資産運用は目的に応じたリスクを取って運用することが大切だ。目的に見合わないリスクを取ると、資産が大きく目減りしてしまう可能性があるからだ。そうならないために、40代から資産運用を始める初心者が押さえておきたいポイントや注意点、おすすめの資産運用の方法を確認しておこう。

目次
1.資産運用が必要である4つの理由
2.40代からの資産運用のポイント
3.資産運用の基本
4.初心者は「GPIF」の運用を参考に
5.資産運用を始めるなら投資信託がおすすめ
6.投資信託の運用で活用したい税制優遇口座
7.資産運用は目的を明確に

1.資産運用が必要である4つの理由

資産運用
(画像=SFIO CRACHO/Shutterstock.com)

資産運用に関心を持つ人は増えているが、それほど必要性を感じていない人もいる。なぜ資産運用が必要なのか。

1-1.預貯金でお金が増える時代ではなくなった

銀行の金利は今でこそゼロに等しいが、過去には5%以上の利息がもらえる時代もあった。銀行に預けるだけでお金が増えるのだから、その時代ならリスクを取って資産運用する必要性は、今ほどはなかったかもしれない。しかし、バブル経済崩壊以降は低金利が定着し、ただお金を預けているだけでは増えなくなってしまった。

預貯金でお金が増えない以上、お金を増やすためには資産運用が必要になる。副業などで収入を増やす方法もあるが、そのお金を利息のつかない預貯金に置いておくのはもったいない。当面使わないお金は一部を資産運用に回し、お金そのものに働いてもらうべきだろう。

1-2.インフレリスクにさらされている

預貯金にお金を置いておくことにはデメリットもある。現金にはインフレリスクがつきまとうからだ。

インフレは継続的に物価が上昇していく現象である。仮に毎年1%ずつ物価が上がれば、預貯金の実質的な価値は毎年1%ずつ下がってしまう。日本の物価は高度成長期と比べれば停滞しているが、それでも今後物価が上がらないとは言えない。インフレリスクがなくならない以上、ある程度の現金は確保しつつ資産運用もやっていくことが望ましいだろう。

1-3.年金受給額が減少していく可能性が高い

資産運用をする理由に、公的年金制度に対する不安を挙げる人もいる。

日本の公的年金制度は、現役世代から集めた年金保険料を年金受給世代に渡す仕組みになっている。この仕組みにはメリットもあるが、少子高齢化が進む中、年金受給世代を支えることが難しくなりつつある。将来にわたって公的年金制度を維持するために、年金受給額が減少していく可能性は高く、自助努力としての資産運用は欠かせない時代になっている。

1-4.長生きすることでかかるコストがリスクになってしまう

長寿化も資産運用が必要な理由の1つだ。

長生きすれば、それだけ生活費や医療費などがかかる。平均寿命は年々伸びており、それに伴い老後期間も長くなっている。1961年の平均老後期間は男性12年、女性16年だったが、2017年は男性16年、女性24年になっている。年金受給額が減少する可能性を考えると、現役時代から資産運用を行い、将来に向けた準備をしておく必要があるだろう。

2.40代からの資産運用で押さえておきたい3つのポイント

資産運用をすると言っても、手元にある程度のお金は残しておかなければならない。必要以上の資金を資産運用に回すのは危険だ。自分のお金を整理して目的に合わせて資産運用をするようにしよう。

2-1.お金の色分けで資産運用に使える資金を整理する

資産運用に回してもいいお金かどうか判断するには、その使い道で大まかに色分けするとわかりやすい。

手元資金は一般的に、⑴生活資金、⑵使用予定資金、⑶緊急資金、⑷余裕資金に分けられる。

⑴生活資金……日常生活に必要なお金
⑵使用予定資金…•住宅購入や教育資金など使い道が決まっているお金
⑶緊急資金……病気やケガで働けなくなった時など急な出費に対応するためのお金
⑷余裕資金……10年以上など当面は使う予定のないお金

⑴生活資金、⑵使用予定資金、⑶緊急資金は減らすことができないため、資産運用には⑷余裕資金を使うのが基本だ。
⑵使用予定資金の中には「~年後の教育費」など資産運用で準備しやすい資金もあるが、その場合もリスクを取り過ぎないように注意したい。
⑶緊急資金については、最低でも生活費の3ヵ月分をすぐに引き出せる預貯金に置いておこう。

