旅行好きな人に人気の株主優待銘柄と言えば、ANAホールディングス <9202> と日本航空(JAL) <9201> 。今回は、ANAとJALのどちらがお得かについて探っていこう。両社の株主優待を受けるために必要な投資額や株主優待の内容、両社の株主優待の違いなども含めて解説する。

目次
1,ANAとJALの株主優待を獲得する方法
2,ANAとJALの株主優待を比較
3,ANAの株主優待の2つの特徴
4,JALの株主優待の2つの特徴
5,ANAとJALの株主優待の違いは?
6,ANAとJAL、株主優待がお得なのはどちら?
7,株主優待目的でANAやJALへ投資する意味

1,ANAとJALの株主優待を獲得する方法 株価と最低投資額、購入方法は?

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(画像=NextNewMedia/Shutterstock.com)

ANAやJALの株主優待を受けるためには、各銘柄を単元株(100株)以上購入し、権利確定日の3月31日と9月30日に株主名簿に名前が載っている必要がある。

株の購入に必要な最低投資額(取引手数料と消費税を除く)は以下のとおりだ。株価は、2019年12月17日終値を採用した。

銘柄 コード 株価 最低投資額
ANAホールディングス 9202 3,704円 37万400円
日本航空(JAL) 9201 3,454円 34万5,400円

株主優待の権利を得るには、権利確定日から起算して3営業日前の権利付最終日までに、欲しい銘柄の買付注文が約定される必要がある。2020年の権利付最終日と権利確定日、株主優待番号発送日は以下のとおりだ。

権利付最終日 2020年3月27日(金) 2020年9月28日(月)
権利確定日 2020年3月31日(火) 2020年9月30日(水)
株主優待番号等発送日 5月中旬 11月中旬

ANA、JALともに、最低投資額は30万円台。普段使う航空会社を特に決めておらず、株主優待目当てで購入する場合はどちらに投資するか迷うかもしれない。

2,ANAとJALの株主優待を徹底比較 両社とも国内線運賃の割引がメイン

ANAとJALの株主優待内容は、どちらも国内線の運賃割引を主体としており、そのほかにいくつかの優待サービスがある。

両社が提供する株主優待内容を、簡単に比較しておこう。

ANAとJALの株主優待比較表(2019年12月17日現在)

株主優待内容 ANAホールディングス 日本航空(JAL)
国内線搭乗優待 株主優待番号
ご案内書
国内線株主優待割引運賃
(ANA FLEX Dの
50%割引)
・株主優待番号1つにつき
割引運賃1件
・ご案内書は保有株数に
応じた枚数を発行
・プレミアムクラスへの
変更も可能
株主割引券 国内線普通席運賃の
50%割引
・割引券1枚で1名分
・保有株数に応じた枚数を発行
・クラスJまたは
ファーストクラスへの
変更も可能
マイル積算率 ・区間基本マイルの75%
・プレミアム株主優待
割引運賃は125%
・区間基本マイルの75%
・クラスJは85%
・ファーストクラスは125%
グループ内
ホテル、
提携ホテル優待
ANA
グループ
優待券一冊
・提携ホテル室料
20%割引×6枚
・ホテル飲食費
5%割引×5枚
・婚礼飲食
10%割引×1枚
・会議、宴会室料15%×3枚
パッケージツアー
割引
対象の海外・国内ツアー商品
5%~7%割引
(1枚で5人まで)
海外・国内ツアー
割引券
・対象の海外ツアー
7%割引×2枚
・対象の国内ツアー
7%割引×2枚
・1枚で株主含む参加者
全員割引
(100~199株保有は
5月のみ発行、200株以上
保有は5月と11月発行)
空港内売店での
買い物割引
空港内売店または
免税店での買物
10%割引×5枚
ゴルフ料金割引 ・「武蔵の杜カントリークラブ」
ゴルフプレー
優待券×4枚
・「早来カントリー倶楽部」
ゴルフプレー
優待券×3枚
※1枚で4名まで
利用可能
通信販売 株主限定通信販売
その他の株主
サービス
「株主様専用サイト」
・機体工場見学
・ANAカレンダー
・株主特別価格による通信販売
「株主特別企画」
・客室サービス訓練見学会
・JAL工場見学「SKY MUSEUM」

