ネット通販の普及が百貨店業界に深刻な影響を与えている。そごう・西武は2019年3〜8月期の決算で約10億円の赤字を計上し社員1,300人を削減する人員政策に着手することを公表した。不採算店舗の閉鎖も相次ぎ行う見込みで厳しい状況が続いている。

営業損失は前年同期から約7.8億円増

そごう・西武,業績
(画像=icosha/Shutterstock.com)

セブン&アイ・ホールディングス傘下で百貨店事業を展開する「そごう・西武」の2020年2月期第2四半期における累計業績(2019年3~8月)では、営業損失が前年同期から約7億8,500万円増え10億7,800万円の赤字となった。営業収益は前年同期比1.0%減の2,943億6,000万円、売上高は同1.0%減の2,890億2,200万円、営業総利益は同2.0%減の641億4,200万円で厳しい数字となっている。

店舗によって売上の増減には差があるが売上規模が大きい主要店舗の中では特に「そごう大宮店」の売上が前年同期比3.4%減の153億9,300万円に留まっていることが目立つ。ほかの主要店舗では「そごう千葉店」が同1.1%減、「そごう広島店」が同0.6%減という結果だった。商品別の売上高でみた場合、稼ぎ頭の「衣料部門」(売上構成比37.1%)が前年同期比3.6%減となっているのが大きく響いている。

「雑貨部門」(売上構成比10.3%)は同1.6%増と伸びているが売上構成比から考えれば、やはりそごう・西武の業績改善には衣料部門の改善が必要になってくるだろう。

地方・郊外店の売上減が大きく影響

そごう・西武の売上をさらに詳しくみてみると首都圏の旗艦店では売上増が続いているものの減収が続く地方・郊外店が足を引っ張っているという構造が見えてくる。そごう・西武は2019年11月現在15店舗を展開。首都圏の旗艦店と位置付けられている「池袋」「横浜」「千葉」「渋谷」「大宮」の5店舗の合計売上高は前年同期比0.1%増と増収をキープしている。

一方、そのほかの10店舗の売上合計は同3.7%と減少傾向だ。こうした状況を打開するために、そごう・西武では今後「店舗政策」と「人員政策」の両輪で業績改善に向けた取り組みを進めるとしている。店舗政策としては不採算店舗の閉鎖や売り場面積の縮小が柱で、2020年8月~2021年2月にかけて「岡崎」「大津」「西神」「徳島」「川口」の各店舗を閉鎖する。

人員政策では人員の適正化が柱だ。具体的には、2022年度に向けて2018年度対比で社員と契約社員を合計で1,300人減らし、約86億円の人件費削減を目指す。地方店舗の閉鎖と合わせて人員を首都圏に集中させ、かろうじて増収となっている首都圏の旗艦店で売上増に向けた取り組みを強化させる考えとみられる。

ネット通販の普及などが影響、百貨店はいまが踏ん張りどころか

そごう・西武の営業収益は2016年2月期の7,687億5,700万円から2019年2月期には5,921億円まで落ち込んでいる。営業利益については一定程度踏みとどまってはいるものの、営業収益減少にともなう影響は受け止められなくなる可能性があることは懸念材料だ。

そごう・西武の業績不振は百貨店業界全体の縮小が影響している。ネット通販の普及が大きな影響を与えているのは間違いないが、主力顧客だった団塊の世代の人たちも年金生活に入り、購買力の高い層の厚みが徐々に失われていることも大きい。そんな中、そごう・西武は店舗政策として「コスメ」や「ラグジュアリー」などの成長領域を強化する考えも示している。テナントの戦略的入替などによって集客力を強化することを目指すという。

富裕層向けの特別招待会なども積極的に開き顧客層における高所得者の割合を増やすことも計画している。まさにいまが踏ん張りどころといえるそごう・西武。今決算発表で掲げた計画の実施でどこまで業績を改善できるのか、今後の動向に要注目だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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