(本記事は、富永 雄輔氏の著書『それは子どもの学力が伸びるサイン!』廣済堂出版の中から一部を抜粋・編集しています)
親への質問が多くなる
→興味が広がっている証拠。親はかんたんには答えない
成績のいい子ほど、「この間、お父さんから聞いたんだけど……」「昨日お母さんと話していたときに……」という言葉をよく使います。
そんな子どもたちを見ていてつくづく感じるのは、「子どもの成績を伸ばす鍵は、家庭内での会話にある」です。
もともと会話が豊富にある家庭のお子さんの場合、「最近、質問が多くなったなあ」とは、単なる会話から一歩進んで、探究心や知識を得ようとする意欲に火がついたサインにほかなりません。
ただ、こういう成長のチャンスを最大限に生かすには、小学校中学年以上くらいからは、親は質問にはかんたんに答えないのが大事です。
基本的には、「自分で考えさせる」「自分で調べさせる」など、答える前にワンステップはさんでみてください。親はその質問に関係のある本を買うとか、いっしょに読むとかしてサポートしてもよいですね。
さらにプラスアルファするとしたら、それに関するイベントに行くなどして、リアル体験を通して、「答え合わせ」をさせます。たとえば、魚についての質問をされたとしたら、親はすぐに答えずに子どもに考えさせたり、調べさせたりします。その後、水族館に連れて行くのです。それらのステップを踏むことで、誰かにすぐ教えてもらうより、思考や想像もするし、確実に知識は身につきます。
「疑問を自分で解決する力」は、その後の学力を伸ばす大きな土台となりますから、早い段階でこの力を身につけられればもうそれだけで大きなアドバンテージとなるでしょう。
ただし、くり返しますが、これは小さい頃から家庭で十分な会話があり、会話が質問という形に変わったお子さんの場合です。
このようなお子さんの質問は、その内容が非常に具体的で、疑問点が明確である特徴があります。
「◯◯を発明したのは誰?」 「◯◯って人口はどれくらい?」
このような質問ができているとしたら、親はかんたんには答えないことです。
子どもが小さいうちは突き放しは厳禁
一方、小学校低学年のうちは「なぜ?」「どうして?」と質問をくり返し、親を困らせますが、親の「自分で調べなさい」などの突き放しはまだ厳禁です。
根気強く親やまわりの大人たちが答えてやれば、「疑問をもつ」→「質問する」→「教えてもらう」→「納得する」という経験を積むことができます。
この「納得する」経験は、実はものすごく重要で、これがあるからこそ次の質問の意欲が湧きます。いくら質問しても適当にごまかされたり無視されたりすると、子どもは質問をあきらめてしまい、「質問の経験」を積むことができません。
親がすべての質問に答えるのは、とても根気のいる作業ですが、この段階において重要なのは「答え」そのものではなく、子どもが「納得する」経験なので、一見正解がなさそうな質問でも、親御さんなりの「答え」を与えます。質問の内容が的を射ない場合は、会話のキャッチボールをくり返し、子どもが自分の疑問点を具体的に表現できるよう、手助けすることも必要です。
そうしているうちに、結果的に「質問力」も上がっていきます。「質問力が上がる」とは、質問の内容が難しくなるかどうかではありません。「疑問点が明確な質問ができるようになる」ということです。
つまり、「質問力」とは、単に「質問する力」ではなく、「自分のわからない点を明確にする力」でもあるのです。
たとえば、算数でわからない問題がある場合、「質問力」が高い子は、「自分がどこまで理解できていて、どの段階からわからなくなるか」のように、疑問点を整理することができます。疑問のポイントが明らかなら、あとはそれを解決するだけなので、そういう子は非常に効率よく勉強を進められます。
けれども「質問力」の低い子は、「全体的にわからない」と疑問のポイントが定まらず、いわば「どこがわからないのかわからない」状態です。
そうなると、答えを得るのに必要以上に回り道をしなければならず、成績を伸ばすことは難しくなってしまいます。
だからこそ、「質問力」を磨くことは成績を上げるために欠かせないポイントなのです。
子どもが安心して質問できる場所をつくる
このように親御さんの態度でも子どもの「質問力」を伸ばせますが、実は早い時期から塾に通うのも、それを磨くうえで大いにメリットがあると私は考えています。
成績のよい子は短時間で効率よく質問して吸収します。この訓練をすることで、国語のまとめ力もつくようになります。
しかし、子どもにとって「質問する」のは意外にハードルが高く、安心できる環境や心を許せる相手でないと、疑問を素直にぶつけることができません。
早い時期からそれぞれの理解力に応じた対応をしてくれる塾に通い、早めにその環境や先生に慣れてしまえば、たくさんの質問をし、そして納得する経験をたくさん積むことができます。すると、勉強に本腰を入れる学年になる頃には十分な質問力が育っています。
もちろん塾にまかせておけば安心、というわけではありません。
質問力をつける前提として必要なのは十分な会話であり、その中心はやはり家庭であるべきです。とにかく子どもとたくさん会話することを、ぜひ今すぐはじめてください。
- 親への質問が多くなるのまとめ
- ・子どもの学習意欲に火が点いているので、大きい子なら自分で考えさせると、知識は確実に身につく。 ・「質問力」が上がると、効率よく勉強を進められる。
屁理屈っぽい質問ばかりしてくる!
→「かまってほしい」サインかも!
子どもの質問の内容が曖あい昧まいな場合、要するに「あまり意味のない質問」である場合は、状況がまったく違ってきます。
「なんで大人は働かなくちゃいけないの?」
「なんで子どもは勉強しなくちゃいけないの?」
もちろん状況によっては、このような質問に意味がある場合もありますし、「なぜなぜ世代」の小学校低学年以下の子どもなら問題はありません。しかし、明らかに屁理屈として、このような質問を親に畳みかけてくるようなら、心の拠り所を失っている可能性があります。
家庭での会話が少なく、会話のトレーニングが不足しているお子さんによく見られるのですが、これは質問というより、「もっと自分にかまってほしい」サインです。
つまり、疑問があるから質問するのではなく、うまく会話ができないから、「質問」という形をとっているに過ぎません。
そのようなお子さんの場合に必要なのは「質問の答え」ではなく、親子の「会話」による心の充足です。一見堂々巡りになりそうな質問だったとしても、その答えを探すふりをして、じっくり会話をしてください。最近は家族がいっしょに過ごす時間さえ、親も子もそれぞれがスマホの場面に夢中なケースが多く、会話が少ないご家庭は非常に増えています。
もしも心当たりがあるのなら、それと同時にこれまでの会話不足を改めましょう。
会話を重ねることで、子どもは語彙や知識を増やしていきます。
また、屁理屈的な質問が多いときは無理に勉強をさせても、心がマイナスの状態なので、効果が薄いでしょう。
ですから、まずは子どもの環境等を見直してみるチャンスだととらえてください。勉強は難しいことや苦手なことをやるのではなく、かんたんなものを中心に、自信をつけることからはじめましょう。
- 屁理屈っぽい質問ばかりしてくる!のまとめ
- ・屁理屈を言う子に必要なのは「答え」より「会話」。 ・屁理屈が多いときは勉強させても効果は薄い。まずは環境を見直し、かんたんな勉強で自信をつけさせる。
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