日本の所得税には累進課税方式が採用されていて、収入が増えれば税負担も重くなる。収入が多ければ、それだけ負担できる余裕もあるはずだという前提に立っている。

ところが、少子化対策で子育て支援策などが打ち出されていることから、所得税の負担以外において不公平感が出はじめている。子育て支援策の多くはその対象を、収入が所定の水準以下の世帯に限定しているためだ。

子どもがいて年収が一定水準以上に達している世帯は、所得税に加えて子育て費用も負担する。一方、年収が一定水準未満の世帯は子育て費用が軽減されるので、実質、手取りに格差が生じているといっていい。特に悩ましいのは、年収がその境目で前後している世帯だろう。

モデル世帯のケースでは世帯年収910万円がボーダーライン

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(写真=PIXTA)

例えば、高校授業料の無償化 (高等学校等就学支援金制度) は「保護者等」の市町村民税所得割額と道府県民税所得割額の合算額が50万7,000円未満である生徒を対象としたものだ。なお、ここで指す「保護者等」とは、原則として親権者 (両親がいる場合は2名の合算額) 、親権者がいない場合は扶養義務のある未成年後見人、保護者がいない場合は主たる生計維持者また生徒本人のことである (6月末現在、私立高校の場合は月額9,900円を支援。2020年以降は一部の私立高校を対象に無償化を検討中) 。

もっと具体的に言えば、モデル世帯 (両親のどちらかが働いていて、16歳以上の高校生1人と中学生1人の子どもがいる家庭) のケースで世帯年収が約910万円未満だった場合に高校の授業料が無償化となる。たとえわずかでも世帯年収がこの水準以上に達していれば、対象外となってしまうわけだ。

日本経済新聞がAGSコンサルティングの協力を得て民間給与実態統計調査 (国税庁) から試算した結果によれば、年収900万円超~1,000万円以下の1人当たりの所得税負担額は2016年度で59.7万円、年収1,000万円超~1,500万円以下では107.0万円となっている。

年収が1,000万円を超えた時点で所得税の税負担が約1.8倍に達しているわけだが、さらに見逃せないのは、世帯年収910万円未満と世帯年収910万円以上で前述したモデル世帯に該当する人たちの実質手取りの格差だ。世帯年収910万円未満なら高校生の子どもの授業料は負担しなくてすむが、世帯年収910万円以上だとその分を負担した結果、実質手取りが少なくなるというわけだ。

東京都生活文化局が調査した「平成30年度都内私立高等学校 (全日制) の学費の状況」によれば、平成30年度の私立高校の年間授業料は45万5,345円に達している。一方、東京都教育委員会によれば都内の公立高校の年間授業料は、11万8,800円 (平成30年4月現在) で、少々乱暴だが、世帯年収910万円以上1,000万円以下でモデル世帯に該当し、子どもが私立高校に通っている人は、年収1,000万円超~1,500万円以下の人に課されている所得税額 (107.0万円) に近い負担を強いられている恰好だ。

もしも、モデル世帯に該当して子どもたちの年齢差が2歳以下だったなら、2人とも高校に通う時期が訪れることになる。その際にも授業料無償化の対象とならなければ、実質手取りの格差は拡大してしまう。

このように、世帯年収900万円と世帯年収910万円というわずか10万円 (月額にすれば8,300円程度) の違いで実質手取りが大きく変わってくるわけである。子育て支援策の狙いを踏まえればどこかで線引きをする必要があるとはいえ、そのボーダーライン付近の人たちが不満を募らせるのは無理もないことだろう。

その点、外貨預金であれば、為替リスクなどはあるものの一律20%課税 (復興特別所得税別) で、本業の年収がいくらに達していようが分け隔てはない。

負担の格差を感じている世帯でも、日本よりも高い金利水準や為替差益を見込める外貨預金は、収入の多寡に関わらず税負担に違いのないシンプルな世界と言えそうだ。(提供:大和ネクスト銀行

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