お金の色分けでは、同じ口座で行うと何のお金かわからなくなるため、目的ごとに口座を分けるようにしたい。資産運用に使うお金については、証券会社の口座を利用するとわかりやすいだろう。証券会社は資産運用に特化しているため、銀行よりも資産運用に関する情報を取得しやすいので、口座を開設しておいて損はないはずだ。

2-2.ローリスク、ハイリターンの資産運用は存在しないことを理解する

⑷の余裕資金で資産運用をする際に必ず意識しておきたいのが、リスクとリターンの関係だ。

資産運用の世界では、リスクは値動きのブレ幅を意味し、リターンは運用結果を指す。リターンがマイナスでも、そのブレ幅が小さい金融商品はリスクが低いとみなされる。リスクとリターンは表裏一体の関係にあり、高いリターンを期待できるものはリスクも高くなる。代表的な金融商品のリスクとリターンの関係をまとめると以下のようになる。

リスク小                                                                         リスク大
預貯金 日本債券 外国債券 日本株式 外国株式
投資信託

※筆者作成

一般的に債券よりも株式のほうがリスクは高く、期待できるリターンも高い。同じ金融商品でも投資対象が国内より海外のほうがリスクとリターンともに高くなる。投資信託については、その中身によってリスクの大きさが異なる。資産運用をする際は、リスクとリターンを考慮することが大切だ。

2-3.40代からの資産運用は特に目的を明確にする

資産運用はその目的によって運用方法が変わる。40代はライフイベントが重なりやすいため、資産運用の目的に特に気を配る必要がある。住宅購入で大きな出費があったり、子供が大きくなると教育費がかかるようになったりするからだ。このような時期こそライフプランを見つめ直し、目的ごとに資金を準備していかなければならない。

特にお金がかかるのは住宅購入費、教育費、老後の生活費の3つだ。必要な資金を計画的に準備するためには、いつ頃、どんなお金が、どのくらいかかるのかを書き出すなどして「見える化」することが大切だ。ゴールがわかれば不足分への対策ができるようになり、それに応じたリスクを取って資産運用ができるようになる。

老後資金のように、かなり先で使うお金はある程度のリスクを取って運用できる。たとえば企業の成長とともに株価の上昇が期待できる株式は、ブレ幅が大きいとしても、時間をかければリターンがプラスになる可能性が高いからだ。

反対に、数年後に使う予定のあるお金は、ブレ幅が小さく安定性の高い金融商品や元本の保全性が高いもので運用するほうがいいだろう。

たとえば40歳で住宅を購入し、65歳の定年時に800万円の繰り上げ返済をしたい場合、2~3%の平均リターンが期待できるものなら毎月2万円程度の積立で十分達成できる。資産運用において2~3%の期待リターンは決して高くはなく、きちんとゴールを見据えれば無理のない準備をしていけるはずだ。

資産運用でどれだけのリスクを取って運用すべきかは、お金の色分けでわかる資金の目的から考えるようにしよう。

3.資産運用の基本は「長期投資」と「分散投資」

では、どのようにリスクをコントロールしていけばいいのだろうか。資産運用を実際に行う際は、長期投資と分散投資を実践したい。この2つを行っていけば、リスクを抑えながら投資したり効率的に運用できたりすることにつながる。

3-1.長期投資でリターンが安定する

金融商品には大なり小なり値動きがあり、その中で短期売買によってプラスのリターンを出すのは相応の技術や知識が必要になる。もちろん短期売買で利益を上げることはできるが、売買の回数が多くなるとそれだけ損失を出す可能性も高くなってしまう。

一方、長期投資は期間が長くなるほどリターンが安定する傾向がある。日本株式を例に、期間別のリターンを確認してみよう。

日本株式の期間別平均収益率(1966年~2006年)
投資期間 1年間 5年間 10年間 20年間 30年間
最高 72.1% 32.9% 22.8% 20.5% 12.8%
平均 12.9% 11.1% 10.4% 11.4% 10.1%
最低 −24.8% −7.3% −3.5% 4.4% 6.8%

※投資信託協会のホームページより筆者作成

株式は金融商品の中でも値動きが大きく、高リスクに分類されるが、投資期間が長期になるほど収益率の最高と最低の差が縮まっていく。

それに対して、平均収益率はどの期間でもさほど変わらない。このことから、リターンは短期投資ほどブレ幅が大きくなり、長期投資ほどブレ幅が小さくなることがわかる。長期投資によって、リスクが抑えられていると言っていいだろう。

