(本記事は、木下勇人氏の著書『「知らなかった」では済まされない ホントは怖い 相続の話』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)

本当はたったこれだけでいい、相続税の基礎知識

基礎知識
(画像=Monster Ztudio/Shutterstock.com)

●相続税とは?

相続税は相続や遺贈で取得した財産にかかる税金です。被相続人ではなく、相続した側(相続人)に納税義務があります。

相続税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内に、申告書の提出・納付を行わなければなりません。

納付は税務署、金融機関、郵便局のほか、税務署でバーコード付き納付書を発行してもらえば、税額が30万円以下の場合にはコンビニエンスストアでも可能です。

●相続税がかかるかどうかのラインはどこ?

相続税がかかるかどうかは、相続財産が基礎控除額を超えているかどうかで判断します。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続財産から基礎控除を差し引いた遺産額が0やマイナスになる場合、相続税はかかりません。

例えば、法定相続人が妻と子供2人の場合

基礎控除額=3,000万円+600万円×3人=4,800万円

相続財産が4,800万円までなら相続税がかからないことになります。

●相続税の計算方法

節税を考える前に、相続税の計算方法を知っておきましょう。

相続税の計算は手順が多いですが、ひとつひとつの計算は複雑ではありません。

(1)遺産総額

まずは遺産総額を算出します。遺産を金額で表すといくらになるのか評価して足していきます。

現金などはそのままの金額が評価額になりますが、不動産や株式、宝飾品などはそれぞれに応じた方法で計算します。

(2)非課税財産と債務を差し引く

そもそも相続税がかからない財産(非課税財産)と債務を差し引きます。

非課税財産には次のようなものがあります。

・墓地や墓石、仏壇、仏具、祭具など(ただし、骨董的価値のあるものは非課税にはなりません。)

・相続人がもらった財産を国や地方公共団体、特定の公益法人(ユニセフや日本赤十字社など)に寄附した財産

・生命保険金や死亡退職金のうち500万円×法定相続人の数

生命保険金・死亡退職金は「500万円×法定相続人の数」が非課税、それを越えた分は相続税がかかります。

(3)課税価格の合計額【(1)–(2)=(3)】

課税価格の合計額が出ます。

(4)課税価格の合計額から基礎控除を引く

基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数

基礎控除額を差し引きます。

(5)課税遺産額【(3)−(4)=(5)】

課税される遺産の総額が算出できました。

ここがプラスだと、相続税の申告が必要となります。 (注:(11)の計算後に税金が0円となる場合でも、申告は必要な場合があります。)

(6)法定相続分に振り分ける

実際の受取割合ではなく、遺産を法定相続分で分けます。あくまで、税金計算のためだけに法定相続分を使います。

3-2
(画像=『「知らなかった」では済まされない ホントは怖い 相続の話』より)

(7)税率を掛ける

それぞれの金額に応じた相続税率を掛け、控除額を引きます。

(8)相続税の額

法定相続分で分けた場合の、各人の相続税額が算出できます。

(9)相続税の総額

すべての相続税額を足して相続税の総額を計算します。

(10)振り分ける

相続税の総額を実際の受取割合で振り分け、一人一人の相続税額を算出します。

(11)適用される税額控除を差し引く

配偶者の税額軽減など、各人が適用できる税額控除を差し引きます。税額控除には申告が必要なものがあるので注意が必要です。

・配偶者の税額軽減……被相続人の配偶者は、実際に取得した財産の額が、「法定相続分」もしくは「1億6,000万円まで」のいずれか多い金額に対応する金額までが税額から控除されますが、申告が必要です。

税額控除は他に、暦年課税分の贈与税額控除、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、外国税額控除、相続時精算課税分の贈与税額控除などがあります。

(12)相続税額

それぞれが納付すべき相続税額が算出できました。

●実際に計算してみよう!

ある家族の場合をもとに、相続税の計算の流れを見てみましょう。

お父さんが亡くなって、妻であるお母さんと、長男、長女の3人が遺産を分けることになりました。財産とそれぞれがもらう内容は、以下の通りです。(単位:円 以下略)

3-3
(画像=『「知らなかった」では済まされない ホントは怖い 相続の話』より)
3-4
(画像=『「知らなかった」では済まされない ホントは怖い 相続の話』より)

(1)遺産総額:6,500万

(2)非課税財産:お墓100万+生命保険金1,000万=1,100万

生命保険金1,000万<500万×3人=1,500万

「500万円×法定相続人の数」を超えていないので1,000万は非課税となります。

(3)課税価格の合計額:(1)6,500万−(2)1,100万=5,400万

(4)基礎控除額:3,000万+600万×3人=4,800万

(5)課税遺産額:(3)5,400万−(4)4,800万=600万

(6)法定相続分に振り分ける

(7)税率を掛ける

(8)相続税の額

(9)相続税の総額:60万

(6)~(9) 下図を参照

3-5
(画像=『「知らなかった」では済まされない ホントは怖い 相続の話』より)

(10)振り分ける

3-6
(画像=『「知らなかった」では済まされない ホントは怖い 相続の話』より)

(11)適用される税額控除を差し引く:
配偶者には、配偶者の税額軽減があるため、母のみ9万控除。

(A)実際に取得した財産の額:810万

(B)上限
1億6,000万>配偶者の法定相続分相当額
(2,700万:(3)×1/2)
いずれか多い金額なので、1億6,000万

(C)(A)810万<(B)1億6,000万
実際に取得した財産の額Aが上限のBに満たないので、結果として母の相続税額9万すべてが控除となります。

(12)相続税額:51万

3-7
(画像=『「知らなかった」では済まされない ホントは怖い 相続の話』より)

ふぅぅ~~、やっと相続税額の計算ができました!

みなさん、計算は合っていましたか?手順が多いので一見難しそうですが、全く歯が立たないってわけではなさそうですよね。

3-1
(画像=『「知らなかった」では済まされない ホントは怖い 相続の話』より)
「知らなかった」では済まされない ホントは怖い 相続の話
木下勇人(きのした・はやと)
相続・事業承継専門『税理士法人レディング』代表。税理士(東京税理士会 京橋支部所属)。公認会計士。宅地建物取引士。不動産鑑定士第2次試験合格者。AFP資格認定。1975 年、愛知県津島市出身。大学時代に宅建、不動産鑑定士を取得。28 歳で公認会計士試験に合格し、「監査法人トーマツ」名古屋事務所に入所。上場企業級の非上場会社オーナーファミリーの事業継承対策に従事。約5年勤務の後、33歳で独立し、名古屋で公認会計士木下事務所・木下勇人税理士事務所を開設。翌2009年に、相続・事業承継専門の税理士法人レディングの代表となる。2017年、東京にも事務所を開設。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)