※上記比較表は、ANAおよびJALのホームページの株主優待情報から抽出して作成した

ANAとJALの株主優待のメインとなる国内線搭乗割引サービスは、どちらも普通席の大人普通運賃または普通席の小児普通運賃が50%割引になる。

次項以降では、両社の株主優待の特徴と違いを掘り下げていく。

3,ANAの株主優待の2つの特徴 豊富な優待内容、専用サイトの設置

ANAの株主優待の主な特徴は2つ。3月末日と9月末日時点の単元株以上の株主に対して、「ANAグループ優待券」が株主1人につき1冊ずつ配付されることと、ANAのホームページに「株主様専用サイト」が用意されていることだ。

特徴1,「ANAグループ優待券」の優待内容がバラエティに富んでいる

「ANAグループ優待券」で利用できる株主優待サービスは、ANAグループが手掛けるさまざまな事業に紐付いており、バラエティに富んでいる。

・ANAグループの対象ホテル内での各種割引(室料20%割引、レストランまたはバーでの飲食代10%割引、婚礼飲食代10%割引、宴会・会議の室料15%割引)
・対象のANAパッケージツアー料金の5%もしくは7%割引
・空港内売店あるいは免税店での買物代金10%割引
・対象ゴルフコースでの優待料金利用
・株主限定の通信販売

優待券は、保有株数によって1~6枚が配布される。

夏休みや年末年始の休みに国内旅行を計画する際には、割引搭乗券をはじめホテルの宿泊費、飲食代、買物、ゴルフなどあらゆる場面でANAの株主優待を利用できるだろう。

特徴2,「株主様専用サイト」が用意されている

3月末と9月末に100株以上の株式を保有している株主は、固有の株主番号でログインする「株主様専用サイト」を利用できる。

「株主様専用サイト」では、株主優待情報が提供されるだけでなく、人気のあるANA機体工場見学の申し込みができたり、ANAカレンダーのタイプを選べたりする。株主ならではの優越感を味わうことができるだろう。

他にもANA優待旅行商品の申し込みができたり、厳選された通信販売商品を株主特別価格で購入したりすることもきる。単元株株主でも、株主でなければログインできないサイトには特別感を感じるはずだ。

4,JALの株主優待の2つの特徴 何人でも割引になる優待、特別企画展

JALの株主優待は、国内線の搭乗で利用できる「株主割引券」と、パッケージツアー料金が5%もしくは7%割引になる「海外・国内ツアー割引券」の2つだ。

どちらもANAでも用意されている株主優待サービスだが、JALの「海外・国内ツアー割引券」と「株主特別企画」には特徴がある。

特徴1,「海外・国内ツアー割引券」は大人数の旅行でも参加者全員が割引対象

JALの「海外・国内ツアー割引券」は、100~199株保有する株主には年1回、5月中旬に海外ツアー割引券2枚と国内ツアー割引券2枚が配布される。200株以上保有する株主は、5月中旬と11月中旬の年2回、それぞれ海外ツアー割引券2枚と国内ツアー割引券2枚の計8枚を受け取ることができる。

割引券1枚で対象のJALパッケージツアー料金が一律7%割引になる優待サービスだが、最大の特徴は株主と同行する人なら誰でも、何人でも割引対象になることだ。

一般的な割引券だと1枚で利用できる人数には制限があるので、参加者全員が割引対象になるJALの優待サービスは魅力的だ。

特徴2,趣向を凝らした「株主特別企画」

株主向けの特別企画として、2019年9月30日現在で100株以上を保有する株主を対象に、企画Aと企画Bが用意されている。企画Bは定番の「JAL工場見学」だが、2020年の企画Aとして「客室サービス訓練見学会」が2回(2020年は2月6日と2月7日に実施)企画されている。

