日本時間12/13(金)は、株式市場にとっては前向きな2つのビッグ・ニュースで幕を開けました。ひとつは米中通商協議で大きな合意が成立し、関税回避、さらには引き下げの方向になりそうなこと、そしてもうひとつは英国議会選挙で、保守党が過半数を制する見通しであると「出口調査」の結果として報じられたことです。

折しも、この日の東京株式市場は「メジャーSQ」の算出日でしたが、これらの報道を追い風に高い水準での清算値決定となりました。また、取引開始前には日銀短観(12月調査)の発表もありました。株式市場にとって追い風になる海外発のニュースと、国内の重要日程消化をテコに、朝方から買い先行となり、日経平均株価は年初来高値を更新、午後には、取引時間中としては昨年10/4(木)以来となる24,000円回復を実現しました。

今後はどうなるのでしょうか。米中通商協議は両国の覇権争いの様相を呈しており、根本的な解決は難しいとみられましたが、仮に報道の通り合意が成立すれば、当面の休戦状態を好感する展開になりそうです。英国議会選挙も、東京株式市場に影響を与える可能性がいっそう小さくなりそうです。そうした中、すでに日本時間12/12(木)に結果発表となったFOMC(米連邦公開市場委員会)を受け、米国の緩和的金融政策が長期化する可能性もさらに強まっており、株式市場ではリスク許容度が高まり、株価が上昇する展開が期待できそうです。

さて、今後はどうなるでしょうか。物色対象としてはどんな銘柄が注目されるのでしょうか。

株式市場は「リスクオン」に

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

東京株式市場を取り巻く、国の内外で起こった一連の動きを整理すると以下のようになりそうです。

(1)世界的に緩和的金融政策が継続

日本時間12/12(木)に結果発表となったFOMC(米連邦公開市場委員会)では、市場の予想通り政策金利の引き下げが見送られました。しかし、パウエルFRB議長がハト派的姿勢を強めたことで、米国の緩和的金融政策が長期化する可能性もさらに強まったと考えられます。

(2)米中通商協議が合意に接近

日本時間の12/13(金)、複数の報道機関が報じるところでは、米中通商協議が合意に近づいているようです。12/15(日)に予定されていた中国から米国への輸入への課税の第4弾(その2)は見送られ、すでに賦課されている第3弾までの分についても一部引き下げが検討されているようです。仮に、合意の内容がその通りであれば、市場が想定していたシナリオのうち、もっとも楽観的なものに近い内容となるため、株式市場にとっては追い風になると想定されます。(図2参照)

(3)国内重要日程の通過

東京株式市場は12/13(金)にメジャーSQ算出日を迎え、結果的にはそこを無事通過する形になりました。また、この日の取引開始前に発表された日銀短観(12月調査)では、製造業・大企業の業況判断指数が悪化しましたが、非製造業は心配されていたほど、悪くありませんでした。いずれにせよ、国内重要日程もそろって無事通過となりました。

(4)英国議会選挙で保守党が過半数確保の勢い

日本時間12/13(金)朝の段階で、英国議会選挙における「出口調査」の結果として、保守党が過半数を制する勢いであることが伝えられました。株式市場での事前のコンセンサスに近い形であり、新たなサプライズになった訳ではありませんが、「13日午後にも大勢が判明か」と報道されていたこともあり、予想外に早い時間で大勢が判明した格好になりました。

図1をご覧いただければおわかりいただける通り、日経平均株価は12/13(金)に大幅高になり、三角保ち合いから上方向に放れる典型的な形となりました。米中通商協議や英国議会選挙が報道の通りであれば、株式市場は当面「リスクオン」の状況になりそうです。日経平均株価は当面、昨年の10/2(火)に付けた高値24,448円07銭を目指す展開になりそうです。

図1 日経平均株価は典型的な保ち合い放れの様相

図1 日経平均株価は典型的な保ち合い放れの様相
(画像=当社チャートツールをもとにSBI証券が作成)

図2 中国から米国への輸入と関税の現状

図2 中国から米国への輸入と関税の現状
(画像=報道等をもとにSBI証券が作成)

【ご参考】投資対象として注目される銘柄は?

前述したように、日銀短観(12月調査)では、製造業・大企業の業況判断指数が悪化しましたが、非製造業は心配されていたほど、悪くありませんでした。非製造業の業況判断指数は、前回調査の「先行き」が+15でしたが、今回は+20でした。12月の業況は、9月に「予想していたほどには悪くなかった」ことになります。すなわち、年明けに発表される予定の10~12月期の決算では、非製造業については上振れる可能性があります。

業種(日銀短観の分類)的には建設、運輸・郵便、通信、情報サービス、電力・ガス、宿泊・飲食サービスが「予想していたほどには悪くなかった」業種になっています。こうした中、12/12(木)に連立与党が決めた税制改正大綱では、次世代通信規格「5G」への通信網整備を促す税制の創設が盛り込まれています。これらを考えるとセクターとしての「情報・通信」には強い追い風が吹いていそうです。SBI証券の「テーマキラー!」でも、5Gが急上昇ランキング首位に躍り出ており、この分野は新たに注目してよさそうです。

そこで、「日本株投資戦略」では、東証業種「情報・通信業」の中から有力銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)東証1部の「情報・通信業」に属する銘柄であること
(2)時価総額が1千億円以上の銘柄であること
(3)業績予想を公表しているアナリストが2人以上の銘柄であること
(4)市場予想(Bloombergの市場コンセンサス)営業増益率が今期・来期ともに10%以上の予想であること
(5)直近の累計四半期営業増益率が通期会社予想増益率より高いこと
(6)直近が本決算の場合、営業利益実績が事前の会社予想を上回っていること

上記のすべての条件を満たす銘柄を、来期予想営業増益率の高い順に並べた銘柄が表1になります。これらの銘柄は、今後の株式市場で注目される銘柄の一角に入る可能性が大きいと「日本株投資戦略」では考えています。

税制改正大綱も追い風?~「情報・通信業」で好業績が予想される銘柄
(画像=SBI証券)

表1 税制改正大綱も追い風?~「情報・通信業」で好業績が予想される銘柄はコチラ!?
コード / 銘柄 / 株価(12/13) / 市場予想営業増益率今期予想 / 市場予想営業増益率来期予想
<3697> / SHIFT / 7,640 / 58.9% / 40.1%
<9684> / スクウェア・エニックス・ホールディングス / 5,550 / 54.1% / 23.8%
<9928> / ミロク情報サービス / 3,400 / 25.3% / 17.8%
<7518> / ネットワンシステムズ / 3,120 / 24.4% / 11.8%
<9601> / 松竹 / 16,250 / 20.5% / 11.8%
<2317> / システナ / 1,750 / 20.2% / 15.1%
<4684> / オービック / 14,480 / 13.7% / 10.7%
<1973> / NECネッツエスアイ / 3,570 / 13.0% / 11.1%

※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。市場予想はBloombergが集計した市場コンセンサス。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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