投資信託を始めるにあたって、どれくらい儲かるのかは最も気になる点だろう。たとえば投資信託で月5万円を儲けるためには、いくら投資すればいいのだろうか。投資初心者にとって実現可能性は高いのだろうか。投資信託で儲けを出したいのなら押さえておくべきキーワードは3つだ。
投資信託で月5万円の儲けを出すための必要投資額は1,000万円以上
投資信託で月5万円の利益を得るための難易度は投資金額によって大きく異なる。投資金額が100万円と1億円の場合では、月5万円の利益を得るための労力の違いは明らかだろう。前者は年率60%の運用成績が必要であることに対し、後者は年率0.6%の運用成績で達成できてしまう。
当たり前の話であるが、月の利益額は次の式によって求められる。話を単純化するために、税金や運用成績による投資元本の増減は考慮していない。
利益額(月5万円)=投資金額×運用実績(年率%)÷12ヵ月
投資金額を決めるためには、運用実績を考えなければならない。
投資信託で月5万円の儲けを出すための期待リターン
投資信託の運用実績は結果であるため、運用実績の予想値を入れる必要がある。もちろん好きな数値を入れればよいわけではなく、投資した資産から得られる可能性のある数値を入れなければならない。
ここで期待リターンという数値を活用する必要がある。期待リターンとは、ある資産における将来獲得できる平均的なリターンのことを指す。
期待リターンの求め方は複雑であるが、日本の年金資産を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用している値を紹介しよう。GPIFが2018年度のポートフォリオ検証で使用した資産別の期待リターンは次の通りだ。(2018年度の「業務概況書」を参照)
国内債券……年率-1.0%
国内株式……年率3.0%
外国債券……年率1.2%
外国株式……年率5.6%
この期待リターンを参考に投資金額を考えていこう。
投資信託で月5万円の儲けを出すためには毎月1,000万円以上の資金が必要
GPIFの基準とする期待リターンを先程の公式に当てはめてみると、投資信託で月5万円を得るための必要投資額は各資産で次のようになる。
国内債券……期待リターンがマイナスのため、計算不可
国内株式……2,000万円
外国債券……5,000万円
外国株式……約1,071万円
投資信託で外国株式のみに投資をしても1,000万円以上の資金が必要だ。投資信託で月5万円の儲けを出すための難易度がつかめただろうか。
投資信託で期待リターンの高い資産はリスクも高い
期待リターンはあくまでも現状で想定される平均的なリターンである。投資信託の相場環境によっては、想定した期待リターンが得られない可能性もある。投資信託で期待リターンが高い資産はそれに応じてリスクも高くなる傾向がある。リスクとは投資資産の振れ幅であり、標準偏差という数値を用いて予想される。
同GPIFの資料によると、外国株式の標準偏差は25.99%である。これは外国株式が期待リターンを基準に上下25.99%の範囲に収まる可能性が高いことを示す。外国株式の期待リターンが年率5.6%を当てはめると、外国株式は+31.59%から-20.39%の運用実績を残す可能性が高いということだ。
ここまで振れ幅が大きいと、投資信託で月5万円の儲けを出すというような利益目標を追い求めるのもなかなか難しいかもしれない。
投資信託で儲けを出すための3つのキーワード
ここまでの話で投資信託は儲からないと感じた人もいるだろう。しかしそれは間違いだ。投資信託の儲けを考えるには「長期」、「複利効果」、「積立投資」という3つのキーワードが重要なのだ。
投資信託の儲けは「長期」で考える
投資信託の儲けは短期間で考えるべきではない。毎月5万円を儲けたいというような短期的な目標を立ててしまうと、相場に踊らされてしまう。
投資信託の儲けを考える場合には、長期で考える必要がある。そもそも投資信託とは、元本保証がなく、相場環境によって資産は上下する。短期的な利益目標があったとしても、その期間の相場環境が悪ければ、投資信託で儲けを出すのは至難の業である。
基本的に投資信託の相場は上下するものであり、投資期間が短いほど、その動きを読むのは難しくなる。投資信託に投資を行う場合には、長期での投資を念頭に置き、長期的なトレンドで商品選択を行うべきだろう。
投資信託で儲けを出すために「複利効果」を最大限活用する
投資信託の儲けは表面的なリターンである基準価額の騰落率も重要であるが、複利の効果を活かすという視点も極めて重要だ。複利効果とは、投資収益を再投資することで、本来の元本だけでなく再投資分にも運用益が加算され、資産が雪だるま式に膨らんでいくことである。
投資信託の場合、商品内でこの複利効果が得られる。また分配金が出た場合にも、その資金を再投資に回せば、更に複利効果が得られる。投資資産が値上がりしていれば、複利効果は投資期間に比例して大きくなるため、長期投資との相性も良いのである。
先ほどの例を参考にすれば、1,071万円を年率5.6%のリターンで運用すれば月5万円の利益になる。これを30年間このままで運用できた場合、合計の運用益は1,800万円になる。一方で同じ1,071万円の投資元本を年率5.6%のリターンで年1回再投資した場合、合計の運用益は約4,420万円となる。複利効果によって、投資信託の儲けはここまで大きく変わるのだ。
短期の運用益を重視した毎月分配型の投資信託もあるが、投資の効率から言えば、複利効果が得られないため、非効率な投資手法である。
投資信託で儲けを出すために「積立投資」も有効
投資信託の儲けを考える場合、積立投資も有効な投資手法である。積立投資は多くの投資資金を一度に用意できないという場合はもちろんだが、資金に余裕がある場合にも効果を発揮する。投資信託の積立投資が購入時期の分散という効果を発揮するためだ。
投資の大原則は安く買って高く売ることである。しかし相場の中で買い時を見極めることは非常に困難だ。
投資信託では高い時期には口数を少なく、安い時期には口数を多く購入できる。積立投資で毎月一定額を購入するというルールを設ければ、購入時期が分散され購入価格が平準化される。これをドルコスト平均法と呼ぶ。投資信託の長期投資において、高値掴みを避けるための非常に有用な投資手法である。
投資信託で儲けたいなら「長期」、「複利効果」、「積立投資」を押さえよう
投資信託で儲けを出すには「長期」というキーワードを軸に、「複利効果」と「積立投資」のメリットを最大限に享受する方法を考えるべきである。投資信託はこの3つのキーワードと非常に相性の良い投資資産なのだ。
「長期」というキーワードで見れば、投資対象の分散によるリスクの分散が行われている。「複利効果」では運用資産内における再投資効果だけでなく、分配金を簡単に再投資に回せる。「積立投資」では、少額での購入が可能であり金額指定で投資ができる点も重要だ。
投資信託で儲けを考えるときには、こうした商品の特性を十分に理解することが重要だ。短期的な目標の設定はギャンブルと同じであり、特に投資初心者は避けるべきだろう。
文・樋口壮一(金融ライター)/MONEY TIMES
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