前日については、トランプ大統領とロス米商務長官の発言内容が米中通商協議進展期待を後退させてとして、ドル円は一時108.488円まで下落しました。トランプ大統領はNATO首脳会議に出席するために訪問中のロンドンでの記者会見で、米中通商協議に関して、「合意に期限は設けていない、来年の米大統領選の後まで待ったほうが良いかもしれない」と発言し、マーケットが既に織り込みつつある第一段階の合意が遠のいたとの思惑が強まり、リスク回避の動きが強まりました。また、ロス米商務長官もCNBCテレビのインタビューで、「米中協議に関するトランプ大統領の目標は変わっていない」と述べ、合意に向けた時間的期限は設けていないとの見解を示しました。
また、追加関税の発動期限が15日に迫っていることについて、「発動を見送る実質的な理由がない限り、追加関税は予定通り発動される」と発動見送りがコンセンサスになっていたものの、発動される可能性が高いことを示唆しており、これまで構築してきたマーケットの思惑は一気に崩れ落ちることとなり、急速にドルロングの手仕舞いの動きが強まったものと思われます。
週末に行われ、保守党のリード縮小が報じられた英国総選挙の世論調査ですが、調査会社ユーガブが行った最新の結果によると、与党・保守党の支持率は1ポイント低下の42%、野党・労働党も1ポイント低下し33%とほぼ横ばいの内容になったため、ドル売りが目立つ内容となり、ポンドドルは1.300ドル台を回復する動きになっています。
今後の見通し
ここにきて、トランプ大統領の一挙手一投足がリスク回避の動きを強めています。米中通商協議関連の報道は上述した通りですが、マクロン・仏大統領との会談では、既に、デジタル課税が米企業に差別的な税制だとして、フランス産品約24億ドル相当への報復関税を検討すると発表していますが、フランスが導入したデジタルサービス税に関して「改善するか、相互に有益な税にするかが重要」との見解を示しています。また、ドイツに対しては「北大西洋条約機構(NATO)への拠出金を増額するべき。さもなければ貿易措置を取る」と警告し、北朝鮮に対しては、軍事制裁の可能性を示唆し、日本に対しては、駐留費負担増を要請したことを明らかにしました。トランプ大統領がブラジルとアルゼンチンに追加関税を課すと公表したことは、米中通商協議への牽制の意味合いだと考えられましたが、実際は遥かに凌駕する規模なのかもしれません。
本日の日経平均株価は、米中通商協議進展期待後退の思惑から、寄り付きより大幅安で推移しており、連れるように、ドル円を筆頭とするクロス円も下値を拡大しています。本日の海外時間でも、リスク回避の巻き戻しとして捉えられそうなイベントは控えておらず、自律反発を期待するにはネガティブな報道が相次いでいるため、基本的には戻り売りが本日のメイン戦略になりそうです。
ポンドドルロングは一旦利食い、再度押し目待ち
1.2840ドルでのポンドドルのロング、狙い通り1.2980ドルでの利食い、手仕舞です。最終的にはポンド買いというよりは、ドル売りの動きに助けられましたが、潜在的なポンド買い要因は依然として強いものと考えています。再度ポンドの押し目待ちを戦略とし、1.2940ドル台でのポンドドルのロングを想定しています。利食いは1.3080ドル付近、損切りは1.2880ドル付近下抜けに設定します。
海外時間からの流れ
本日、米下院司法委員会が大統領弾劾調査の公聴会を開催しますが、東京時間では、米下院情報特別委員会がトランプ米大統領弾劾調査報告書を承認したほとの報道があり、さらには、米下院は人権を巡って中国高官を制裁対象にする法案を可決したとも報道されており、前日の流れを引き継ぐようにリスク回避に繋がる材料がでてきています。前週までは、リスク選好のヘッドライン待ちでしたが、今週はリスク回避のヘッドライン待ちという状況になってきています。
今日の予定
本日は、ユーロ圏・11月サービス業PMI(確報値)、英・11月サービス業PMI(確報値)、米・11月ADP民間雇用者数、米・11月マークイットサービス業PMI(確報値)、米・11月ISM非製造業景況指数、加中銀(BOC)政策金利発表などの経済指標が予定されています。要人発言としては、クォールズ・FRB副議長の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。