製薬産業をイノベーション創出の中心的な担い手として位置づけ、科学技術の強化とその成果を創薬に結びつける仕組みの整備が、日本や欧米先進国において進んでいる。
ITの進化による情報量の増大や、高齢化による医療需要の増加もあり、癌や認知症など、未だ満たされない医療ニーズは多数存在し多様化しており、革新的な医薬品に対する期待が高まっているのだ。
ニーズが高まる一方、世界的に、医療費、薬剤費を抑制する圧力は増している。また、世界市場に占める日本の医薬品市場の存在感は年々低下し続けているが、アジア地域をはじめとする新しい成長市場の台頭は日本にとっては光明だ。
研究開発の面では、ポストゲノム関連技術に進展がみられ、分子標的薬や核酸医薬など新しいコンセプトの医薬品が誕生し、人類の明るい将来が期待できる一方で、研究開発費が高騰しており、日本のみならず、新薬創出数は減少する傾向にある。研究開発における生産性が低下しているのは悩みのタネとなっていることも事実だ。
日本の製薬産業が抱える問題は?
日本における、 新薬承認数、医薬品関連特許件数、開発品目数等の指標から見ると、医薬品開発は、米国、イギリス、フランス、ドイツなどの主要国と比較して少々停滞している。
例えば、臨床開発段階にある品目を比較すると、推計で、2015年までに日本で消費される品目数では、現状を下回る水準へと低下する可能性があると専門筋からは指摘されており、国内開発品目数の増加と成功確率の向上を図ることが急務だと言。
そのため、製薬産業の研究開発費は過去10年で倍増はしたものの、一方では、新薬創出数は減少しており、研究開発の生産性が大幅に低下しているのだ。この背景には、臨床試験規模の拡大・研究開発要員の増加・ライセンシング・買収の活発化などが挙げられる。
日本の創薬に関連する科学技術のインフラの現状では、政府科学技術予算は着実に増加はしているが、米国に比べると予算規模が極端に小さく、科学技術予算全体のなかでの配分比率も低い。基礎分野の学術論文数(ポストゲノム分野)では、欧米と肩を並べてはいるものの、特許出願数となると、まだ格段の差があり、特に、ベンチャー企業からの出願が極端に少ないのが現状だ。
これらを是正するには、まず予算の配分の見直しから始め、戦略的な予算の策定と執行を可能とする体制づくりが課題だろう。
また、医科大学や保健系の大学院修了者数の構成比にしても、海外に比べてまだ少なく、外国人研究者の比率も低い。なかでも、バイオベンチャーの育成と創薬基盤強化は重要な課題だが、日本では未成熟な段階でしかないのが現状となっている。