新型コロナウイルスの感染拡大が加速しています。我が国は、欧米諸国に比べると絶対数・増加数ともに低水準ですが、足元では大都市での増加が目立っており、感染爆発への危機が高まっています。東京株式市場では、株価が一時落ち着く場面もありましたが、4月に入り感染爆発への懸念から不安定な展開となっています。

こうした中、株式市場では院内感染を防ぐ「遠隔医療」や新型コロナウイルス撃退につながる「治療薬」への期待が高まっています。そこで、今回の「日本株投資戦略」では、株式市場が注目する「遠隔医療」と「治療薬」関連銘柄を整理してみました。

「新型コロナウイルス」克服を!?~「遠隔医療」と「治療薬」関連銘柄はコチラ

日本株投資戦略
(画像=PIXTA)

新型コロナウイルスの感染拡大が加速しています。世界の感染者数(カッコ内は死亡者数)は2月末に約8.5万人(2,925人)でしたが、3月末には80万人弱(37,888人)、4/3(金)には約100万人(約5万人)に急増しました。イタリアなどの欧州諸国や米国での感染拡大が深刻で、このうち米国では、2月末にはほぼゼロに近かった感染者数が4/3(金)には約24.4万人(5千人超)に増えてしまいました。

我が国でも、新型コロナウイルス感染者数(クルーズ船を除く)は2月末の242人(5人)から、4/2(木)には2,644人(71人)に増えています。欧米諸国に比べると絶対数・増加数ともに低水準ですが、足元では東京など大都市での増加が目立ち、感染爆発への危機が高まっており、東京などで都市封鎖が検討される状況になっています。これらを受け、東京株式市場では、株価が一時落ち着く場面もありましたが、4月に入り感染爆発への懸念から不安定な展開となっています。

足元、国内でも感染爆発の懸念が強まっているのは「院内感染」が大きな要因と考えられます。また、安倍首相は「世界の恐怖は決定的な治療薬やワクチンがないため」といった趣旨の発言をしています。これらから、株式市場では院内感染を防ぐ「遠隔医療」や新型コロナウイルス撃退につながる「治療薬」への期待が強まっています。そこで、今回の「日本株投資戦略」では、株式市場が注目する「遠隔医療」と「治療薬」関連銘柄を整理してみました。

株式市場では、経済や社会の動きをにらんだ数多くの投資テーマが注目されています。それらの投資テーマに沿った銘柄はどのようなものがあるのか、調べて売買に役立てるには、SBI証券の「テーマキラー!」が便利だと思います。

流行りのテーマや、注目の技術、息の長いロングランテーマなど、気に入ったテーマを選んだら、あとは数回クリックするだけで購入が完了します。 毎月、新しいテーマが公開されますので、トレンドチェックにもお役立てください。

表1の銘柄は、そんな「テーマキラー!」を使い、「今月の新着テーマ」から「遠隔医療」および「ワクチン」で掲載されている銘柄をご紹介しました。東証1部の銘柄で、最近報道等で記事が見られる銘柄に絞っています。なお、直近決算で赤字計上等により、投資評価上注意が必要とみられる銘柄は除いています。

「遠隔医療」と「治療薬」関連銘柄
(画像=SBI証券)

表1 「遠隔医療」と「治療薬」関連銘柄はコチラ
コード / 銘柄 / 株価(A)(4/2) / 株価(B)(2月末) / 騰落率(A)←(B)
< 4974> / タカラバイオ / 2,185 / 1,868 / 17.0%
< 2413> / エムスリー / 3,130 / 2,786 / 12.3%
< 4543> / テルモ / 3,605 / 3,478 / 3.7%
< 3694> / ※オプティム / 1,971 / 3,805 / 3.6%
< 4901> / 富士フイルム / 5,425 / 5,277 / 2.8%
< 8086> / ニプロ / 1,142 / 1,150 / -0.7%
< 9735> / セコム / 8,347 / 8,575 / -2.7%
< 4502 / 武田薬品 / 3,142 / 3,763 / -16.5%
< 4061> / デンカ / 2,081 / 2,728 / -23.7%

