(本記事は、坂下たかひろ氏の著書『おもしろいほど株で勝てる「最強サヤ取り」』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)
現物で負ける人
長く株投資をしているのに負けている、損ばかり、という人を聞いたことはあるでしょう。なぜ負けてしまうのでしょうか。
現物取引は、スタートは「買い」しかできず、買ってしまえばあとは値上がりを待つことしかできません。
しかし、信用は「売り」からスタートすることができます。
そのメリットとデメリットをしっかりと把握していないと、株式取引で生き残ることはできませんので少し見ていきましょう。
現物は購入してしまったら、あとは高値で売ることでしか利益を確保できませんので、とにかく高値になるのを待つことになります。
●手数料負けする
たとえばSBI証券の手数料プランの場合、2つのプランが存在します。スタンダードプランとアクティブプランです。
スタンダードプランは1注文の約定代金に対して、手数料がかかるプランです。10万円台の取引を1日に数回行った場合、115円×取引回数の金額分の手数料がかかってきます。2往復取引を行うとそれだけで
115円×4=460円
ひと月20日取引を行った場合に9、000円を超える手数料になります。10万円台の株式との比率で考えると、最悪10%近い手数料になってきます。これを超える利ざやを確保しなければいけません。なかなか難しいですね。
●情報収集で負ける
株を買うことはその企業に投資することですから、投資先の企業をよく知らなくてはいけません。これからどんな戦略を立てていくのか、どんなサービスを提供していくのか、どれだけ売上を上げて資産を作っているのか…。
時価総額、配当金、浮動株数、PER、PBR、財務諸表等々、基本的な数字に関する情報だけでも膨大にあります。
まだまだあります。
企業のプレスリリース、決算説明資料、既存事業の将来性、新規事業の将来性及び投資予定金額、取引先の景気、円安・円高による影響、原油価格の影響、大株主の売買傾向など、調べなければいけない情報は多岐に渡ります。
業績下方修正の発表を、金曜日午後3時以降に発表した、なんてことも珍しくありません。これで個人の買い方は、なすすべなく土日を暗く過ごすことになります。
こんな中で、個人投資家が最善の判断を下すということはまず不可能です。
情報収集力で、事前回避やヘッジが効かせられるファンド会社など、団体戦で行っているところには太刀打ちができません。
●対戦相手(プロ)に負ける
株は売り手と買い手が存在し、両者が揃うことで取引が完了します。
さて、その対戦相手はどういった相手になるのでしょうか?
巨額の資産を持っている個人投資家や法人が相手だったり、有名な証券会社の「J・P・モルガン」や「ゴールドマン・サックス」であるかもしれません。
その相手は桁違いの資金をもって買い板を立ててきたり、空売りを仕掛けてきたりします。
株価100円を「割安」であるとのアナウンスで買いとした個人投資家に対し、97円辺りに、売りの分厚い見せ板を作られ、負け確定ということもあります。
力の差は歴然としていますので、長く勝負を続けていれば期待値の関係上、マイナスに転落していくことでしょう。
●個人投資家の強みを活かしていない
そういった巨人に対して、まったく勝ち目がないのかというとそうでもなく、個人投資家には個人投資家の強みがあります。
それは「締切がない」ということです。
法人で運用を行っているところは法人の決算報告がありますので、締日に合わせて決済してしまわなくてはいけません。
含み損が出ていても、期間や規定によって機械的に決済する特徴があります。
しかし、個人であればその必要はありません。
個人は、例えば定年退職後など、長期的にゴールを設定することができます。
利益を出すのに何年かけても、何十年かけてもいいのです。
含み損を抱えたといって、焦って決済してしまうと手数料や損だけを抱え込んでいくことになります。
今後成長が見込める会社の株式を取得したのであれば、長期的に保持するという戦略を取れるのも個人のメリットなのです。
法人にはできない個人のメリットは活かしていくべきでしょう。
以上が現物取引で負ける人の理由です。