(本記事は、辻村明志の著書『ゴルフのトップコーチが教えるスウィングの真髄』日本文芸社の中から一部を抜粋・編集しています)

左腕を消防ホースのように使い、ボール2転がり分をコントロールする

ゴルフ
(画像=Daxiao Productions/Shutterstock.com)

さて、テークバックで静かな動き出しを身につけるために、私たちが行っている練習法を紹介します。

繰り返しますがスウィングは、臍下丹田に鎮められた氣を軸とした回転運動です。テークバックはスウィングの始動ですから、最初から氣の抜けた状態になってしまっては回転はできません。では、どこが氣の枠からはみ出してしまいやすいかといえば、手であり、腕であり、それとつながったクラブなのです。

いわゆる手上げのテークバックですが、これを防ぐために私たちは水の入ったペットボトルをクラブヘッドの後に置き、それを真っ直ぐに動かすようにしています。ボールより重いペットボトルは、手の力ではなかなか真っ直ぐには動きません。ヘソから動かせというのではなく、人によって違うであろう、どこから動かすかを感じればいいのです。慣れてきたらペットボトルの代わりにボールを置き、さらにその約30センチほど後方にもう1個ボールを置きます。2つのボールがぶつかるようテークバックしてみましょう。

こうした練習をクロスハンドでやるのも効果的です。クロスハンドにすると左腕が伸びます。このとき、水の流れ消防ホースのように氣の流れを感じることが、スウィングに求められる左腕とクラブの一体感です。

ゴルフのトップコーチが教えるスウィングの真髄
(画像=ゴルフのトップコーチが教えるスウィングの真髄)

トップは傘をさすように トップが小さくフォローが大きい弓矢

傘
(画像=ketkata leejungphemphoon/Shutterstock.com)

トップの右手の形は出前持ちのように。誰もが一度は聞いたことのある、レッスンの定番です。ただ、これについて荒川先生がおっしゃったのは、「半分当たっているが半分は間違っている」というものでした。

当たっているのは右ひじの位置とトップの大きさ。間違っているのは右手の向きで、「手のひらが空を向いていれば寿司は落ちないが、氣はボールには届かない」が、その理由でした。「手のひらはそのままなにもしないでボールが打てる向き」が正解で、「トップは右手で傘をさすように。左手はそこに添えるだけで十分」というのが荒川先生の教えでした。

アマチュアの方に圧倒的に多いのが、大きく高すぎるトップです。飛ばしたいという欲望がそうさせるのでしょう。飛ばそうと思って広くなりがちなスタンス幅と同じで、とにかくトップを大きく高くすれば飛ぶと思っている人が少なくないようです。これはドライバーに限ったことではありません。

たしかに同じ重量のものを10センチでも20センチでも高いところから落とせば、地面に落ちたときの衝撃が大きくなります。しかし、ここでも繰り返しますがスウィングは氣を軸とした円運動です。すでに手や腕、クラブが氣から外れたところにあっては、歪んだ円しか描けません。つまりエネルギー効率の悪い、どこかでムダな体の動きが求められるスウィングになるしかないのです。

それでも傘をさすような小さなトップで飛ぶのか、という疑問は残るでしょう。しかし、トップの大きさとフォローの大きさは、ザックリいえば反比例の関係にあります。これは弓矢を思い浮かべれば、容易に理解できることです。

矢と弦を引く右手はトップ、弓を持った左手がフォロー。さて、どちらが伸びて大きく、どちらが曲がって小さいでしょうか。これが反対であれば、矢は勢いよく放たれるはずもありません。

体の真正面でクラブを保つ時間はトップでつくられる

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(画像=(写真=Mikael Damkier/Shutterstock.com))

トップはバックスウィングの終点であると同時に、ダウンスウィングの始まりです。バックスウィングよりもスピードの速いダウンスウィングで、一度、円運動の軸である氣から外れた手や腕、ましてクラブを正常に戻すのは容易なことではありません。

そのような観点からトップの意味を考えてみます。

荒川先生の教えを通じて、現時点で私なりの考えをまとめるとこうなります。スウィングで重要なのは、どれだけ長い時間、クラブを体の真正面に置いておけるかどうかです。特にダウンスウィングからインパクトでは、体の真正面にあり続けるクラブが、体の真正面でボールをつかまえることが重要になります。このクラブが真正面にある時間をより長くすることが、トップの役割、意味だと思うのです。そのためにはトップまで絶対にクラブを、体の真正面から外さないことが重要だと私は考えます。

そのために両脇にタオル、あるいは両腕にゴムボールをはさんだり、5キロ程度のメディシンボールを後方に投げさせる練習はとても効果的です。捻転差は大きくても、手の動きは小さくて構いません。腕や手はなによりも体の真正面で一体感が重要です。

ゴルフのトップコーチが教えるスウィングの真髄
辻村明志(つじむら・はるゆき)
1975年福岡県生まれ。元ビルコート所属ツアープロコーチ。女子プロ界では、「辻にぃ」といわれている。美人プロとして名をはせた、辻村明須香さんの実兄。2019年は上田桃子、小祝さくら、永井花奈、松森彩夏プロをはじめ、18年の日本女子アマ、日本ジュニア二冠の吉田優利選手のコーチをしている。現役時代の王貞治選手の一本足打法を作り上げた故・荒川博氏に師事し、ゴルフの指導に取り入れたことは有名(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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