「年収1,600万円の人が1億円のタワーマンションを頭金ナシで購入する」。これは可能なのでしょうか、攻めすぎなのでしょうか。今回は、購入可能である場合のリスクなども含め、本事例について考えていきましょう。
まずは「返済負担率」を気にしよう
住宅ローンを検討するとき、まず気にするべきは「返済負担率」です。返済負担率は年収に占めるローン返済額の割合のことで、計算式は以下のようになります。
年間返済額 ÷ 年収 × 100 = 返済負担率
例えば年収1,000万円の人が年間で200万円を返済する必要がある場合は下記の数式①のように計算され、返済負担率は20%ということなります。また、年収500万円の人が年間200万円を返済する場合は数式②のように計算され、返済負担率は40%となります。
①200万円 ÷ 1000万円 × 100 = 20%
②200万円 ÷ 500万円 × 100 = 40%
この返済負担率の目安がいくらかという点については、年収や貯蓄、家計の状況などによってさまざまな見方がありますが、「35%以内」を妥当なラインと説明している金融機関が多いようです。よりリスクを減らすのであればよりこの返済負担率の割合を低くする方が安全です。
1億円のタワマンを「金利0.5%」「25年返済」で購入する場合の返済負担率は?
では年収1,600万円の人が1億円のタワーマンションを購入した場合、返済負担率はどれくらいになるでしょうか。一般的な傾向や相場から貸出期間や金利を仮定し、シミュレーションしてみましょう。
独立行政法人「住宅金融支援機構」が発表している2019年度「民間住宅ローンの貸出動向調査」によれば、住宅ローンの平均貸出期間は「26.7年」となっています。計算しやすいよう、ここでは「25年」での完済と設定します。
また住宅ローンの金利に関しては、最近は0.4〜0.5%台で推移していますので、ここでは「0.5%」とし、金利が変動しない「固定金利型」で考えます。つまり「頭金ナシで1億円の住宅ローンを固定金利0.5%で25年の返済計画で組んだ場合、返済負担率はどうなるのか」を計算します。
結果、この場合の支払い総額は1億640万833円となります。ボーナス払いをしない前提で計算すると、月々の返済額は35万4,669円、年間の返済額は425万6,028円となります。その場合、返済負担率は次のようになります。
425万6,028円(年間返済額)÷ 1,600万円(年収)× 100 = 26.6%(返済負担率)
結果として返済負担率は「26.6%」となり、前述の「35%以内」という妥当な返済負担率の基準を満たしています。
金利上昇や失業などはリスクとなる
このように考えますと、年収1,600万円の人が1億円のタワーマンションを頭金ナシで購入することは決して非現実的なものではありません。ただ、注意したい2つのリスクがあります。
まず、金利上昇リスクです。変動金利型のローンの場合、金利が上昇したときは支払い額が結果的に増えてしまうということがリスクになります。このほか、失業リスクもあります。年収1,600万円を稼げる職種やポジションは限られているため、今の仕事を失った場合、月々35万4,669円という返済をしていくことが難しくなるおそれがあります。
タワーマンションの購入は、高年収を得ている人にとって手の届きそうな夢の一つ です。ただこうしたリスクがあることも念頭に置く必要があります。仮に、購入前に「リスクなんてなんとかできる」と思ったとしても、購入後、いざ金利が上昇したり仕事を失ったりすれば、タワーマンション購入を後悔するかもしれないのです。
もし今回の事例に当てはまる読者の方が高額のタワーマンションの購入を考えているならば、見切り発車するのではなく、一度冷静に返済負担率やリスクについて検討することをお勧めします。(提供:JPRIME)
<監修者>
鈴木 まゆ子/税理士・税務ライター
中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU Online」「マネーの達人」「朝日新聞『相続会議』」などWEBで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」。
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