(本記事は、辻村明志の著書『ゴルフのトップコーチが教えるスウィングの真髄』日本文芸社の中から一部を抜粋・編集しています)

スウィングの基本 臍下丹田に集めた氣こそ軸の中心である

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(画像=Allen.G/Shutterstock.com)

ゴルフレッスンで頻繁に登場するもののひとつに、軸があります。ところがわかったようでいて、なかなかわかりにくいのもこの軸ではないでしょうか。

もちろんいろいろな考え方があって構いません。しかし、軸は1本なのか2本なのか、1本であれば左サイドにある細い軸なのか、体全体の太い軸なのか、さらに動く、動かない、傾く、傾かない......といった議論は、多くのゴルファーを混乱させているだけのような気がします。実は私自身も、かつてはゴルファーを混乱させていた一人でした。

氣は、体の中心である臍下丹田に鎮められるべきものと述べました。臍下丹田に集められた氣は、そこから腕やシャフト、ヘッドを通じボールへと伝わり、さらに消防ホースから放出される水のように、飛んで行くボールにまで伝わります。しかし、集めた氣は出すだけではなく、ときに止めては破壊力を増し、同時に臍下丹田に新たな氣が鎮められていることもすでに述べました。

こんな風に書くと、とても複雑なことのように聞こえますが、荒川先生はこれを簡潔に、「ヘソとボールを氣で結べ」と教えてくれました。

目に見えないという点においては軸も氣と同じです。しかし、臍下丹田にある氣と違って、どこにあるのかわかりにくいのが軸ではないでしょうか。スウィングは回転運動ですから、軸が重要であることは私も否定しません。しかし、その軸がどこにあるのか意識できない人がほとんどです。それが多くの人が悩み、またスウィングを必要以上に難しくしている理由でしょう。

一方の氣は、臍下丹田を意識すれば感じられるものです。であれば軸はどこかという問題はひとまずおいて、軸の中心は臍下丹田にあり、そこに集められた氣を中心に回転する、と考えたらどうでしょうか。そんな風にシンプルに考えると、スウィングはとても簡単になります。

スウィングにおけるパワーの正体① 脱力はアクセル、リキみはブレーキ

気力,リラックス
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スウィングにはある程度のパワーが必要です。ところがパワーと聞くと多くの人は安易に力、それも筋力のことだと思ってしまうようです。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。たとえばドライバーショットで、筋肉という筋肉に力を入れ、文字どおり力任せに振り回して飛ばそうとする人は多いものです。ところが、その結果はどうでしょうか。力いっぱい振るよりも、力を抜いてリラックスして軽く振った方が飛んだという経験は、多くの人にあるに違いありません。

ゴルフのスウィングにおいてリキみはブレーキです。これに対して脱力がアクセルです。力が抜けて、氣が入っているのが最高のスウィングです。そのことは常に頭に入れておきましょう。

ゴルフのトップコーチが教えるスウィングの真髄
(画像=ゴルフのトップコーチが教えるスウィングの真髄)

スウィングにおけるパワーの正体② パワーの源泉は上体の捻れと下半身の粘り

ゴルフ,スウィング
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野球のバッティングに、ドアスウィングと呼ばれるものがあります。バットと体が一緒に回ってしまうスウィングで、ヘッドスピードが出ない間違ったスウィングの代表格です。高校球児がプロ入りしたとき、もっとも時間がかかるのがこのドアスウィングの矯正だといいます。高校野球では、金属バットの使用が認められますが、プロになって使う木のバットでボールを飛ばすためにはヘッドスピードを高め、ヘッドを走らせなければなりません。

これはゴルフスウィングにおいても同じです。チタンドライバーの登場で、どんなゴルファーでもある程度は飛ばせるようになりましたが、それ以上に飛ばそうと思えばドアスウィングを克服しなければなりません。つまりクラブと体が一緒に回らないことが大事なのです。

その観点からスウィングに求められるパワーとは上半身の捻りと、それを支える下半身の粘り、ということがいえます。具体的にトップで捻転差が大きいほど、蓄えられるエネルギーは大きくなります。スウィングのパワーとは、実際にボールを打つダウンスウィングで、蓄えたエネルギーを一気に解放することです。そのためにはバックスウィングでもダウンスウィングでも、下半身と上半身が同じ方向に同じスピードで動いてはなりません。そしてドアスウィングは、例外なく下半身の軽さから始まることも覚えておきましょう。

スウィングは一連の流れですが、荒川先生にはバックスウィングとダウンスウィングの練習を別々に分けてさせていただきました。バックスウィングでは上半身の捻れをより大きく、またダウンスウィングではいわゆる捻り戻しを強くするためです。上半身の捻れと、それを支える下半身の粘りを体で覚えるため、テークバックはオープン、ダウンはクローズドスタンスで練習しました。その方が捻れも、捻り戻しも強くなるからです。と、同時に下腹が意識され、臍下丹田により氣が集まることもよく理解できます。

ゴルフのトップコーチが教えるスウィングの真髄
辻村明志(つじむら・はるゆき)
1975年福岡県生まれ。元ビルコート所属ツアープロコーチ。女子プロ界では、「辻にぃ」といわれている。美人プロとして名をはせた、辻村明須香さんの実兄。2019年は上田桃子、小祝さくら、永井花奈、松森彩夏プロをはじめ、18年の日本女子アマ、日本ジュニア二冠の吉田優利選手のコーチをしている。現役時代の王貞治選手の一本足打法を作り上げた故・荒川博氏に師事し、ゴルフの指導に取り入れたことは有名(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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