長期間の資産運用ができるとしても、あえてリスクを落として運用したほうがいい資金もある。前述のお金の色分けで考えるなら、⑵使用予定資金がそれだ。この資金は教育費など使う時期が決まっているものが多く、減らしたくないお金だ。そのため、長期投資ができるとしても、本来よりリスクを抑えて運用すると安心だ。

3-2.分散投資には3種類の方法がある

長期投資以外の投資方法に分散投資がある。これもリスクの低減や資産運用の効率化に一定の効果がある。分散の対象は、資産クラス、運用口座、投資タイミングの3つだ。それぞれの分散効果について見ていこう。

・⑴資産クラスの分散を行う
分散投資は、一般的に資産クラスの分散を指すことが多い。資産クラスの分散は「アセット・アロケーション」とも呼ばれる。資産クラスには様々な種類があり、代表的なものに株式と債券がある。さらにそれを国内と海外に分類できる。分散投資を考える際は、資産クラスごとの特性を知る必要がある。

たとえば株式は比較的値動きが激しいが、長期的には経済や企業の成長によって債券を上回るリターンが期待できる。債券にも値動きはあるものの株式と比べると緩やかであり、定期的な利子収入を受け取れることが特徴だ。

景気が良い時は株式にお金が集まりやすく、悪い時には債券に集まりやすい。資産を海外にも分散することで世界の経済成長も取り込みやすくなる。

資産クラスごとの特性に応じて分散投資をすることで、リターンを狙いつつリスクを抑えることができる。基本的には運用期間を長く取れるなら、株式の割合を増やして長期的に資産を成長させていくのがセオリーだ。分散投資の配分割合に正解はないが、高齢期に使う資金であれば「100-自分の年齢(%)」が株式などのリスク資産に配分する割合の目安と言われている。

・⑵運用口座を分散する
アセット・アロケーションは金融機関ごとではなく運用資産全体で考え、資産クラスごとに口座を使い分けると効率が良い。

アセット・ロケーションの候補になる口座には、通常の課税口座やiDeCo、NISA、つみたてNISAなどがある。iDeCoやNISAの概要は後述するが、これらには運用益が非課税になるメリットがある。非課税メリットの恩恵を最大限に生かせるのは、株式のような期待リターンの高い資産であり、iDeCoやNISAでの運用が向いている。債券のような安定資産は、通常の課税口座を利用するといいだろう。

アセット・アロケーションの例
課税口座 iDeCo NISA・つみたてNISA
外国債券
国内債券
現金
外国株式
国内株式

※筆者作成

もちろん、iDeCoのみを利用して運用するような場合は、無理にアセット・ロケーションをする必要はない。iDeCoやNISAは上限金額が決まっているため、それを超えて資産運用をするなら資産クラスごとにどの口座で運用するのが有利か、優先順位を意識するといいだろう。

・⑶積立投資で投資タイミングを分散する
分散投資は運用資産だけでなく、投資タイミングの分散も有効だ。積立投資やドルコスト平均法などの方法があり、リスクを抑えつつ資産の増加が期待できる。

積立投資でリスクを抑えられる理由は、高値づかみを避けられるからだ。同じ100万円を投資するとしても、積立投資では定期的に金融商品を買っていくため、価格が高い時に一度に買ってしまうことはない。一括投資では、たまたま高い時に買ってその後急落すると、そのまま何年も回復を待たなければならないこともある。積立投資なら安く買える期間もあり、価格変動を気にすることなく続けやすい。

まとまった資金がなくても運用できることもメリットだ。ネット証券を使えば投資信託を月々100円から積立でき、資産運用に不安がある人でも、試しに少額から始めてみることもできる。

4.資産運用の初心者は「GPIF」の年金資産の運用成果を参考にできる

資産運用で重要な長期投資と分散投資は、現役世代が支払う公的年金保険料の運用においても重視されている。

公的年金の給付財源は年金保険料と税金だが、余剰分は将来の財源のためにGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用している。運用収益率は市場運用が開始された2001年度から2018年度までが年率平均3.03%、2018年度までの10年間は年率平均5.05%であり、これらの収益率は個人の資産運用でも参考になるはずだ。

