前日については、トランプ大統領とロス米商務長官の発言内容が米中通商協議進展期待を後退させた一昨日の報道を覆すかのように、「米中貿易協議の第1段階において制裁関税の一部撤回で合意に近づいている」との報道が好感され、ドル円は108.40円台から108.80円付近まで急反発しました。その後に発表された経済指標では、米・11月ADP民間雇用者数が市場予想13.5万人増が6.7万人増、米・11月ISM非製造業景況指数が市場予想54.5が53.9と総じて悪化したものの、第1段階の合意が近いとの報道が好感されたことでNYダウが220ドル超上昇し、ドル円は一時108.961円まで上値を拡大しました。

一昨日は、失望感に包まれたマーケットの雰囲気でしたが、コンウェイ米大統領顧問が「年内の米中通商合意は依然として可能であり、第1段階の協定文書が策定段階にある」と述べていた通り、実際には1段階の合意については、進んでいたのかもしれません。米中通商協議「第1段階」の部分合意に関しては、15日に発動予定の対中制裁関税第4弾(約1600億ドル)を回避できるかどうかが焦点になっていますが、当面は関連するヘッドラインに振らされる展開になりそうです。

英国の総選挙関連では、調査会社サバンタ・コムレスが12月12日の総選挙に関する世論調査結果によると、与党・保守党に投票すると回答した有権者の割合は全体の42%、野党・労働党は32%という結果になりました。マーケットも、英国総選挙で波乱はないだろうとの考えが強まり、保守党勝利の可能性が高まったことで、ポンドは急騰しています。ポンドドルについては、1.3100ドル台を示現しており、ポンド買い意欲が強まっています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

昨日は米中通商協議関連の悲観的な報道から、一気に楽観的な見方が強まりましたが、依然としてリスク回避要因が幾つか控えています。1つ目は、少数民族ウイグル族を弾圧する中国当局者に制裁を科すようトランプ政権に求める「ウイグル人権法案」です。米下院は圧倒的な多数で可決し、上院でも可決され、大統領が署名すれば成立という流れになります。ただ、中国は「重大な内政干渉であり、国際法に違反する」と反発しています。

さらに、トランプ大統領のウクライナゲートを巡る弾劾調査です。シフ下院情報特別委員会委員長は、弾劾調査公聴会での質疑応答を踏まえ、12月第2週までに弾劾決議案を可決・成立させ、第3週に下院本会議に送付し、第4週の25日クリスマスに下院本会議で弾劾決議案を賛成多数で成立させることを目論んでいると報道されています。

地政学的リスクとしては、トランプ大統領が北朝鮮に対して必要があれば軍事力を行使すると警告したことを受け、朝鮮人民軍総参謀長は「米国がわが国に軍事力を行使すれば、われわれも直ちに同様の行動を取る。米国にとって悲惨なことになる」と反発していることもあり、状況によってはリスク回避要因として捉えられる可能性があります。

マーケットは完全に保守党勝利を織り込みにいっている

再度ポンドの押し目待ち戦略でしたが、大きな押し目なく、マーケットは保守党の勝利を織り込みにいったため、ポンドドルは1.31ドル台を示現するほど急騰しています。当面押し目らしい押し目はないと考え、ポンドドル、1.3100ドルで成行ロング、利食い目途は1.3300ドル、1.3050ドル下抜けで損切りの戦略とします。

海外時間からの流れ

本日の東京時間では、NZ準備銀行(RBNZ)が国内銀行の自己資本比率を引き上げることを発表し、期間を従来提案の5年から7年に拡大されるなど規制内容が緩和されたことが好感され、一部国内銀行が来年の利下げ予想を2回から1回に変更したこともNZドル高に繋がっています。また、日本の政府・与党による経済対策の事業規模は26.0兆円程度と発表され、市場コンセンサスを超えた内容になったことも、リスク選好の動きをサポートしています。

今日の予定

本日は、ユーロ圏・11月サービス業PMI(確報値)、英・11月サービス業PMI(確報値)、米・11月ADP民間雇用者数、米・11月マークイットサービス業PMI(確報値)、米・11月ISM非製造業景況指数、加中銀(BOC)政策金利発表などの経済指標が予定されています。要人発言としては、クォールズ・FRB副議長の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。