宅配大手であるヤマトホールディングスは2019年10月31日、今期上期の中間決算が約34億の赤字に転落したことを明らかにした。集配体制の強化に向けた人件費の負担増が影響した形で荷物の取扱量も計画通りにいかなかったことなどが理由だ。ヤマトの苦境は今後も続くのか。

中間決算、34億5,900万円の赤字に転落

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(画像=Rodrigo Reyes Marin/Shutterstock.com)

ヤマトホールディングスの2020年3月期第2四半期(2019年4~9月)の累計業績は、営業収益こそ前年同期比1.4%増の8,001億2,600万円と微増したものの営業利益は同73.5%減の62億1,300万円、経常利益は同88.0%減の27億3,000万円と大幅に減り最終的な損益は前年同月期の9,981億円の黒字から34億5,900万円の赤字に転落した。

ヤマトホールディングスが中間決算で赤字を計上したのは2年ぶりとなり同社は2020年3月期の通期決算予想も下方修正している。ただ最終的には増収増益は確保する見込みで数値目標としては、営業収益は前期比2.7%増の1兆6,700億円、営業利益は同6.3%増の620億円、経常利益は同8.7%増の590億円、純利益についても同24.6%増の320億円までは盛り返したい考えだ。

宅急便の単価が上昇で営業収益は微増したが…

2020年3月期第2四半期の中間決算における結果を少し詳しく紐解くと、ヤマトホールディングスの現状が見えてくる。まず営業収益の微増は宅急便の単価が上昇したことが影響している。ただ集配体制を強化するために配達員を増員したことが響き、営業費用が前年同期より282億円も多い約7,939億円もかかってしまった。

こうした点が営業利益と経常利益、そして純利益の大幅減に結びつく結果となった。宅急便とクロネコDM便の取扱数量もそれぞれ発表されており、宅急便は前年同期比0.6%増の8億7,900万個と微増。しかしクロネコDM便は同17.1%減の5億1,900万冊となりトータルでは大きく取扱量を減らした形となる。

取扱量が落ち込んだ理由としては、ネット通販事業者からの宅配請負料金を値上げしたことなどが影響したようだ。

小さな荷物向けでPRを強化

このような厳しい状況が続くヤマトホールディングスはどのように業績改善を目指していくのだろうか。同社は決算資料で小さな荷物向けの「宅急便コンパクト」や「ネコポス」のPRに力を入れていることに触れている。日本では現在フリマアプリが広く普及し大きな荷物より小さな荷物に対する需要が増加傾向にある。

こうしたことを加味した施策でフリマアプリとの連携も進め、取扱量増による営業収益の伸びを目指したい考えとみられる。また利便性の向上による取扱量の増加も同時に目指す。例えば個人向けには、オンライン決済や匿名配送が可能なスマホ向けサービスの提供を新たに開始したほか、コンビニやオープン型宅配便ロッカーからも荷物を発送できる環境作りに努めた。

同社は2019年11月現在、集配や事務作業におけるデジタル化も推進しており、取扱量の増加とコスト減でも収益力の改善を図りたい考えだ。

時流に乗って業績改善を果たせるか

ヤマトホールディングスのここ数年の決算は安定性を欠くといわれても仕方ない数字となっている。四半期ベースでみると純利益は前年同期比の増減の幅が大きく2020年3月期第1および第2四半期では連続して赤字を計上している。通期ベースでみると売上高は緩やかな上昇が続いているが国内では人手不足が深刻なこともあり、増加する小口配送に継続して対応していくには苦労が絶えないだろう。

しかし長い目でみれば店舗に訪れて商品を購入するよりもネット通販を利用する人が増えているという潮流は、市場規模の拡大という意味で追い風ともいえる。この時流にうまく乗って業績改善を果たせるかが今後の注目ポイントであるといえそうだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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