荒い相場が続いている。NY株は急騰・急落を繰り返している。ただ、これは典型的な下値固めの商状だから心配はいらない。大底はもうつけた。

1)ダウ平均のザラ場安値は昨年6月3日の安値に面合わせ。

1)ダウ平均のザラ場安値は昨年6月3日の安値に面合わせ。
(画像=Bloomberg)

2)三空叩きこみのあと、長い下ひげを引いての陽線。出来高も急増している。これは典型的なセリング・クライマックス~底打ちのパターンである。その後、鯨幕相場だが着実に下値は切りあがっている。チャートはS&P500だが、ダウ平均でいえば、△1293 ▲785 △1173 ▲969だから上げのほうが大きく「お釣り」が残る。

S&P500
(画像=Bloomberg)

3)下げ幅の半値戻しで頭を押さえられている。ここを抜ければ初めに窓空けしたフィボナッチ76.4%の水準までは戻るだろう。上げ下げの順番でいえば今夜のNYは上がる順番だ。雇用統計で上げて半値戻しをクリアしてもらいたいところである。

S&P500
(画像=Bloomberg)

4)上海が強い。米国株には左右されず、戻りをたどり、もう少しでコロナで下げる前の高値に迫る。つまり、コロナの震源地はこの厄災を乗り越えるめどがたったということである。

S&P500
(画像=Bloomberg)

5)日経平均もPBR1倍の水準に達した。もうこれ以上の下値はない。厳密にいえば、PBR1倍以下も、そりゃあ、あり得るだろう。と言ってる傍から1倍割れだ。11時過ぎに20,700円を割り込んだ。だがこんなのは瞬間風速的なものだ。常態化はしない。

6)感染症の専門家である東北医科薬科大特任教授・賀来満夫氏は我が国の拡大防止策は4月に成果がでるだろうと述べている(読売新聞)。

以上のことから、足元がこの下げ相場のボトムと判断する。しかし、いったん大きく相場が崩れると2番底を探る動きとなるのが相場の定石である。戻った後、半年~1年程度経って2番底で底入れとなる。リーマンショックは、リーマンブラザーズの破綻が2008年9月で相場の急落は10月、下げ止まったのは11月だった。そこから中間反騰を経て完全に底が入ったのは2009年の3月初旬。まさに今日から11年前の3月6日がダウ平均のボトムである。

2015年夏のチャイナショックもその年の年末には回復した。しかし、結局2016年年初から崩れ、完全底入れはその年の夏までかかった。2018年2月のVIXショックは同年10月から再び急落スパイラルに見舞われた。底入れはクリスマスで「ブラック・クリスマス」と呼ばれた。2019年になると順調に戻り始めたが、再び年央には底値模索となった。VIXショックから数えれば3番底で完了だった。

この背景はよくわからない。しかし、結局は景気サイクルが関係しているのだろう。以下のグラフはMSCI World とグローバル製造業PMIの推移だが基本的に株価の山谷は景況感のそれとおおむね一致する。足元では2019年7月をボトムにPMIの改善に沿った株高になっていたが、足元のコロナで大きく下方屈曲した。

MSCI World とグローバル製造業PMIの推移
(画像=Bloombergデータよりマネックス証券作成)

2番底の有無、時期、深さは、当たり前だが、世界景気の推移次第と言える。

広木隆 広木 隆(ひろき・たかし)マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒業。国内銀行系投資顧問。外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強み。2010年より現職。著書『9割の負け組から脱出する投資の思考法』『ストラテジストにさよならを』『勝てるROE投資術

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