先端テクノロジーを活用して農業の課題解決に取り組むAgriTech(アグリテック)に大きな注目が集まっています。ドローンやIoTによるビックデータの活用にAIやブロックチェーンが組み合わされ、2020年は、作物を効率的に成長させる技術がさらなる発展を遂げると予想されています。まさに「ロボットが食を創る時代が本格的に到来する」かもしれません。
現代の農業問題を解決するAgriTech
AgriTechとは農業を意味する英単語Agricultureと技術を意味する英単語Technologyを掛け合わせた造語です。具体的には人手不足や農地の減少、環境問題、人口増加、サプライチェーンの不透明性など現代における農業の課題を解決するためのアプローチのことを指します。例えば水分量と水分流量を測定する土壌センサーを用い、スペースや水の量を節約しながらより多くの食物を育てることもAgriTech、「100倍以上を誇り、水の使用量も」の1つです。
また作物の収穫にロボットを使用する取り組みやビッグデータ、機械学習、AIを活用し土壌や生育条件についての理解を深めて収穫率を向上させることもできます。
さらに都心の限られたスペースを最大限に活用し効率的に作物を育てる「都市型農場」も増加傾向です。主な栽培手法として室内・室外を問わず土壌栽培の20分の1の水量 で作物を育てられる「水耕栽培」が挙げられます。土壌栽培より20%少ないスペースで、室内であれば1年を通し栽培することが可能です。
2020年は「効率化」を超えて「生産性の改善」へ
AgriTechにかかわるスタートアップ企業が革新的なアイデアを続々と生みだす中、2020年は農業の効率化だけではなく生産性の改善に重点を置いたアプローチが主流となりそうです。
コンピュータービジョン×AIで作物の成長をモニタリング
米国のCeres ImagingやFarmwise、イスラエルのTaranisなどが提供するコンピュータービジョンとAIを融合させ作物の成長をモニタリングするサービスが注目を集めています。これはドローンなどに搭載したスペクトルカメラで農地の写真を撮影し、画像から収集したデータをAIが分析・予測。最適な栽培法や管理法を提案するというものです。
作物に必要な栄養素や水分量、害虫・病気の危険性などについて事前に察知できるため、作業の大幅な効率化や収穫率の向上に役立ちます。
進化するAI収穫ロボットが重労働を担う
穀物や果物を収穫する「収穫ロボット」の技術がさらに進化し、より精度の高い自動化が進むと予想されます。例えば米国のAbundant Roboticsが開発した世界初の商業用リンゴ収穫ロボットは、光センサー「LiDAR」とAIを搭載。リンゴの木の間を行き来しながら熟したものを見分け吸引機能付きのロボットアームでリンゴに傷がつかないよう慎重に収穫する仕組みです。
人間のように作業中に休息を必要としないため、1日中リンゴを収穫し続けることができます。収穫ロボットは、人間にとって重労働である作物の収穫を軽減する手段として、今後も進化し続けるでしょう。
ハイテク都市型農業で「自給自足」が加速する
近年日本でも都市型農業が話題です。農村部から都市部に輸送されている食料品を可能な限り都市部で「自給自足=栽培」することにより、輸送プロセスで発生するCO2排出量の削減や都市部への緑地と生物多様性の拡大などに役立ちます。一方、このアプローチは、24時間365日モニタリングが必要なうえ生産量が制限されてしまうことが課題です。
Googleのベンチャー部門GVなどが出資するBowery Farmingは、こうした都市型農業の課題への取り組みに成功しているスタートアップの1つです。LEDとロボット工学を駆使して作物の成長プロセスを綿密に監視し、大量のデータを取得、解析します。これによりプロセスの最適化および自動化や、作物に必要な栄養素や水、光の量の最適化に役立てています。また収穫後わずか数日で消費者に届けることが可能としています。同じ規模の農場と比較すると同社の生産性は100倍以上を誇り、水の使用量も95%少ないといいます。
AgriTechの活用でロボットが食を創る技術の発展は、人間の労力を減らし、作物の収穫サイクルをより現代社会の需要に合ったものへと転換させることになるでしょう。(提供:Wealth Road)