(本記事は、坂下たかひろ氏の著書『おもしろいほど株で勝てる「最強サヤ取り」』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)
テクニカル分析を行うときの注意点
ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析については第3章で述べたとおりです。
なんだかテクニカル分析を使えば、勝てる気がしてきませんか…?
なーんだ、株取引って簡単なんじゃないか!
そう思えてきませんか?僕はそう感じました。そしてどんどんインジケータを探すたびに始まるのです。俗にこれを「聖杯探し」と言います。実は良くない傾向です。
テクニカル分析を実際に行う場合、実際に使用するのは主に「インジケータ」と呼ばれるサインです。それをMeta Trader4(以降、MT4と表記します)というパソコン上で動くソフトにインストールして使います。
あれも入れたい…これも入れたい…そうやってどんどんとインジケーターを追加していくと…画面は下図のようになります。
もう何が何だか分からない画面になってきましたね。これにはトレンド系しか入れていませんが、この上オシレータ系を入れると画面はもっと複雑でややこしい画面になっていきます。もはやチャートもまともに見えません。
まず、使うインジケータを絞りましょう。これは経験しかないので、色々とインジケータを入れてみて試してみてください。自分にあったインジケータに絞られてくると思います。
僕のおすすめは一目均衡表とMA(移動平均線)です。色々と試しましたが、最終的にここに落ち着きました。
テクニカル分析の弱点
買うべきタイミングや売るべきタイミングが一目瞭然になるのがインジケータを使ったテクニカル分析の特徴です。
それなのになぜ負けてしまう状況が発生するのでしょう?
サインでタイミングが読めるわけですから、そのサイン通りに売り買いすればいいわけです。損をすることはなさそうですよね? その理 由はこれです。これがテクニカル分析の弱点です。
・トレンド系はサインが遅い ・オシレーター系はトレンドに弱い ・要はテクニカルは使い方が大事
●トレンド系はサインが遅い
トレンド系の移動平均線はゴールデンクロスで上昇サイン、デッドクロスで下降サインとわかりやすく、サインが出たらその方向に進めばまず間違いはありません。
ところがここで問題が発生します。
わかりますか?この移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロス、ゴールデンクロスで買い、デッドクロスで売りですが、どのタイミングで買えばいいかわかるでしょうか?
ゴールデンクロス、デッドクロスが発生する前にすでにタイミングは訪れているんです。
サインが出てから売り買いに入っても、時既に遅しとなる可能性が往々にしてあります。実は最もおいしいのは買いサイン、売りサインが出る直前だからです。
サインが出たときには既に遅い。
これだからトレンド系のインジケータは難しいんです。
●オシレーター系はトレンドに弱い
オシレーターとは「振り子」という意味です。「売られすぎ買われ過ぎ」をあらわすオシレーター系インジケーターはトレンド系ではなくレンジ相場(ボックス相場)に向いているインジケータです。相場の短期的な「買われすぎ」と「売られすぎ」を判断するのに使います。
レンジ相場とは一定の値段の間で上下のもみ合いを続ける相場のことを言います。チャートを眺めてみる、相場とはトレンドとレンジ相場の連続で構成されていることがわかると思います。
レンジ相場ではオシレーター系が活きてきます。多くの人が使っているインジケータはMACD、RSI、ストキャスティクスなどが有名です。
強い売りや強い買いなど、一方向への強い値動きがある場合にシグナルは0%や100%に近づきますので、その偏りをエントリーや利確のタイミングと見ます。
例を見てみましょう。以下ではストキャスティクスとRSIを表示してみました。
ストキャスティクスは20、80%のラインを超える場合は偏りが強いと判断します。RSIは30、70%で線引して判断しています。
それぞれの○がエントリータイミングとして見れると思います。
(1)はチャートは急落を示し、RSIはしっかりと反応しています。ですがストキャスは反応していません。結果的にはエントリータイミングでした。
(2)ではチャートは下落していますが、下落しきっているわけではないので判断に困るところです。ストキャスは悪くない位置にあります。RSIはサインを出していますね。買いで入るにはいいタイミングと判断できそうです。
(3)は絶対に売りで入りたくなるサインです。チャートは高値を更新しようと試していますが、ストキャス・RSI共に買われ過ぎを示しています。そのままトレンドは反転し下落していきました。きれいなサインです。
(4)はストキャス・RSI共にサインを出していますが、チャートがどっちつかずです。買いで入っていたとしても、すぐに利確するか損切りすることになりました。
このように、オシレーター系は「だまし」が発生しやすく、使い方が結構難しいのです。個人的には苦手なインジケータです。
●テクニカル分析は使い方が大事
・トレンド系はサインが遅い ・オシレーター系はトレンドに弱い
トレンド系はトレンド相場に使うと上手く結果を出せますが、レンジ相場に弱いです。レンジ相場にはオシレーター系がピッタリですが、トレンドが出始めると弱いです。
長期的なトレンドはトレンド系で方向性を判断し、エントリータイミングは短期のオシレーター系で判断してエントリーする。そういった使い方が合っています。
そこでどちらか一つの系統のインジケータを集中的に使うのではなく、トレンド系とオシレーター系を組み合わせて使うことになります。
中期的に向いているトレンド系インジケーターで、チャートの方向を見定め、短期的で反応の早いオシレーター系インジケーターの転換をサインとしてエントリーすることにより、より正確なトレードをすることができます。
例えば移動平均線MAとRSIを組み合わせて使ったり、MAとMACD・ストキャスティクスを組み合わせて使う、などです。これには良し悪しがあるのですが、どんどんと多くを組み合わせて使ってみたくなるのです。
どのインジケータもそれぞれ独自の理論に基づいたしっかりしたものなのですが、たくさん組み合わせていくと今度は相場の見方がわからなくなるという現象に陥ります。一体いつエントリーすればいいのかわからなくなるのです。
そこで増やしていっていたインジケータを絞るという作業に入っていくことになります。
最終的にはすべてのインジケータを外して、ローソク足しか表示させないというスタイルに行き着くと凄腕トレーダーの方々はおっしゃっています(笑)
ちなみに僕の好きな組み合わせはMAと一目均衡表、そしてストキャスティクスの組み合わせです。ですがストキャスティクスはあまり判断には使わずに、MAと一目均衡表を参考にすることが多いですね。
インジケータは種類も多く、相場にあった適切なものを使用すると面白いほどハマります。それは逆に適切なものを選べなかったら、全く勝てないということです。勝率100%のインジケーターというものは存在しません。
テクニカルに頼りすぎると、相場観を見失い、エントリータイミングを逃し、無駄な損切りばかりを繰り返すことになり、大切な資金を枯渇させてしまうことに繋がります。使うタイミングや工夫が必要ということを肝に銘じておいてください。