株式市場は一進一退の展開となっています。2020年に入り、イランと米国の緊張が高まったことに加え、中国を中心に新型コロナウイルスを病原体とする新型肺炎の感染が拡大し、それらを警戒して、株価が大きく下げる場面もみられました。一方、緩和的金融政策を背景に、好需給が指摘される米国株式市場が高値更新の動きとなり、それを追い風として日経平均株価も再び昨年来高値に接近する場面がありました。足元でも、こうした強弱材料が対立する状況が続いています。
そうした中、1月下旬以降本格化していた上場企業による2019年10~12月期決算発表が2/14(金)をもち、実質的に終了しました。2/13(木)時点のデータでは、東証1部企業全体の2020年3月期予想営業利益は7%程度の減益になることが予想されます。もっとも、2019年4~12月期の利益が市場予想を下回るケースが多く、最終的には業績予想未達や下方修正の銘柄が増え、通期の減益率はさらに増える可能性もありそうです。
日本株投資戦略では、2019年4~12月期に本業のもうけを示す営業利益が前年同期比で大幅増益となり、市場の期待値を上回り、最終的には上方修正も期待できるような10銘柄をピックアップし、ご紹介することとしました。企業業績は全般的に減速・悪化が目立っており、その中での好調は良い意味で目立つため、株価上昇につながりやすいと考えられます。これらは仮に波乱相場が来ても、株価の押し目を狙っても良い銘柄であると考えられます。
波乱相場で押し目を狙いたい!?好決算10銘柄
冒頭でご説明した通り、今回の「日本株投資戦略」では、2019年4~12月期に本業のもうけを示す営業利益が前年同期比で大幅増益となり、市場の期待値を上回り、最終的には上方修正も期待できるような10銘柄をピックアップし、ご紹介することとしました。スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)東証1部上場銘柄であること。
(2)時価総額2,000億円以上で、広義の金融を除く業種に属する銘柄であること。
(3)業績予想を公表しているアナリストが3名以上付いていること。
(4)3月決算銘柄で、2/12(水)までに四半期決算を発表した銘柄であること。
(5)2019年4~12月期の営業利益が以下のすべての条件を満たしていること。
・前年同期比10%以上の増益となった銘柄であること。
・事前の市場コンセンサスを上回った銘柄であること。
・2020年3月期(通期)会社予想営業利益に対する進捗率が75%以上に達した銘柄であること。
(6)市場コンセンサスでは、2021年3月期営業利益が増益予想となっていること。
(7)新型コロナウイルスの感染拡大を考慮し、インバウンド需要への依存度が高くない銘柄であると考えられること。
上記の全条件を満たした銘柄を、2019年4~12月期の営業増益率(前年同期比)が高い順に掲載したものが表1となります。日本株投資戦略では、これらの銘柄については、波乱相場でも押し目を狙いたい好決算銘柄であると評価しています。
表1 波乱相場で押し目を狙いたい!?好決算10銘柄
コード / 銘柄 / 株価(2/14) / 営業増益率(前年比)19年4~12月期 / 営業増益率(前年比)20年3月期予想
<7733> / オリンパス / 2,036.5 / +281.3% / +225.3%
<9684> / スクウェア・エニックス・ホールディングス / 5,030 / +124.3% / -2.6%
<4062> / イビデン / 2,749 / +86.3% / +67.7%
<6370> / 栗田工業 / 3,195 / +87.8% / +23.3%
<9783> / ベネッセホールディングス / 3,080 / +48.7% / +23.1%
<9697> / カプコン / 3,315 / +37.1% / +21.3%
<4528> / 小野薬品工業 / 2,604.5 / +26.7% / +14.5%
<4307> / 野村総合研究所 / 2,688 / +20.8% / +14.8%
<2413> / エムスリー / 3,260 / +17.3% / +13.6%
<6762> / TDK / 11,870 / +15.1% / +11.3%
※会社公表データをもとにSBI証券が作成。2019年4~12月期営業増益率(前年同期比)、2020年3月期予想営業増益率ともに、会社公表ベースの数値を掲載しています。
