(本記事は、富永 雄輔氏の著書『それは子どもの学力が伸びるサイン!』廣済堂出版の中から一部を抜粋・編集しています)
精神年齢が幼く、自立心に欠けている気がする
→「実年齢マイナス4歳」の対応が効く
たくさんの子どもたちと日々接している私から見ても、子どもたちの精神年齢が年々幼くなっているのは事実です。
これは時代の変化から来ています。時代には逆らえないので、無理に自立させようとするのは、むしろ逆効果です。
昔と比べたら幼く感じるだけで、実年齢マイナス4歳くらいの精神年齢が今はスタンダードだと考えれば、親は気が楽になるでしょう。
子どもたちの精神年齢の幼さには、正直私も困惑していた時期もありました。でも、あるときから開き直って、実年齢マイナス4歳くらいの感覚で接して、言葉をわかりやすくしたり、声がけの回数も増やしたところ、子どもが無理なく成績を伸ばしはじめたのです。特に男の子の場合は、ほぼすべての子にそのやり方が有効でした。
たとえば、9歳の子に、親のイメージの9歳だと思って接してしまうと伸びない。子どもにとって理解が追いつかなかったり、冷たく感じたりして、適切なサポートになっていないためです。でも、マイナス4歳の5歳だとして対応すれば、意外と伸びちゃったりします。サポートがちょうどよくなるからです。
つまり、我が子の幼さは、実は親御さんが思うほど大きなピンチではありません。
テクニック的なところでは、幼いのであればたとえば「お菓子などのご褒美で動く」とか、「親の言うことを聞きやすい」などの利点があります。
また、幼い分、反抗期が来るのが遅いので、反抗期が来る前に受験勉強をどんどん進めるのもひとつの手です。
逆に、身の丈を超えた自立を子どもに強制するのは、本来もっている力を発揮させないまま、かえってつぶしてしまう可能性のほうが高いです。暴力も愛情だと言っているのと同じくらい時代錯誤のやり方です。
たとえば、本人が乗り気でないのに、いきなり1人で旅をさせるとか、親が助けをいっさい出さずにすべてをやらせるようなことより、家庭の中で、子どもが自分の持ち物はきちんと管理するとか、何か役割をもつなどの、小さなことを積み重ねていくほうが、彼らは確実に一歩ずつ大人になっていきます。
親の理想よりも4年遅れにはなりますが、接し方を間違えなければ、ちゃんと「年齢相応」に自立していきますから、心配する必要はありません。
「いざというとき素直にSOSを出せる力」のつけ方
何が起きても不思議ではないこの時代を子どもが生き抜くためには、「必要なときに助けを求める力」つまり、「ピンチに陥ったときに素直にSOSを出す力」も必要です。そのためには、親に上手に頼った経験も必要です。
もちろん、すべてのやるべきことを親が代わりにやってやるのは論外ですが、「必要に応じて手を差し伸べる」スタンスがいいのです。「甘えようと思えば甘えられる環境でこそ、本当の自立心がのびのびと育まれる」と私は思っています。
そういう意味ではやはり、家庭が子どもの自立心を育てる主な舞台になると言っていいでしょう。
- 精神年齢が幼く、自立心に欠けている気がするのまとめ
- ・実年齢マイナス4歳が今の標準。親がそれを頭に入れて接すれば子どもは成績が伸びる。 幼い分、親の言うことも聞くので、受験勉強をどんどん進めるのも手。
今までどおり勉強しているのに、最近テストの点数がよくない
→隠れた「つまずきポイント」を探す
学習単元は、急に難しくなるものがあるので、いつもの勉強量では足りなくなり、テストの成績が悪くなることがあります。その場合は勉強量を増やすしかありません。
しかし、勉強量を増やしても解決しない場合には、どこに「つまずきポイント」があるのかをはっきりさせましょう。
注意しなければいけないのは、つまずきが見えはじめた場所と、本当のつまずきポイントは必ずしもイコールではないことです。本当のつまずきポイントは、過去の単元に隠れていることがよくあります。
学校のテストで90点とれていても、つまずきポイントがあるケース
特に算数・数学や英語などは、今と過去の単元の連動性が高い教科なので、過去の単元でつまずいているから、今できないということが多いのです。たとえば、英語で「be動詞」がわからなければ、その後に習う「過去形」もわかるわけないので、以前の単元に戻ってやるしかありません。
