの例であれば、株式125万円分を売り、同額の債券を買います。するとそれぞれ625万円ずつとなり、当初の50%に戻ります。

投資信託の積立をしている場合は、拠出額を変えるという方法もあります。例えばリバランスが完了するまで、比率が高い資産クラスへの積立を停止し、その分を他にまわす、というやり方です。拠出額の変更は、売却益に対する税金やリバランスのための手数料などがかからないというメリットがあります。その反面、拠出する都度、資産配分を確認する手間が必要です。このような作業がわずらわしいと思う人にはおすすめできません。

リバランスのメリットは、投資する資産が性質の異なる複数のクラスへと分散されることで、資産全体の価値がまとめて大きく値下がりするリスクを回避できることです。例えば所有するどれか一つの資産価値が大幅に下落したとしても、他に所有する資産価値が下がらない、または下がっても下落幅が少なければ、資産全体の価値低下は防げます。

一方リバランスのデメリットとしては、売却時に税金がかかることや、売買手数料が発生することなどがあります。そのため頻繁に行うことはおすすめできません。「1年に1回行う」「環境変化(子供の誕生など)があったときに行う」など、自分でルールを決めて運用するとよいでしょう。iDeCoやNISAなどの税制優遇を活用するのも効果的です。

リバランスの作業を省く2つの選択肢

このようにリバランスは資産配分を一定に保ち健全な運用を継続するために必要ですが、手間やコストがかかるため、あまり積極的になれない人も多いでしょう。そのような人は、リバランス不要の投資を行う選択肢もあります。

1つ目の選択肢は、資産運用の代行を依頼することです。具体的にはラップ口座の利用やロボ・アドバイザーの利用があります。例えば、ラップ口座に入れた資産の運用はまるごと証券会社や信託銀行に代行してもらえるので、資産配分からリバランスまで、投資家の手間は不要です。人工知能によるFintech、ロボ・アドバイザーも、ポートフォリオの提案だけでなく発注やリバランスなど運用を全て自動で一括して行うことができます(サービス内容は金融機関により異なります)。

2つ目の選択肢として、購入する商品を1本のバランス・ファンドに絞ることが挙げられます。バランス・ファンドは一定の資産配分のもとで運用するため、投資家自身はリバランスの作業をする必要がありません。

上記の例のようなポートフォリオを投資信託のみで組むとき、株式に100%投資するタイプの株式投資信託と、債券に100%投資するタイプの公社債投資信託を500万円分ずつ買うことになります。この場合、基準価額の変動に伴ってリバランスの作業が必要になることは前述のとおりです。

しかし株式と債券に50%ずつ投資するタイプのバランス・ファンドを1,000万円分買えば、投資家自身はリバランスの作業をする必要がありません。投資比率が50%ずつに設定されているファンドは何年経っても50%ずつの状態が保たれます。

このとき注意しなければならないのは、固定配分型を選ぶことです。バランス・ファンドには固定配分型と可変配分型があり、一定の投資比率のもとで運用するのは前者です。後者は市場環境に合わせて資産配分を変更することがあります。

資産クラスには株式や債券の他、不動産や商品(石油や貴金属、穀物など。コモディティとも呼ばれます) などがあり、地域によっても国内や新興国、先進国などに分けられます。これらの配分によってリスクやリターンは変わります。さまざまなバランス・ファンドの中から、長期的に付き合えそうなものを探してみるとよいでしょう。

年齢を重ねるとともにリアロケーションも要検討

運用期間が長くなるにつれて、リバランスだけでなく、最適な資産配分そのものを見直すリアロケーションも必要になります。 許容できるリスクは年齢を経るにしたがって小さくなっていくからです。

運用の目的が老後資金の確保である場合、若いうちであればハイリスクな投資で失敗しても、収入を増やしたり、その後の運用で盛り返したりできます。しかし50代など定年退職まであとわずかの状態で資金を大幅に減らすと、目標とする金額に達することが難しくなってしまいます。そのため資産配分は加齢に伴い、価格変動の少ない債券の割合を増やすのが一般的です。

年に1回ほどリバランスしつつ、5年・10年といった節目にリアロケーションを行えば、人生設計に合った運用を行いやすくなります。

資産配分の見直しはタイムリーにバランスよく行おう

以上のように、人生設計に合わせて運用するためには、リスクに見合った資産配分が必要です。放置しておくと価格変動によって当初の配分からズレていくため、年収や生活状況の変化に応じて定期的に点検するとよいでしょう。ラップ口座の利用やバランス・ファンドの購入などにより、自分自身で資産配分を見直して修正する作業を省略できるサービスも充実してきています。リバランスを適切に組み入れて、人生設計に合った資産運用をこころがけてみてください。(提供:Wealth Road