GPIFの資産運用は、アセット・アロケーションとして基本になる資産構成割合を設定している。日々の価格変動によって資産構成割合は変化するが、国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%が基本だ(2020年3月時点)。それぞれに乖離許容幅が決められており、それを超えて資産構成割合が崩れると、割合を元に戻すためにリバランスが実施される。

  基本の資産構成割合
国内債券 国内株式 外国債券 外国株式
資産構成割合 35% 25% 15% 25%
乖離許容幅 ±10% ±9% ±4% ±8%

※GPIFのホームページより筆者作成

個人がリバランスを実施するなら、1年に1回など時期を決めて行うといいだろう。リバランスは割合が増えすぎたものを売り、減ったものを買うのが基本だ。追加資金で買付をして、割合を調整する方法もある。必ずしもリバランスが必要なわけではないが、運用効率を高める方法として知っておきたい。ただし売買手数料がかかる商品では、その分コストがかかることになる。

上記の資産構成割合は2014年10月末に変更されたものなので、前述の運用収益率の直接的な結果ではない部分もあるが、長期投資と分散投資に効果があることに変わりはない。個人でも、長期投資と分散投資を基本に資産運用を行っていきたい。

5. 初心者が資産運用を始めるなら投資信託がおすすめ

資産運用の方法はたくさんあるが、初心者が始めやすいのは投資信託だろう。

5-1.投資信託が資産運用初心者に向いている理由

投資信託とは、不特定多数の人が投資した資金を運用会社のファンドマネージャーがまとめて運用し、その成果をそれぞれの投資額に応じて分配する金融商品だ。

一言で言えば、投資信託は金融商品のセット販売である。たとえば国内株式のみで運用するAセット、外国債券のみのBセット、株式と債券が半々のCセットがあり、どれを選ぶかは投資家の自由だ。直接運用するのはファンドマネージャーであり、投資家は個々の株式や債券などを細かく分析する必要はない。したがって、投資対象や運用方針など最低限のチェックで投資できるというメリットがある。

投資信託は、投資金額の自由度が高いことも初心者に向いている理由だ。株式への直接投資は数万円からできるが、銘柄によっては数十万円や数百万円かかるものもある。その点、投資信託は金融機関によっては100円から投資でき、他の金融商品と比べて資金的な制約は少ない。1つの投資信託で数十銘柄から数千銘柄に投資しており、投資資金が集中しないためリスク分散にもつながる。

投資信託で運用する場合、以下のことは最低限知っておこう。

5-2.投資信託の運用スタイルには「インデックス」と「アクティブ」がある

投資信託の運用スタイルには、インデックス(パッシブ)運用とアクティブ運用がある。インデックスは「指数」を意味し、それと連動するよう運用される。日経平均株価は日本株式の代表的な指数だが、その値動きに連動するように運用されるインデックス投資信託がある。一方アクティブ運用では、そのような指数(インデックス)を上回る成果を目指して運用される。

・インデックス(パッシブ)運用…•日経平均株価など特定の指数(ベンチマーク)に連動する
・アクティブ運用……特定の指数(ベンチマーク)を上回る成果を目指して運用する

簡単に言えば、インデックス運用は世の中にある特定の指数と同じパフォーマンスを目指し、アクティブ運用は平均以上の運用成果を求めて積極的に運用するスタイルだ。

投資対象が同じなら値動きはアクティブのほうが大きくなりやすいが、インデックスの値動きが安定しているわけではないので気をつけよう。投資対象が株式ならインデックスでも値動きは大きくなるし、債券ならアクティブでも比較的緩やかな値動きになる。リスクの大きさは、あくまでも資産クラスごとに異なることは認識しておきたい。

インデックスとアクティブのどちらがいいとは言えないが、投資信託には後述の運用手数料がかかるため、特にこだわりがなければ長期の資産運用に適したインデックスを選ぶといいだろう。初心者は、値動きが特定の指数に連動するインデックスのほうがわかりやすいはずだ。

5-3.投資信託の「バランス型」には3種類の商品タイプがある

運用スタイルはすべての投資信託で共通だが、投資対象資産によって単一型とバランス型(資産複合型)に分かれる。単一型は「国内株式のみ」といった1つの資産クラスに投資し、バランス型は複数の資産クラスに投資する。バランス型には資産配分固定型、リスクコントロール型、ターゲットイヤー型がある。ここからは、バランス型の3種類の商品タイプについて見ていこう。

