秋も深まってまいりました。東京株式市場では、2019年7~9月期の決算発表が一部の例外企業を除き終了しましたが、株価のほうは全般、上昇一服の状態になっています。米中通商協議が停滞していることを示唆する報道が増えたからでしょうか。消費税率引き上げから間もなく2ヵ月になろうとしていますが、日本経済の足元を見つめ直すべき局面が訪れているのかもしれません。
そうした中「日本株投資戦略」では、12月に権利が確定する銘柄(12月決算銘柄)にスポットを当ててみました。好配当・好業績が期待できることもあり、12月末に訪れる権利付き最終日までに保有を検討しても良いような銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。これらの銘柄は、仮に今後、年末にかけて株式相場に押し目が形成された場合、そこが投資好機になる可能性もありそうです。
12月に権利確定の好配当・好業績期待銘柄
今回の「日本株投資戦略」では、12月決算銘柄にスポットを当ててみました。好配当・好業績が期待できることもあり、12月末に訪れる権利付き最終日までに保有を検討しても良いような銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。これらの銘柄は、仮に今後、年末にかけて株式相場に押し目が形成された場合、そこが投資好機になる可能性もありそうです。スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)東証上場銘柄であること。
(2)時価総額が1,000億円以上の銘柄であること。
(3)12月決算銘柄であること。
(4)広義の金融や、投資法人等を除く業種の銘柄であること。
(5)2019年1~9月期(第3四半期)累計の営業増益率(前年同期比)が通期予想営業増益率(会社予想)を上回っていること。
(6)来期(2020年12月期)、市場予想営業利益が増益予想となっていること。
(7)予想配当利回り(今期市場予想)が2%以上の銘柄であること。
これらの全条件を満たす銘柄について、(7)の予想配当利回りが高い順に並べたものが表1となります。「日本株投資戦略」では、これらの銘柄について、今後、年末にかけて株式相場に押し目が形成された場合、そこが投資好機になる可能性もあると考えています。
なお、ここで注意をしたいのが「配当利回り」です。予想配当利回りは、当該年度のすべての配当を受け取ったと仮定した場合に得られる利回りになりますので、期末配当を受け取っただけでは得る利回りは異なります。例えばブリヂストン(5108)の場合、すでに2019年6月末に1株80円の配当を実施しており、期末に予想(会社予想・市場予想とも同じ)されている1株80円の配当を受け取ると、年間160円の配当を受け取る計算になります。この160円が株価(ここでは11/21終値4,372円)に対して3.66%になっており、これが同社の予想配当利回りになっている訳です。
表1 12月権利確定の好配当・好業績期待銘柄(1)~株価・配当利回りデータ
コード / 銘柄 / 株価(11/21) / 1株配当金期末市場予想 / 1株配当金今期市場予想 / 今期予想配当利回り
<5108> / ブリヂストン / 4,372 / 80.00 / 160.00 / 3.66%
<4186> / 東京応化工業 / 3,945 / 60.00 / 120.00 / 3.04%
<4704> / トレンドマイクロ / 5,720 / 171.69 / 171.69 / 3.00%
<8804> / 東京建物 / 1,538 / 19.44 / 38.44 / 2.50%
<8060> / キヤノンマーケティングジャパン / 2,458 / 30.00 / 60.00 / 2.44%
<6268> / ナブテスコ / 3,245 / 37.00 / 73.00 / 2.25%
<6326> / クボタ / 1,683.5 / 19.54 / 36.54 / 2.17%
<4812> / 電通国際情報サービス / 3,945 / 46.50 / 81.50 / 2.07%
表2 12月権利確定の好配当・好業績期待銘柄(2)~営業増益率(前年同期比・前期比)
コード / 銘柄 / 2019/1~9期実績 / 2019/12期会社予想 / 2020/12期市場予想
<5108> / ブリヂストン / -13.9% / -18.1% / 7.1%
<4186> / 東京応化工業 / -10.0% / -21.0% / 26.4%
<4704> / トレンドマイクロ / 7.1% / 6.0% / 6.5%
<8804> / 東京建物 / 13.7% / 6.9% / 1.6%
<8060> / キヤノンマーケティングジャパン / 50.2% / 7.1% / 3.5%
<6268> / ナブテスコ / 45.8% / 10.1% / 13.0%
<6326> / クボタ / 12.0% / 5.6% / 3.8%
<4812> / 電通国際情報サービス / 34.3% / 3.2% / 8.5%
※会社公表データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。市場予想はBloombergが集計した市場コンセンサス。予想配当利回りは、当該年度のすべての配当を受け取ったと仮定した場合に得られる利回りになりますので、期末配当を受け取っただけでは得る利回りは異なります。
単純な配当利回りランキングとの違い
平均的な予想配当利回りは日経平均採用銘柄で2.07%、東証1部で1.92%になっています。表1に掲げた銘柄の予想配当利回りは、これらの平均と差は少なく、インパクトに欠けると思われるかもしれません。
表3は同じ12月決算銘柄の主力銘柄を対象にしつつも、予想利回りは相当に高めです。特に、トップの日本たばこ産業(2914)は、会社の知名度も高く、予想配当利回りは東証1部全体の中でもトップ級とみられます。上記の平均と比べても配当利回りは高く、これらの銘柄に魅力を感じる投資家も多いと思われます。
ただ、表1の銘柄は足元の四半期業績を、より慎重にチェックしており、その実績から、業績予想下方修正のリスクは相対的に低いと考えられます。また、アナリストが来期営業増益を予想している銘柄であり、市場で中期的成長期待が高めの銘柄であると考えられます。
配当を享受しながら投資する場合、中長期的なスタンスでその銘柄を保有することが多くなると思います。その意味では、業績や成長性に対する配慮は必要であると考えられます。表1の銘柄は、そうした配慮のために、ある程度全体の予想配当利回りを犠牲にしていると考えることができます。
なお、表3のような、業績や成長性への配慮を低めにしたランキングでも、投資タイミングに十分気を付けたり、分散投資をすることによって、リスクを抑えることは可能であると考えられます。
表3 【ご参考】主力12月決算銘柄・予想配当利回りランキング
銘柄 / 銘柄名 / 株価(11/21) / 予想配当利回り
<2914> / 日本たばこ産業 / 2,482.0 / 6.20%
<7751> / キヤノン / 2,986.5 / 5.36%
<5214> / 日本電気硝子 / 2,367 / 4.65%
<5301> / 東海カーボン / 1,036 / 4.63%
<4927> / ポーラ・オルビスホールディングス / 2,576 / 4.50%
<4004> / 昭和電工 / 3,030 / 4.49%
<4631> / DIC / 2,966 / 4.32%
<7272> / ヤマハ発動機 / 2,250 / 4.00%
<5110> / 住友ゴム工業 / 1,381 / 3.98%
<5108> / ブリヂストン / 4,372 / 3.66%
<6141> / DMG森精機 / 1,693 / 3.54%
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。表1の銘柄を導き出すスクリーニングから(5)および(6)の部分を取り去ったもので、その上位10銘柄を掲載したものです。この表は客観的なデータを示す目的で作成しており、銘柄の推奨を意図したものではありません。
鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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