企画Aの抽選応募資格は、株主とその同伴者が1名(高校生以上)。1回の定員が20名という狭き門だが、なかなか体験できない客室サービス訓練を見学できるのは、話題性もあり興味深いのではないだろうか。

上期、下期、あるいは年度によって、企画Aの内容は変わる可能性がある。JALならではの趣向を凝らした貴重な体験をしたい人は、忘れずにチェックしておきたい。

5,ANAとJALの株主優待の違いは? チェックすべきは搭乗運賃割引券の発行枚数基準

ANAもJALも、国内線普通席の搭乗券が50%割引になる割引券が発行される点は同じ。しかし、所有株数に応じた発行枚数基準には違いがある。

1年間で受け取れる搭乗運賃割引券

保有枚数 ANA JAL
100株 2枚 1枚
200株 4枚 2枚
300株 6枚 3枚(3年保有で5枚)
1,000株 14枚 10枚(3年保有で14枚)

ただし、JALでは3年以上の長期保有株主に対して株主割引券を追加発行している。300株保有する3年以上の株主には2枚、1,000株保有する株主には4枚が追加される。

ANAの東京-札幌間の普通席運賃が3万6,900円、JALは4万1,160円(2019年12月17日現在)。株主優待で50%割引になっても安いとは言えないので、余裕資金で購入できる株数と、両社から発行される割引券の枚数との兼ね合いで、どちらが自分にとってお得かを見極めよう。

6,投資タイプ別!ANAとJAL、株主優待がお得なのはどちら?

ANAとJALの株主優待について説明してきたが、株主優待の柱である国内線普通席搭乗券運賃の割引率は同じなので、どちらがいいか迷うこともあるだろう。

そんなときは、自分ライフスタイルに合った株主優待が用意されている銘柄を選択するといいだろう。

100株だけでも株主優待を満喫したい人は「ANA」がお得?

100株保有の場合を見ると、ANAは「株主優待番号ご案内書」と「ANAグループ優待券」を年2回受け取ることができるのに対して、JALでは「株主割引券」と「海外・国内ツアー割引券」が発行されるのは年1回のみだ。

100株保有でも株主優待のメリットを十分享受できるのはANAだろう。ANAなら、割引運賃を年2回しか利用できなくても、大株主と同じように株主1人につき1冊ずつANAグループ優待券が発行される。これを使って、さまざまなANAのサービスを安く利用できるメリットは大きい。

年に数回は家族や友人と旅行に行きたい人は「JAL」がお得

こんな人は、参加者全員のツアー料金が7%割引になるJALの「海外・国内ツアー割引券」が大いに役立つはずだ。3世代一緒の家族旅行でも、友人との旅行でも、安く旅行ができるのは旅好きな人にはありがたいはずだ。

配当収入も考慮に入れたい人は「JAL」がお得

配当利回り(12月17日終値ベース)を見てみよう。

  配当利回り 1株あたりの配当
(※2020年3月予想)
ANA 2.02% 75円
JAL 3.18% 110円

株主優待ではJALよりANAのほうが手厚い印象を受けるが、長期保有で配当も重視するならJALに投資するのもいいだろう。

7,株主優待を目的としたANAやJALへの投資は意味があるのか?

ANAやJALは、どちらも値がさ株と呼ばれる株価の高い銘柄だ。単元株でも最低投資額は30万円を超えるため、株式投資初心者には敷居が高いかもしれない。

しかし株主優待が充実しているだけでなく、高配当利回りでもある。長期保有を前提にANAまたはJALの株式を購入することは、初心者であっても検討に値するだろう。

お盆や正月、ゴールデンウィークなどの繁忙期は株主優待用の座席数が制限され、予約時期によっては完売することもある。その点に気をつければ、どちらも株主優待のメリットを大いに活かせる銘柄と言えるだろう。

文・近藤真理(フリーライター)/MONEY TIMES

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