テレビなどでも盛んに報道されたように、2019年6月3日に公表された金融審議会市場ワーキング・グループの報告書「高齢社会における資産形成・管理」の内容が大変な騒動を招いた。報告書内でなされた指摘の一つが“独り歩き”してしまった恰好だ。

年金生活者 (高齢夫婦無職世帯) の平均的な毎月の赤字額は約5万円で、この不足分は貯蓄を取り崩して穴埋めしているのが実情であり、20年間で約1,300万円、30年間では約2,000万円になると指摘された。「今でさえ公的年金だけでは足りない→高齢者がさらに増える今後はもっと足りない→公的年金制度は100年安心というのは偽りか ? 」といった具合で不安が広がったわけである。

だが、実は公的年金だけでは家計に赤字が発生しているという実態は、厚生労働省や総務省による統計調査によってかねてから指摘されていたことだ。

何らかの自助努力と「資産寿命を延ばす」という取り組みが必要

運用,資産年齢
(写真=PIXTA)

そもそも、「それだけで老後の暮らしは万全ですよ」と太鼓判を押す意味で、「公的年金制度は100年安心」と国がアピールしていたわけではない。あくまで、高齢者が増えていっても制度自体はちゃんと存続させられると訴えていた。

一方で、公的年金制度が老後の生活を支える柱であることに変わりはなかったとしても、高齢者 (年金をもらう人) の数が増えて現役世代 (保険料を負担する人) の数が減るに従って、給付額が現状よりも減っていく可能性は否めない。現在のシニアと比べれば、自己資金で穴埋めすべき金額が増えることは十分に考えられるだろう。

物議を醸した報告書にしても、いたずらに国民の不安を煽ろうとしたわけではなさそうだ。内容の骨子は、「長寿化が進む中、資産寿命を延ばす観点から広く国民が知っておくことが望ましい」というのがその意図のようである。

「老後30年間で2,000万円」という数字は平均値から算出した目安にすぎないが、誰しも公的年金だけに頼り切るのではなく、何らかの自助努力を行ったほうが無難だと助言しているわけだ。そして、「資産寿命を延ばす」とは、取り崩していってもすぐには底が尽きないように、蓄えをできるだけ増やしておいたり、取り崩しが少額になったりするように工夫を施すことを意味する。

「資産年齢」を長寿化するための3つの取組み

同調査が騒ぎを招いた一因として、「資産寿命」というショッキングな言葉が用いられていたことも挙げられるかもしれない。とはいえ、平均寿命が長くなるにしたがって資産の長寿化を心がけることが重要なのも確かだ。

では、具体的にどんな方法によって、「資産年齢」を長寿化することが可能なのか ? 主に、①老後も可能な限り働き続ける、②節約して老後の家計をスリム化する、③できるだけ早いうちから資産運用に取り組む−−という3つが考えられるだろう。

このうち、①については年金以外の収入を確保できるので、貯蓄の取り崩しを回避できるか、もしくは少額に食い止められる。②も①と比べれば効果は限定的だが、支出が減る分だけ資産が長寿化しそうだ。

さらに、時間を費やすほど有効だと言えるのが③である。たとえば、定年までの20年間に毎月5万円ずつコツコツと貯蓄を続けて1,200万円を蓄えたとしても、一般的な円定期預金 (年利0.01%半年複利) に預けたままでは1,201万1,942円 (税引前) にしかならない。

これに対し、もっとリスクを取って3% (半年複利) まで運用利回りを高めれば、同じく積み立てた元手の総額が1,200万円であっても、20年後には1,642万2,922円 (税引前) に増えている。このように、効率的な運用ができるか否かで結果が大きく異なってくる可能性があるのだ。

一般的に資産運用では、「長期・積立・分散」を心掛けることが基本だとされている。少しでも早いうちから、少額ずつコツコツと積立を続けるとともに、安全性が高くても増やすことは期待できない円定期預金などに一極集中させるのではなく、様々な金融商品に分散して運用利回りの向上を図ることが大切だといえよう。(提供:大和ネクスト銀行


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