BloombergデータをもとにSBI証券が作成。オプティム(3694)は3月末付で1:2の株式分割を実施していますので、騰落率はそれを加味した実質ベースで計算しています。掲載の順番は株価騰落率の順になっています。

「遠隔医療」と「治療薬」関連銘柄の注目ポイント

前項でご説明したように、安倍首相は「世界の恐怖は決定的な治療薬やワクチンがないため」といった趣旨の発言をしています。

そうした中、株式市場のみならず政府からも高い注目を集めているのが富士フイルム(4901)です。子会社の富山化学が開発した抗インフルエンザ治療薬「アビガン」が、新型コロナウイルスに感染した肺炎患者の治療に有望視されているためです。3/26(木)には中国の武漢大学がこの肺炎患者の治療に有効との研究成果を発表し、さらに注目が集まりました。

この薬は、妊婦に対しては胎児に奇形が生じるリスクがあるため、一般に流通せず、インフルエンザ治療のために政府が200万人分備蓄しており、すぐさま大量に供給できるのも魅力になっています。なお、4/3(金)には、「アビガン」の増産に必要な原料の供給をデンカ(4061)から行うとの報道があり、同社株がストップ高水準まで買われました。同社は子会社による新型コロナウイルス向け簡易検査キットについて、試作品を作成中であることも報道されています。

図1 富士フイルム(4901)・週足

図1 富士フイルム(4901)・週足
(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成)

我が国の代表的な製薬企業である武田薬品(4502)は、新型コロナウイルスに感染した患者に対する治療薬として抗 SARS-CoV-2ポリクローナル高免疫グロブリン(H-IG)の開発を開始することを発表しています。同社は、新型コロナウイルスに対する取り組みをまとめて紹介する特設ページを開設しています。

また、タカラバイオ(4974)は、大阪大学の森下教授と創薬メーカーであるアンジェス(4563)が進める新型コロナウイルス予防用DNAワクチンの開発に参加することを発表しています。

図2 タカラバイオ(4974)・週足

図2 タカラバイオ(4974)・週足
(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成)

なお、治療薬やワクチンの領域ではないですが、医療機器大手であるテルモ(4543)は重症肺炎患者の治療に使う人工心肺装置(ECMO:体外に血液を出し人工肺で酸素を供給して体に戻す装置)の増産を決めています。この報道で、同社が国内シェア7割であることが確認されています。

さて、新型コロナウイルスの感染拡大で問題となっているのが「院内感染」や「医療崩壊」です。そのため、医者が直接診療しなくとも、オンラインで診療等が行える遠隔医療の規制緩和が叫ばれるようになってきました。

糖尿病や高血圧などの患者は病院に継続的に通う必要がありますが、新型コロナウイルスがこうした病気をもつ人に感染すると重篤化するリスクが高まるとされています。また、医師・看護師にとっても、直接診察する必要のないケースに遠隔診療で対応できれば、感染のリスクを下げることができます。

医療とネットの融合という意味では、製薬企業向けマーケティング支援のエムスリー(2413)はその草分け的存在といえます。同社はLINE(3938)と組んで、オンライン診療事業の確立を目指します。また、オプティム(3694)は同社がもつリモートマネジメントテクノロジーを、MRT(6034)の医療・医師情報等と結び付け、遠隔医療システムである「ポケットドクター」を提供しています。

図3 エムスリー(2413)・週足

図3 エムスリー(2413)・週足
(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成)

同様にニプロ(8086)は、遠隔診療サポート機能付き見守り支援システム「ニプロハートライン」の活用を進めています。機械警備大手のセコム(9735)も遠隔医療システムの提供を行っています。

※以上太字は表1で紹介の東証1部銘柄

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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