(本記事は、関根 俊輔氏の著書『経費で落ちる領収書・レシートがぜんぶわかる本』新星出版社の中から一部を抜粋・編集しています)

経費
(画像=PIXTA)
【経費にならない交通費】
Q.家族で帰省した交通費は経費で落とせる?
A.落とせません。ただ帰省先で業務があれば別です。その場合も本人の交通費だけで家族の分は経費になりません。

家族へのみやげ代は経費にならない

帰省の旅費交通費を経費に計上しようとする人がいます。都会に働きに出ているのだから、帰省してまた戻るのは通勤の往復と同じ、という発想なのかもしれません。

しかし、それは誤解です。帰省は通勤ではありません。

この項では、旅費交通費で間違えやすいケースをいくつか見て見ましょう。

それなら、帰省中に少しでも仕事をすれば経費で落とせるでしょうか。

例えば帰省先で、郷里の友人に何か仕事を依頼するという業務があれば、往復の交通費は経費に計上できます

しかし、それは本人の分だけです。

家族の交通費は、経費で落とせません。

また、仕事を依頼する友人に、何か手みやげを持っていったという場合、その手みやげ代は経費で落とせます。

しかし、郷里の家族へのおみやげ代は経費になりません。

1人社長で、会社の旅費規程にもとづき出張手当を受け取るという場合は、経費で落とせます。

この場合も、支給できるのは、友人に仕事を依頼した日の分だけです。前後の帰省中の日の分は、経費で落とすことはできません。

高級旅館の宿泊代は経費になるか

次に、帰省ではなく、一般的な出張の際の旅費交通費についてです。

例えば、出張先に有名な高級旅館があったので、1泊7万円の宿泊費を払って泊まったという場合、これは経費で落とせます。飛行機のファーストクラスと同じ考え方です。

会社になっている場合は、旅費規程に定めてあれば、さらに経費で落としやすくなります。

ただし、会社の所得と同時に「利益」も減らすことになりますから、常識的な範囲内での支出が求められます

そのほか、旅費交通費関連では、下記のようなケースがあります。

さらに、こんな領収書は経費になる?


Q.空港で加入した海外旅行保険の保険料は経費になる?
➡仕事で使用したなら経費になります。科目は「保険料」です。

Q.接待の飲み会後の「運転代行料」は経費になる?
➡なります。接待をした場合は「接待交際費」として取り扱われます。接待された場合は「交通費」が適切でしょう。

Q.「高速料金」は経費になる?
➡仕事で使用したなら経費になります。「旅費交通費」です。車両などにいくらかかったかを毎年把握したい場合は、別途「車両費」などの項目で合算して処理するのも合理的です。

Q.出張先のホテルでの「朝食代」「マッサージ代」「有料放送代」は経費になる?
➡朝食が宿泊代と込みの場合は経費となりますが、それ以外は認められません。
エグゼクティブ,タクシー,アプリ
(画像=(写真=Spectral-Design/Shutterstock.com))
【旅費規程・慶弔規程】
Q.1人社長でも旅費規程をつくるべき理由は?
A.1人社長で出張がある仕事の場合、ぜひつくっておきたいのが「旅費規程」。これがあるといろいろな経費が落とせます。

出張手当が旅費交通費になる

出張旅費を2つに分けて考えると、まず実費精算をするような支出はほとんどの場合、問題なく経費で落とせます。

例えば、交通費や宿泊代などです。出張中でも、出張先の相手への手みやげ代は接待交際費、相手と打ち合わせをした際の飲食代は会議費となります。

問題になるのは、例えば1人社長で「出張手当」などの支給を受けるケースです。

出張先では、食事や日用品の買い物でも通常よりお金がかかるものですから、数千円程度の出張手当は1人社長でも受け取りたいところです。

このような出張手当は、会社の「旅費規程」というものをつくり、それにもとづいて支出する必要があります

そうすれば、出張手当を旅費交通費として、会社の経費で落とすことが可能になります。

旅費規程で定めておかないと、出張手当は賞与の扱いになり、経費でも落とせませんし、1人社長の給与所得が増えてしまいます。

逆にいえば、1人社長でも会社の旅費規程をつくっておけば出張手当などは社長個人に対しても税金がかからず、つまり所得が増えずにその金額を受け取ることができます。

ただ、個人事業主は従業員以外で出張手当を受け取ることができません

そこで、出張先の相手とパワーランチやパワーディナー(食事をしながらのミーティング)を積極的に行えば、飲食代を会議費で落とせます。

慶弔規程もつくっておこう

そのほか、出張で高級旅館に宿泊したとか、飛行機のファーストクラスを利用したといった場合にも、旅費規程に定めがあると、より経費で落としやすくなります。

1人社長でも出張がある場合は、ぜひ旅費規程をつくっておきましょう。

ちなみに、旅費規程と一緒に「慶弔規程」をつくっておくと、1人社長や関係者に慶弔があったときに、香典や祝い金を支給することができます

慶弔規程がある場合は、香典や祝い金の勘定科目は「福利厚生費」や「接待交際費」になります。

経費で落ちる領収書・レシートがぜんぶわかる本
(画像=経費で落ちる領収書・レシートがぜんぶわかる本)
経費で落ちる領収書・レシートがぜんぶわかる本
関根 俊輔
税理士。中央大学法学部法律学科卒。優秀なビジネスマンや税理士を多数輩出する尾立村形会計事務所(東京都)で会計人としての修行を重ねる。その後、関根圭一社会保険労務士・行政書士事務所(茨城県)にて、主に労働基準監督署や社会保険事務所の調査立ち会いや労使紛争解決等の人事業務、加えて、法人設立・建設業許可、遺産分割協議書や内容証明郵便及び会社議事録作成等の業務に携わる。平成19年には、共同で税理士法人ゼニックス・コンサルティングを設立。現在は、学生時代から培った「リーガルマインド」を原点に、企業に内在する税務・人事・社内コンプライアンス等、経営全般の諸問題を横断的に解決する専門家として活躍している

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