資産配分固定型は、投資資産の比率が変わらないタイプだ。株式と債券が50%ずつの組入なら、その割合が維持されたまま運用されるので、リスクの大きさがわかりやすい。

リスクコントロール型は、経済状況に合わせて資産配分比率を機動的に変える。株式が好調ならその比率を高く、下落相場では債券比率を高くするといった具合だ。

ターゲットイヤー型は、銘柄ごとに2050年など目標とする年が決まっており、目標年に向けて徐々にリスクを抑えた資産配分比率に変えていくという特徴がある。

投資信託の商品タイプ
単一型 バランス型(資産複合型)
資産配分固定型 リスクコントロール型 ターゲットイヤー型
国内株式のみ、外国債券のみなど1種類の資産に投資する 投資資産の配分比率が変わらず、リスクの大きさがわかりやすい 経済や証券市場の状況に応じて、機動的に配分比率を見直す あらかじめ決まった目標年に向けてリスクを低減させていく

※筆者作成

どれを選ぶかは投資家の好みにもよるが、以下を目安にしてほしい。

・資産配分固定型……一定のリスクで運用したい人や自分のタイミングで見直したい人
・リスクコントロール型…•その時の経済状況で都度見直しをしてほしい人
・ターゲットイヤー型…•年齢に応じた資産運用を自動化したい人

単一型を組み合わせて自由に資産配分をするのもありだが、初心者であまり手間をかけたくないならバランス型から選ぶといいだろう。バランス型なら、リバランスも運用会社がやってくれる。

5-4.投資信託で資産運用をする際は手数料に注意

投資信託の手数料はいくつかあるが、資産運用で注意したいのは「購入手数料」と「信託報酬」だ。

・購入手数料……投資信託の買付のたびにかかる。購入金額の1~3%程度のものが多いが、無料の投資信託も多くなった。
・信託報酬……投資信託の保有残高にかかる運用手数料。保有中はずっと負担する手数料で、金融庁によると平均で年率1.53%かかる。信託報酬は、投資期間が長くなるほど運用パフォーマンスの押し下げ要因になるため、低いほうが望ましい。

信託報酬は投資信託の運用スタイルで差があり、運用の手間がかからないインデックスは低く、運用収益を追求するアクティブでは高くなる。アクティブ運用は、投資対象の調査に力を入れているため高くなるのだが、それだけ投資家も選択が難しくなる。また高い運用手数料は、長期になるほど不利に働くことに注意したい。

その意味でも、初心者は手数料が低く比較的選びやすいインデックスを中心に運用するのがいいだろう。

  インデックス アクティブ
購入手数料 買付の都度、1~3%程度発生(無料のものもある)
信託報酬 安い 高い

※筆者作成

6.投資信託の資産運用で活用したい税制優遇口座 iDeCo(イデコ)、NISA(ニーサ)

投資信託で資産運用をするなら、税制優遇口座のiDeCoやNISA(つみたてNISA)を利用したい。

6-1.節税効果の高い「iDeCo(イデコ)」

iDeCoは60歳未満の人を対象にした私的年金制度で、老後に向けた積立投資ができる。iDeCo最大のメリットは掛金が全額所得控除になることで、積立投資と同時に節税もできる優れものだ。積み立てた1年間(1〜12月)の金額に対し、所得税の5~45%、住民税の10%にあたる金額を節税できる。

仮に、所得税と住民税を合わせて30%の人がiDeCoで月々2万円(年間24万円)積み立てた場合、節税額は1年間で7万2,000円(=24万円×30%)にもなる。これが毎年続くため、資産運用の成果がなかったとしても大きなメリットがある。さらに、iDeCoは通常なら約20%かかる運用益に対する課税もなく、効率的に資産を増やしやすい制度と言える。

注意したいのは、iDeCo口座では手数料がかかることと、引出制限があることだ。

iDeCo口座の手数料は、加入時と加入中にかかる。加入時の手数料は2,829円(税込)で、初回のみだ。加入中は毎月手数料がかかるが、金融機関によって異なり、最低171円で600円以上(税込)かかるところもある。掛金が全額所得控除になるので手数料がかかっても基本的にメリットはあるが、あまり高いとデメリットが上回ることがあるので、金融機関を選ぶ際は気をつけたい。

iDeCoの引出制限は年齢で決まっており、60歳未満は原則としてiDeCo自体の解約や現金化ができない。掛金の引落を止めて積立を休止することはできるが引出はできず、その間も毎月の手数料はかかる。60歳までの加入期間が10年に満たない場合、加入期間に応じて受取開始年齢が繰り下げられることも知っておきたい。

