(本記事は、山田 美樹氏の著書『外資系で学んだすごい働き方』プレジデント社の中から一部を抜粋・編集しています)
キャリアは自分でデザインしていく
世界で通用するビジネスプロフェッショナルに必須のマインドセットは、「キャリアは自分で作っていく」ということです。「次にこういう仕事を担当したい。そのためにこんなスキルを身につけた。だから新プロジェクトのメンバーにしてほしい」などと会社側に積極的にアピールしていく必要があります。
かつての日本企業では、人事が社員のキャリアを作ってくれ、人事異動に従っていくだけで自然と専門分野ができて、キャリアが形成されるという面もありました。
しかし、昨今の人事異動は、「人が不足しているところに補充する、しかも突然辞令が出る」ケースがほとんどで、社員のキャリア形成が熟考されていない場合もあります。魅力的なポジションが空いても、社内の人を抜擢せずに、社外から即戦力になる経験者を採用することも珍しくなくなっています。
人事制度も、仕事の難易度やポジションによって給与が決まることが当たり前になってきたので、同じ仕事を何年も続けている場合、大幅な昇給は見込めません。
人事異動の多い会社の場合は要注意です。割り当てられた仕事だけをこなして、進むべき道を意識せずに働き続けると、50歳近くになっても入社当時にイメージしていたようなポジションにつける見込みは薄く、収入も上がっていない状況が想定されます。さてどうしようか……と、その時に焦っても手遅れです。
流れに任せるだけでは、やりがいのある仕事はできず、収入は上がらない。それどころか給料が下がり始め、ポジションも上がらないという不本意なキャリアを歩まざるをえないことになってしまいます。会社から与えられた目の前の仕事を頑張ってこなすだけでは、キャリア漂流民になるリスクが高まります。
「私はこういうスキルを磨いて、この分野でこんなキャリアを目指す」という目標、キャリアビジョンを持って、あらかじめ戦略を立てて実行することが重要です。
そのために必要なスキルを習得し、戦略を持って経験を積んでいく。社内で異動を希望する、転職するなどして働く環境を変えながら、主体的にキャリアを作っていく必要がある。このように発想を切り替えるべきです。
フラットな世界観でグローバルに働く意識を持つ
ビジネスプロフェッショナルとは、「グローバルに通用する人材」。そう聞くと、何か特別な人のように思えるかもしれません。日本を飛び出して海外で働いている人材と解釈する人もいるでしょう。でも実際は、どこの国で働いているかはあまり関係ありません。
私はこれまでに、複数の外資系企業で働いてきましたが、ベースとなる職場の多くは日本でした。案件ごとに短期出張を頻繁に繰り返したり、数カ月のみ海外に滞在するなど、機会があれば、国境をひょいとまたいで自らが移動していくような働き方をしていました。または日本にいながら、グローバルな働き方を実践していました。
コンサルティング会社の日本支社でプロジェクトマネージャーとして働いていた時は、日本で、アジア各国や欧米にいるプロジェクトメンバーに電話会議(テレコン)やメールで、指示を出したり、仕事の進捗状況をチェックしたり、方針を出すような仕事をしていました。加えて、日本にいながらにして、クライアント企業のグローバル戦略やポリシーに関わる提案書や、今後の全社方針にインパクトを与えるようなレポートを英語で作成し、それが全世界のレファレンス(参照資料)として使用されることもあり、グローバルインパクトのある仕事をしていました。
「グローバルに働く」と聞くと、日本を飛び出さないと難しいのではないかと誤解している人も多いですが、日本にいてもグローバルな働き方はできます。どこにいるかではなく、働き方、インパクトの出し方の問題なのです。
世界のグローバル企業で働くビジネスプロフェッショナルは、みんな同じ意識で働いています。専門的なスキルを持ってプロフェッショナルとしての実力を生かし、世界のどこでも、誰とでも働ける人、世界のどこでも働く意識のある人、グローバルレベルのインパクトを普通に出す人が、「グローバル人材」です。
グローバル人材は世界がフラットなのです。
「日本を飛び出して世界へ、それが王道」ではなく、「日本を脱出して、アジアで頭角を現してそのあとは欧米で」といった地区予選を勝ち上がっていく感覚でもない。
プロフェッショナルとしての実力を発揮できる職場であれば、アメリカでもアジアでも南米でも欧州でも日本でも関係なく、働く場所として考える。もちろん治安や環境などは考慮するでしょうが、〝どこでも働いていく〞というマインドセットです。
グローバル人材=英語が堪能な人ということでもありません。
ただし、世界各地にいるメンバーと仕事をするには、問題解決力や方針決定力、コミュニケーション力といった基礎スキルが必要になっていきます。コミュニケーションの一つとして英語力も当然必要です。ですが、英語力だけがあってもグローバルな人材ではなく、大前提として世界で通用する専門スキルやビジネス経験が必要です。
英語力が足りなくてグローバル人材になれないというのであれば、必要な「レベル」の英語力のみを身につければいいと世界のビジネスプロフェッショナルは考えています(英語力については7章で紹介します)。
上智大学比較文化学部卒業後、オックスフォード大学大学院社会人類学修士(M.Phil)を経て、欧州系戦略コンサルティングファームCVA、グローバル会計事務所Deloitteに勤務。その後、ロンドンビジネススクールにてMBAを取得し、組織・人事領域を専門とするコンサルティングファーム、ワトソンワイアット(現Willis Towers Watson)に入社。これまで、大手企業を中心に15年以上、100社以上の経営戦略を実現する組織と、個人のミッションを実現するキャリアの構築、ハイパフォーマンス人材の発掘・評価を支援。現在は、大手外資系ヘルスケア企業にて、社内の人事戦略立案、人事課題の解決に従事。共著に、『攻めと守りのブランド経営戦略』(税務経理協会)。GCDFキャリアカウンセラー(Global Career DevelopmentFacilitator)、認定レジリエンストレーニング講師。寄稿、講演 多数。同書が初の単著。
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