ほかにもたとえば、「割り算」でつまずいたように思えた子の本当のつまずきポイントが、実は「かけ算」である場合もあります。かけ算の理解が十分ではなかったものの、なんとなくやり過ごしてしまい、そのまま割り算に進んだ途端にわからなくなった子はとても多いです。
また、小学生の頃は算数が得意だったのに、中学1年生の夏くらいになって急に数学のテストの点数が下がってしまったとしても、その子のつまずきポイントが中学生の数学の単元にあるとは限りません。算数は「得意」に見えていただけで、実は小学5年生で習った算数のある単元の理解が不十分だった、ということもありえます。
たとえば、中学生になって「方程式」は理解できた、でも、割合や速さが出てくる文章題ができないという子がいるとします。これは実は、小学校で習った割合や速さの理解があやふやだったということです。
中学受験をしない、しなかったお子さんの場合、「できる、できない」の判断を学校のテストだけに頼っていたことが大きな落とし穴になっているケースはよくあります。
少なくとも公立小学校のテストは、理解が多少あやしくても、80点くらいは比較的かんたんに取れてしまいます。それ以下の点数が続いていれば、親子ともに危機に気づきやすいのですが……。
隠れつまずきポイントの探し方
もちろん80〜90点がとれたことはがんばったとほめてあげてほしいのですが、10〜20点の失点にお子さんのつまずきポイントが隠れていたというわけです。
その場合は、本人もつまずきポイントが自覚できていないうえに、親御さんも「小学校の頃は問題なかった」と思い込んでいるので、本当のつまずきポイントが見えづらくなっています。
隠れつまずきポイントの確かめ方は、
- テストでいつもどこを間違えているか、どんな間違え方をしているのかチェックしてみる
- 1学年下げた問題集やテストを解く
- 学校の先生に相談する
- 塾の先生に答案をもっていって相談する
などがあります。
算数・数学の場合なら、学年をさかのぼった問題を解かせてみて、ミスが多い単元を探し出す方法はありますが、親子とも「できないはずはない」という感情がどうしても入ってしまいがちなので、第三者に判断してもらうのもひとつというわけです。
たとえば、ほとんどの塾ではその子のレベルを確認するために入塾テストを実施しているので、実際に入塾するかは別としても、それを利用する手もあります。
苦手な科目も、ひとつ得意分野ができればしめたもの
子どもは「自分はわからないんだ」ということを認めるのが苦手です。
けれども、つまずきに気づければとてもラッキーです。つまずきポイントを冷静に受け入れ、本人がいやがったとしても、その地点まで戻って手直しする勇気をもてば、必ず成績は上がります。手直しをはじめて、2か月くらいで一気に成績が上がる例もあります。
もしも、お子さんが自分より下の学年からやり直すことでプライドが傷ついたり、自信を失ったりするタイプであれば、「学年」にフォーカスせず、「小学生の算数」「中学生の数学」などざっくりしたカテゴリーでまとめられているドリル等を選ぶのがよいでしょう。
また、理科や社会のように、いくつかの独立した分野に分かれている教科は、苦手な分野があっても、得意な分野がひとつでもできれば、その教科全体の印象が変わり、ほかの分野にも興味をもちはじめることが多々あります。
たとえば、地理が苦手でも、歴史が得意になれば、歴史を学ぶ際に身につけた暗記のコツを地理にも生かせるようになるものです。また、生物分野が苦手な子は、理科そのものが苦手なわけではなく、暗記が苦手なだけかもしれません。
ですから、「理科が苦手」「社会が苦手」と決めつけてしまわずに、「◯◯の分野が苦手」と細かくとらえて対策を立てることが大切なのです。
- 今までどおり勉強しているのに、最近テストの点数がよくないのまとめ
- ・つまずいた場所が本当に苦手なところとは限らない。学年をさかのぼって手直ししよう。 ・得意分野がひとつあればよくなることも。苦手なことを決めつけず細かくつまずきポイントを探す。
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