激務なコンサルタントでありながら、不動産投資家として本業の年収の何倍もの金額を稼ぎ、“億超え”の資産を築く。連載『資産“億超え”の兼業投資家が教える「時間レバレッジ」のかけ方』では、石川貴康さんがいかにして時間を生み出し、資産を増やし続けているのかを実例を交えて紹介してもらう。
第15回のテーマは「チェックリストとマニュアル活用」である。チェックリストとマニュアルの作成により、どれだけ無駄な時間を減らし、新たな時間を生み出すことができるのか。石川さんの住む地域での「祭りの準備」のビフォーアフターを例に解説する。
チェックリストとマニュアルをうまく活用しよう
前回コラム「時間と資金のムダを省く『プロジェクトマネジメント』スキル習得のススメ」では、近年「プロジェクト化」しつつある仕事に対し、プロジェクトプラン型の仕事の組み立てを行うことで、時間をムダにしない時間レバレッジ方法を紹介した。
とはいえ、プロジェクトプランの考え方は難しい。現代の先進企業でもプロジェクトプランの立て方自体が教育されていないので、かなりハードルの高い話をしたかもしれない。
今回は、そこまで専門的な知識がなくとも実践できるプロジェクトプラン的な手法であるチェックリストの効用、そして指示や教育の時間をセーブするマニュアル化の手法をお伝えする。
バカにできないチェックリストの有用性1:ヌケモレ防止装置
プロジェクトプラン型の仕事ではタスクの分解を行う。タスク分解はチェックリストを作るのと似ている。チェックリストは仕事をする際に、作業のヌケモレがないようにするための手法である。
ヌケモレが発生すると、後々リカバリーするのが大変だ。複数の組織を横断して作業する場合、途中でヌケモレがあると、ミスをした組織までさかのぼって直さねばならず、大変な時間のロスになる。
私もかなり以前に、ある証券会社に口座開設申請をした際、提出必要文書の欠落と記入漏れがあって、何週間も時間をロスしたことがあった。何度も書類のやりとりをし、切手代も余分にかかった。結果的に口座開設が遅くなり、取引開始が遅れ、金融商品を買いたいタイミングも逸した。
その後に口座申請した別の証券会社では、チェックリストが整備されていた。重要な項目は記入したかどうか、必要な書類が入っているかどうかのチェックリストがあったのだ。チェックすることでヌケモレを回避でき、すぐに口座を開くことができた。当然時間も切手代もムダにはならなかった。ヌケモレが発生しなかったからである。
バカにできないチェックリストの有用性2:作業の組み立ての補助装置
チェックリストのお役立ち機能は、作業のヌケモレを防ぐだけではない。作業を組み立てる際の補助装置にもなるのである。なぜなら、チェックリストを作る過程で必要なことが可視化され、過不足が“見える化”するからである。
きちんとしたチェックリストを作るためには、必要なタスクを列挙したうえで、可能な限り思いつくタスクを洗い出す。その作業過程で、自分がチェックすべき項目が“可視化”される。自分が必要だと考えるタスクを目にするうちに、足りないタスクが明確になっていく。
例えば、セミナーを開催する際の会場設営の事前準備作業を考えるとしよう。主に以下のような作業が必要だと考えられる。
- 机、椅子の準備と並び変え
- 受付机の準備と設営
- スクリーンとプロジェクターの準備と設置
- マイクの準備と設置
こうして必要タスクをチェックリストとして書いていくと、例えば受付机を設営したら、受付の名簿やペン、名札の準備が必要だと思いつくだろう。
さらに、名簿が要るとしたら、何枚用意するか、それに合わせてペンを何本用意するかを決める、お金を受け取る際の領収書の準備をする、おつりの金種の確定とおつりの準備をするなど、準備すべきタスクがどんどん浮かんでくるはずだ。
検討の過程で、タスクの前後依存関係も整理される。チェックリストを作るうちに、自然とどの順番でタスクに着手するかも考えるようになる。チェックリストの並び順は、タスクの着手順序を検討した結果にもなるのである。
バカにできないチェックリストの有用性3:タスクの伝達装置
繰り返し性のある仕事では、2回目以降の作業の伝達にチェックリストが有効である。卑近な例でいうと、わが町内会の祭りの準備ではチェックリストが絶大な効果を生んでいる。
過去の祭りでは、町内の大御所が采配を振ってきた。しかし、大御所が思い出して指示を出すまで他の人たちは作業ができずにいた。
実際の作業内容は大御所の記憶に頼るしかなく、さらには記憶違いも少なくないため、間違いや順序のミスが多発し、作業のレベル感も正しく把握できず、試行錯誤をしながら進めていた。
このため、町内の祭りの準備や運営、後片付けに時間がかかって仕方がない状態であった。皆にとって祭りの準備はストレスのかかる作業になり、回を重ねるごとに険悪なムードになっていた。拘束時間が長く、やりとりが面倒で、だんだん誰も手伝わなくなっていった。
そこに若いメンバーが参加し、大御所をおだてながら進めたのがチェックリスト化である。