東京株式市場では、日経平均株価が24,000円をはさんで一進一退の動きになっています。米国とイランの紛争が鎮静化し、米国と中国の通商協議も第1段階の合意・署名に達するなど、市場参加者が警戒していたリスク要因の多くが後退してきました。半面、中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスが流行の兆しを見せるなど、新たなリスク要因も発生しています。足元は強弱材料が対立している状態と言えそうです。
そうした中、1/23(木)には精密モーター世界首位の日本電産(6594)が2019年10~12月期決算発表を実施しました。事実上、同社の決算発表は3月決算企業の決算発表シーズンが本格化する「号砲」とみられます。今後2/14(金)まで、上場企業の2019年10~12月期決算発表が毎営業日行なわれ、目が離せない日々が続くことになります。
今回の「日本株投資戦略」は、決算発表シーズン本格化を控え、業績予想の上方修正が期待できそうな銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。企業業績全般には減益トレンドになるところも多いだけに、逆に業績好調な銘柄には投資家の人気が集中する可能性もありそうです。
業績予想上方修正に期待したい3月決算銘柄
上場企業の2019年10~12月決算は5四半期連続の最終減益となりそうです。米中通商問題を背景とする中国経済の低迷や消費増税、昨秋の台風等が重荷となり、日本企業の業績回復は遅れ気味となっているようです。そうした中、業績好調銘柄は逆に投資家の人気が集中する可能性もあります。「日本株投資戦略」では、業績予想上方修正を期待できる銘柄を、以下の条件でスクリーニングを行い、抽出してみました。
(1)東証1部上場銘柄(広義の金融を除く)であること。
(2)時価総額1千億円以上の銘柄であること。
(3)3月決算企業で、決算期変更を行っていない銘柄であること。
(4)業績予想を行っているアナリストが2名以上の銘柄であること。
(5)市場予想EPS(市場コンセンサス)が過去4週間で下がっていない銘柄であること。
(6)第2四半期累計(2019年4~9月期)営業増益率(前年同期比)が、通期(2020年3月期)の会社予想営業増益率(前年比)を上回っていること。
(7)来期(2021年3月期)の市場予想営業利益が今期市場予想営業利益に対し、10%以上の増益見通しになっていること。
上記のすべての条件を満たす銘柄を表にしたのが表1となります。(6)では、第2四半期累計営業増益率から通期会社予想営業増益率を差し引いた数字を分析対象としていますが、表1では、その数字が大きい順に掲載しています。「日本株投資戦略」では、これらの銘柄については、業績予想の上方修正も期待でき、その分、株価も追い風を受けやすいと予想しています。
表1 業績予想上方修正も期待できる3月決算銘柄
コード / 銘柄 / 株価(1/23) / 決算発表予定日 / 営業増益率(前年比)2019/4~9 / 営業増益率(前年比)通期会社予想
<7733> / オリンパス / 1,781.5 / 2/6(木) / 1606.4% / 218.2%
<6701> / 日本電気 / 5,110 / 1/29(水) / 238.9% / 88.1%
<2222> / 寿スピリッツ / 8,400 / 2/3(月) / 63.6% / 16.6%
<6857> / アドバンテスト / 6,460 / 1/29(水) / -2.6% / -30.4%
<4543> / テルモ / 3,955 / 2/6(木) / 24.3% / 2.2%
<6645> / オムロン / 6,530 / 1/29(水) / -19.2% / -33.1%
<1861> / 熊谷組 / 3,305 / 2/10(月) / 17.2% / 5.8%
<6952> / カシオ計算機 / 2,298 / 1/30(木) / 12.7% / 4.1%
<4684> / オービック / 15,650 / 1/28(火) / 16.4% / 8.1%
<6755> / 富士通ゼネラル / 2,564 / 1/28(火) / 34.5% / 26.8%
<6954 / ファナック / 20,480 / 1/29(水) / -50.2% / -57.7%
<7205> / 日野自動車 / 1,125 / 1/29(水) / -14.1% / -21.6%
<9613> / エヌ・ティ・ティ・データ / 1,562 / 2/4(火) / 6.1% / 0.2%
<6963> / ローム / 9,080 / 2/4(火) / -49.8% / -51.7%
<6981> / 村田製作所 / 6,647 / 2/3(月) / -12.9% / -13.8%
※Bloombergデータ、会社公表データを用いてSBI証券が作成。決算予定日は予告なく変更される場合があります。
【ご参考】決算発表シーズンに気を付けるべきことは?
決算発表シーズンにはどのようなことを気を付けるべきでしょうか。年4回おおよそ1/20~2/15、4/20~5/15、7/20~8/15、10/20~12/15頃は、3月決算や12月決算の企業が決算発表を行う決算発表シーズンと言えます。過去10年、日経平均株価はおおよそ2倍以上になりましたが、上記の決算発表シーズンの日経平均株価は平均的にほぼ横ばいという成績でした。過去のデータを見る限り、3月決算や12月決算の企業等が決算発表を行う季節は、全体的に株価の勢いにブレーキがかかりやすいので、株式の持ち高は減らすべき局面といえるかもしれません。
投資対象の業績に大きな注意を払うことなく、特にその投資対象の業績の方向感に確証がないような場合、決算発表日をまたいで持ち高を維持するというスタンスは基本的におすすめできないと思います。かつては株式売買手数料が今よりも高く、小刻みな売買でコスト高に陥る危険性も今に比べれば大きいものでした。しかし、投資家の株式売買コストはかなり下がりました。「中長期投資が最善」との考え方は後退し、保有銘柄の決算発表日に注意し、機敏に株式の持ち高を調整する姿勢が個人投資家にも求められるようになったのかもしれません。
少なくとも、「決算発表日を認識せず、ある銘柄を保有していたところ、決算発表で業績予想が下方修正となり、株価が大きく下がってしまった」という事態は避けたいものです。決算発表予定日はSBI証券のWEBサイトで「業績」のところをみれば確認できます。中長期に追いかけていきたい銘柄がある場合も、決算発表の時期は無理して保有しないというのも有効な考え方になると思います。
表1に掲げた3月決算企業は、本業のもうけを示す営業利益予想について、会社予想数値の下方修正が行われる可能性が相対的に低い銘柄であると考えられます。中間期(2019年4~9月)までに多めの利益を積み上げており、そのペースが大きく減速しない限り、会社予想営業利益の上方修正までも期待できると思われます。さらに、決算数字が市場コンセンサスを上回ってくれば、株価が上昇する可能性が膨らんでくると期待されます。ただ、業績予想が上方修正された銘柄は必ず上昇する訳ではありません。決算発表や業績予想修正の時点までに、どの程度それを株価に織り込んだのか等によって左右されます。株価が下がり、事前の期待値が下がっているときのほうがポジティプ・サプライズにつながりやすいと考えられます。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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