加入期間 受給開始年齢
10年以上 60歳
8年以上10年未満 61歳
6年以上8年未満 62歳
4年以上6年未満 63歳
2年以上4年未満 64歳
1ヵ月以上2年未満 65歳

※「iDeCo公式サイト」より筆者作成

iDeCoは注意点があるものの、今後は65歳まで加入できるようにすることなどが検討されており、さらに使いやすい制度になる可能性がある(2020年3月時点)。

6-2.気軽に始めやすい「NISA(ニーサ)」

税制優遇口座としては、NISA(少額投資非課税制度)も利用価値が高い。iDeCoのように掛金を所得控除とすることはできないが、運用益が非課税になる点は同じだ。NISAは20歳以上であれば誰でも利用でき、引出制限もない。NISA口座に手数料もかからないため、iDeCoよりも気軽に使えるのではないだろうか。

NISA口座には、「一般NISA」と「つみたてNISA(積立NISA)」がある。主な違いは投資可能額、投資方法、非課税期間、投資対象だ。

投資可能額は、一般NISAは年間120万円まで、つみたてNISAは年間40万円までだ。一般NISAは基本的に自分のタイミングで投資するのに対し、つみたてNISAは毎月定額を積み立てる。運用益の非課税期間は投資を開始した年から数えて、一般NISAが5年間、つみたてNISAが20年間だ。その間の売却益や配当金、分配金には課税されない。投資対象は一般NISAが株式や投資信託、ETF、REITなどと幅広く、つみたてNISAは一定の基準をクリアした投資信託とETFに投資する。

  一般NISA つみたてNISA
投資可能額 年間120万円
(総額600万円まで)
年間40万円
(総額800万円まで)
投資方法 都度
(積立設定可)
積立
(特定月に増額可)
非課税期間 最長5年間 最長20年間
利用開始可能期間 2014~2023年 2018~2037年
投資対象 上場株式
株式投資信託
ETF(上場投資信託)
REIT(不動産投資信託)
ETN(上場投資証券)
新株予約権付社債(ワラント債)
一定の基準のクリアした
長期投資に向く投資信託とETF
(上場投資信託)
口座開設可能数 どちらか1人1口座

※金融庁「NISA特設ウェブサイト」より筆者作成

一般NISAとつみたてNISAは、同時には利用できない。どちらを使うべきかは、自分がどんな資産運用をしたいかによって変わる。

なお、一般NISAもつみたてNISAも今後改正が予定されている。それぞれ利用開始可能期間が5年延長されるが、一般NISAは制度が複雑化するかもしれない。改正後の一般NISAは2階建ての制度になり、1階部分で積立投資をした場合に限り、2階部分の投資枠を利用できるようになる予定だ(2020年3月時点)。

制度が改正されてもNISAノ基本設計は大きく変わらないので、自分の資産運用スタイルに合うほうを選べばいいだろう。

6-3.iDeCo(イデコ)とNISA(ニーサ)は目的に応じて使い分ける

iDeCoもNISAもメリットの大きい制度なので両方とも活用したいが、使い分ける場合は目的を考えて利用しよう。それぞれの特徴から使い分けを検討してみたい。

  iDeCo NISA
引出制限 60歳未満は原則不可 いつでも引出可能
掛金の所得控除 あり なし
運用益非課税 あり あり
口座手数料 あり なし
利用目的 老後資金作り
節税したい
お得に積立をしたい
老後資金以外の資産形成
資産運用を始めてみたい
株式投資を投資したい

(※筆者作成)

iDeCoとNISAそれぞれの特徴から、上記のような利用目的が考えられる。基本的にiDeCoは老後資金の準備、NISAはそれ以外の資金準備にも適している。これらの口座を活用すれば、効果的に資産運用ができるだけでなく、普段使っている口座と分けて目的ごとに管理できるはずだ。

7.資産運用は目的を明確にすることで方向性が定まる

資産運用は最初にその目的を決めることが最も大切だ。目的がはっきりすれば、取るべきリスクがわかり、どのような金融商品や制度を使えばいいかが見えてくる。大切な運用資金だからこそ、目的を明確にした上で資産運用を始めてほしい。

文・國村功志(資産形成FP)/MONEY TIMES

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