(本記事は、木下勇人氏の著書『「知らなかった」では済まされない ホントは怖い 相続の話』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)
もしも、あなたが独身のまま亡くなってしまったら?
【Case】 山田貴男さん(66)は結婚をせず、気ままな生活を楽しんでいます。それなりの貯えもあり、老後も生活に不自由はないのですが、最近ふと「自分が死んだら財産はどこに行くのか」と考えることがあります。
もしあなたが独身のまま、遺言を書かずに亡くなってしまったら、あなたの財産(遺産)は誰が引き継ぐのでしょうか?それはどんな身内がいるかで変わってきます。
●両親が生きている場合
あなたが亡くなったときに親が生きていれば、相続人は兄弟姉妹ではなく、親となります。兄弟姉妹より親のほうが優先です。遺産はあなたの両親のものになります。
独身の子供が亡くなれば、遺産はその両親が引き継ぐことになるのです。両親がいくら年をとっていても、たとえ100歳でも120歳でも、両親が引き継ぐことになります。
お父さん、お母さんの両方が生きている場合は1/2ずつ。両親のうちどちらかしかいない場合は、生きている親が100%引き継ぎます。
●両親が亡くなっている場合
すでに親がいなくて、兄弟姉妹がいる場合
・兄弟姉妹一人の場合……100%その人が引き継ぎます。
・兄弟姉妹が複数いる場合……兄弟姉妹全員に権利があります。年齢の上下や性別に関係なく、均等に分けます。
・兄弟姉妹がいない場合……もしあなたが独身、子供なし、両親なし、兄弟姉妹なしという場合は、相続人がいません。
あなたの残した財産(遺産)は、特別縁故者がいなければ国庫に納められます。
【知っておきたい 相続の基礎知識】
●相続人の範囲と優先順位
人が亡くなったとき、誰が相続人になるのか、その範囲と優先順位は民法で定められています。
相続の順位
配偶者……夫や妻(内縁は除く)は、お互いが常に相続人になります。
子供……子供が複数いる場合は、それぞれ平等に権利を持ちます。養子、胎児、非嫡出子(結婚していない男女の間に生まれた子)も「子供」に含みます。子供がすでに亡くなっている場合は、その子供が代襲相続人※になります。両親……子供や、子供の代襲相続人がいない場合は、両親が相続人になります。
兄弟姉妹……結婚をせず、子供がなく、両親も亡くなっている場合に、相続人になります。兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子供が代襲相続人になります。
※代襲相続人とは 本来相続人となるはずの人がすでに死亡している場合に、代わって相続する人のことをいう。本来の相続人の子や孫。(ただし、兄弟姉妹の孫は代襲相続人にはなれない。)
※尊属とは 自分よりも先の世代に属する直系および傍系の血族のこと。例えば、父母・祖 父母などを直系尊属、おじ・おばなどを傍系尊属という。
※卑属とは 自分より後の世代に属する直系および傍系の血族のこと。例えば、子・孫などを直系卑属、おい・めいなどを傍系卑属という。(兄弟姉妹やいとこなど、本人と同世代の場合は、尊属でも卑属でもない。また、配偶者はいずれにも属さず、姻族についてもこの区分はない。)
●法定相続分
法定相続分とは、相続人間の公平を図る理念のもと、民法で定められた割合のことをいいます。
必ずしも、法定相続分にそって分けなければならないというルールはありません。遺言や遺産分割協議で決めた内容が優先されます。
親、子供、兄弟姉妹が複数のときは、それぞれ均等になります。ただし、半血兄弟姉妹(いわゆる腹違いの兄弟姉妹)は均等ではなく半分になります。
法定相続分の割合 法定相続人が配偶者のみ……全部 配偶者+子供…………………配偶者1/2、子供1/2 配偶者+親……………………配偶者3/2、親1/3 配偶者+兄弟姉妹……………配偶者3/4、兄弟姉妹1/4 子供のみ………………………全部 親のみ…………………………全部 兄弟姉妹のみ…………………全部
こんなCaseは? 妻子のいるあなたが亡くなったら?
すでに両親は他界して、妻と子供ふたり、そんなあなたが亡くなったとき、法定相続分は妻が半分、子供たちが1/4ずつとなります。
こんなCaseは? 子供のいない一人息子のあなたが亡くなったら?
すでに両親は他界して、子供がいない場合、あなたの財産(遺産)は妻が100%受け継ぎます。
両親がまだ生きている場合の法定相続分は妻が2/3、あなたのお父さんとお母さんが1/6ずつとなります。
こんなCaseは? すでに夫を見送った妻が亡くなったら?
夫がすでに亡くなっている場合で、その後、妻が亡くなったときの法定相続分は、1/3ずつとなります。
もしも、あなたの孫に相続させたいときは?
【Case】 吉岡さん(78)は、自分の財産は、浪費癖のある一人息子(49)ではなく、将来有望な孫(23)に継いで欲しいと考えています。
子供はまだ生きているが、孫に少しでも多く相続させたいという場合、養子縁組する、という方法もありますが、やはり遺言を残すのが一番有効です。
しかし、子供が遺留分を請求してくる可能性もあるので、遺留分に配慮した遺言を作成することをおすすめします。
もしも浪費癖のある一人息子が、あなたより先に亡くなっていて、孫以外に法定相続人がいない場合は、相続財産の全額を孫が相続することになります(孫が代襲相続人となるため)。
【知っておきたい 相続の基礎知識】
●遺留分
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人にだけ認められた、民法で保障されている一定割合の相続の取り分です。
遺留分の割合 遺留分は、法定相続分に1/2 または1/3を掛けた割合になります。
法定相続分×1/2のケース(ほとんどがこちら) ・配偶者のみ ・子(またはその代襲相続人)のみ ・配偶者と子(またはその代襲相続人) ・配偶者と直系尊属(父母または祖父母)
法定相続分× 1/3のケース ・相続人が直系尊属(父母または祖父母)のみ
遺言などによって、自分の取り分が遺留分よりも少なくなってしまった場合に、遺留分を請求できます(遺留分侵害額請求)。
遺留分侵害額請求は、兄弟姉妹以外の法定相続人にだけ認められている権利ですが、必ず使わなければならないものではありません。
「自分の取り分は遺留分より少なくてもいい」という場合は遺留分侵害額請求をする必要はなく、遺言の内容に沿った相続をすることになります。
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