抽出銘柄の投資ポイントと株式市場
冒頭でもご説明したように、2019年4~12月期の企業利益は市場予想を下回るケースが多く、最終的には業績予想未達や下方修正の銘柄が増え、通期の減益率はさらに増える可能性もありそうです。
株式市場では、新型肺炎の感染拡大が世界経済に及ぼす影響は一時的かつ限定的となるとの楽観論も根強いようですが、個別銘柄レベルでは驚くような業績悪化につながるケースも出てくると警戒されます。銘柄選別に細心の注意を払っておいた方が良いことに変わりはないと「日本株投資戦略」では考えています。
オリンパス(7733)は、利益のほとんどが医療現場で使われる内視鏡で、その世界シェアは7割に達しています。当四半期累計(2019年4~12月期)営業利益は、この内視鏡が前年同期比39%増の大幅営業増益となったことがけん引し、785億円弱(前年同期比281.3%増)と好調。通期の予想営業利益(920億円)に対する進捗率は85.3%に達しており、さらなる上方修正も可能とみられます。
医療機器事業の売上高営業利益率を20%まで高め、全体的にもさらなる成長を目指しています。市場では、2021年3月期も2割超の営業増益が達成できると予想しています。株価は図1にあるように、急騰後の一服場面となっています。逆に投資家の多くが、市場要因で株価に押し目が到来することを狙っている可能性がありそうです。
ところで、中国での新型肺炎拡大問題はいつまで続くのでしょうか。患者数等の増加がピークアウトしても、大きな爪痕が残る可能性がありそうです。人々が他人との接触に気を使い、「巣ごもり消費」がテーマになる可能性もありそうです。その場合は、ゲーム業界にスポットが当たってくる場合もありそうです。本年末にPlayStaion5(PS5)発売が予定されていることも追い風になるかもしれません。
図1 オリンパス(7733) ・日足
スクウェア・エニックス・ホールディングス(9684)はそんなゲーム株の一角を占めている銘柄です。当四半期累計(2019年4~12月期)営業利益は前年同期比124.3%と大幅増益になりました。ただ、通期の業績予想上方修正を見送ったこともあり、大型タイトルの発売延期が想起され、足元の株価は軟調となっています。
市場では2021年3月期3割近い営業増益を見込んでいます。市場の期待通りの成長が続くのであれば、株価の押し目は投資チャンスになるかもしれません。9/11安値から1/14高値までの上昇幅に対する半値押し水準は4,885円と計算され。2/13(木)はそこを一時下回りましたが、その後は持ち直しています。そろそろ押し目買いチャンスであると捉えている投資家がいるのかもしれません。
図2 スクウェア・エニックス・ホールディングス(9684) ・日足
栗田工業(6370)は、半導体の洗浄等に使う水処理装置が稼ぎ頭の企業です。5Gの普及本格化に伴う半導体需要の拡大が見込まれ、中期的にも業績拡大が期待されています。なお、過去10年間の営業利益ではピークが2008年3月期の305憶円でした。市場では営業利益について2020年3月期300億円から21年3月期は305億円程度と微増となり、ピークに並んでくるとの予想です。これが、305億円を超えてくるというシナリオが有力になれば、株価も上昇トレンドを描きやすくなるものと考えられます。
広い意味で栗田工業を半導体関連銘柄ととらえるならば、イビデン(4062)も関連銘柄と言えそうです。同社はICパッケージの大手企業ですが、通信が「5G」の時代になって高速化すると、データセンターで使われるサーバー等についても能力の大幅拡大が求められることになります。足元ではデータセンターのサーバーMPU向けにパッケージの需要が拡大し、業績は急拡大方向にあるようです。
今期の会社予想営業増益率は67.7%ですが、市場では2021年3月期も5割を超える営業増益を予想しています。5G関連の需要は、中国経済が停滞した場合に影響を受ける可能性がありますが、中長期的には拡大が期待され、その意味でも押し目が期待される投資テーマであると考えられます。
図3 栗田工業(6370)・日足
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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