2018 年、世界で最も裕福な10%の富裕層の数で中国が初めてアメリカを上回ったことがクレディ・スイスの調査から明らかになった。中国の富裕層がここまで増えた背景には、近年の中国経済の目覚ましい成長がある。今回の調査内容を深堀りしてみよう。

アメリカと日本を抜いた中国の富裕層

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(画像=Aritra Deb/Shutterstock.com)

クレディ・スイスの2019年版年次報告書『グローバル・ウェルス・レポート』によると世界上位10%の富裕層は純資産10万9,400米ドル(約1,193万円)以上を保有する層で世界全体の富の82%を保有している。中国は経済成長の鈍化やアメリカによる追加関税問題で窮地に立たされていたにもかかわらず、上位10%の富裕層の数は9,990万8,000人に達した。

これはアメリカの9,900万人を上回り世界1位の数だ。中国はミリオネア(純資産100万米ドル/約1億900万円以上)の数でも日本を抜き世界2位となっている。21世紀に入り中国の総世帯資産は他国と比べると3倍の速度で急成長を遂げている。2000年には3兆7,000億米ドル(約403兆3,000億円)だったが、2018年には63兆8,000億米ドル(約6,954兆2,000億円)と17倍以上に増加。

いまだに貿易条件と債務水準は懸念材料ではあるものの「今後の見通しの明るさを予見する兆候である」とクレディ・スイスは分析している。かつて日本は世界の富の源泉であった欧州やアジア経済を大きくリードしていた。しかし2009年の金融危機の影響を今なお引きづっているのに対し中国は比較的素早く回復した数少ない国の一つだった。

実質成長率は減速を続けているにもかかわらず、金融危機以降も富が着実に拡大している背景には、こうした要因があるものと推測される。

世界最大の富を保有しつづけるアメリカ

上位10%の数では中国に首位の座を明け渡したもののアメリカにおける富の拡大は不動である。2019年半ばの世界のミリオネア数は、前年同期比110万人増の4,680万人と推定されており、そのうち40%相当の約1,860万人をアメリカが占める。これに対し中国のミリオネア数は15万8,000人増の444万 7,000人、日本は18万7,000人増の302万5,000人。

上位1%の富裕層数もアメリカが1,981万 6,000人と最多を誇り、中国は487万 8,000人、日本は339万人と大差をつけられている状況だ。こうした事実を見る限り上位10%の富裕層の数で中国が1位となった理由は人口の差に起因する可能性もあるだろう。2018年のアメリカの人口は3億3,000万人で中国の4分の1にも満たない。

ミリオネアが最も減少した国は?今後日本ではミリオネアが増える?

アメリカ、中国、日本に次いでミリオネアが多い国は英国(246万人)、ドイツ(218万 7,000人)、フランス(207万1,000人)などだ。しかしドイツではミリオネアが6万5,000人増えたのに対し、英国では2万7,000人、フランスでは1万1,000人減少。オーストラリアでは12万400人の減少が見られた。

また2019~2024年にわたるミリオネアの増加率予想で日本は71%と世界最大の成長が予想されている。これに対し、アメリカは23%、中国55%、英国29%、ドイツ38%、フランスでも36%の増加が予想されている。

成人1人当たりの富は過去最高に、富の格差はやや緩和

今回の調査で成人1人あたりの富は、過去最高の7万850米ドル(約772万円)に達した。世界全体の富は増え続けていることが分かる。また純資産100万米ドル以上を保有する超富裕層の数は、世界で5万5,920人。そのうち、4,830人が500万米ドル以上を保有している。ただし2016年のピークに比べると、上位1%の富裕層が持つ富の割合は減少しており、富の格差に若干の緩和が見られる。

世界の経済情勢を反映する今回の調査。2020年のランキングはどうなるかにも注目だ。

文・アラン・琴子(英国在住のフリーライター)/MONEY TIMES

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