ネット証券の口座は一人でいくつも開設可能だが、複数の口座を作る前にメリット・デメリットを十分に理解したうえで口座を開設したほうがいい。ネット証券で複数口座を持っていることによって、知らない間に損をする可能性もあるからだ。自分の投資スタイルと照らし合わせて考えてほしい。
目次
1,複数のネット証券口座を作る6つのデメリット
2,複数のネット証券口座を作る3つのメリット
3,ネット証券大手5社の特徴を比較
4,おすすめの組み合わせ3パターン
5,ネット証券のメリット・デメリットを理解するのが大事
1,複数のネット証券口座を作る6つのデメリット――税金、確定進行、アカウント管理など
投資に慣れてくると、ネット証券の口座を複数作ることを検討する人もいるだろう。申し込む前にデメリットはしっかりと把握しておくべきだ。
デメリット1,税金を払いすぎる可能性がある
ネット証券で複数の口座を作った場合には税金を払いすぎる可能性がある。証券会社では税金の計算の手間を省くことが可能な特定口座というものがある。特定口座では証券会社によって自動的に損益が計算される制度だ。特定口座の源泉徴収ありにすれば納税も自動的に行われる便利な口座だ。
ただ特定口座を複数の証券会社で保有していた場合には問題が起こる。例えば源泉徴収ありの特定口座をA証券とB証券で開設していたとする。A証券で年間の損失が100万円、B証券で年間の利益が100万円の場合、A、B証券での損益を通算すると利益は0円だ。しかし特定口座は一つの口座の利益のみで損益の計算が行われるため、A証券とB証券での損益は通算されず、B証券の100万円の利益に対して課税されてしまう。
デメリット2,確定申告が必要な場合がある
複数の口座を持っている場合には、税金を払いすぎないために特定口座の源泉徴収なしや、一般口座で売買する必要がある。しかしその場合には確定申告が必要となる場合がある。確定申告をすること自体に手間がかかるうえ、確定申告によっては税金や健康保険などの金額が上がる場合もあるので注意が必要だ。
デメリット3,アカウント管理が大変
ネット証券の口座の数が多くなればなるほどアカウントの数やパスワードの数も多くなる。定期的にIDやパスワードを変更することが推奨されていることもあり、アカウント数が多すぎると管理が困難となる。また引っ越しや結婚などで住所や名字が変わった場合も、口座を開設したすべてのネット証券でアカウント情報の変更手続きをする必要がある。
デメリット4,資産管理が面倒
保有している株や投資信託の時価評価は毎日目まぐるしく変わる。資産を複数の口座に分散して所有している場合では、時価評価のチェックはそれぞれの口座をチェックする必要があり面倒。
デメリット5,売買に時間がかかる場合がある
複数の口座で売買を行なう場合、それぞれのネット証券ごとにログインする必要がある。口座数が多い場合はログインの作業や売買画面への移動だけでも時間がかかり、売買のタイミングを逃してしまう可能性がある。
デメリット6,メールやお知らせなどの確認が手間
ネット証券から送られてくるメールやお知らせの確認も手間だ。複数のネット証券で口座を開設している場合には数多くのメールやお知らせが送られてくる。確認作業だけでも時間が取られ、メールやお知らせが多すぎて大切なお知らせを見落としてしまう可能性もある。
2,複数のネット証券口座を作る3つのメリット――IPO当選確率が上がることも
もちろんメリットもある。そのメリットは各証券会社の長所を同時に享受できることや、システムトラブルなどの面で主に発揮される。
メリット1,ネット証券各社の強みを最大限に活用できる
ネット証券では各社が独自のサービスを展開しているところが多くそれぞれに強みがある。例えば取引手数料が安いネット証券もあれば、四季報や日経新聞が無料で閲覧できる、ポイントが付与される、取引ツールが優れているなどがある。
そのため複数のネット証券に口座を開設していれば、取引手数料を抑えたい場合はこのネット証券、情報を得たい場合にはこのネット証券、取引ツールが使いやすいところはこのネット証券といった具合に、ネット証券各社の強みによって使い分けられるのだ。
メリット2,システムトラブルに強い
ネット証券に複数口座を所有することでシステムトラブルにも強くなる。まれにネット証券でシステムトラブルが発生してログインや売買ができなくなる場合がある。ネット証券に複数の口座を持っていればシステムトラブルが起きていない他のネット証券で売買ができる。
メリット3,IPOの当選確率が上がる
複数の口座を持っているとIPOの当選確率も上がる。IPOの抽選は複数のネット証券で同時に申し込むことができるからだ。抽選もそれぞれのネット証券毎で実施されるため、より多くのネット証券で抽選に申し込めばそのぶん確率が上がる。運が良ければ複数のネット証券でIPOの当選も可能だ。
3,ネット証券大手5社の特徴を比較――複数口座を検討する前に確認したい各社の特徴
各証券会社の長所を同時に享受できることがメリットの1つだが、具体的にどんな長所があるのだろうか? 詳しく見ていこう。
主要ネット証券 各種サービス評価表
証券会社名 | 手数料 | IPO | 投資ツール | 外国株 |
SBI証券 | 〇 | 〇 | △ | 〇 |
楽天証券 | 〇 | × | 〇 | 〇 |
マネックス証券 | △ | 〇 | 〇 | 〇 |
松井証券 | △ | × | △ | × |
auカブコム証券 | △ | △ | 〇 | × |
SBI証券の特徴――個人投資家のIPO当選確率は証券業界No.1
ネット証券最大手のSBIの強みは、IPO取扱銘柄数と国内現物株式や米国株の取引手数料が業界最安水準であることだ。
2019年1~12月のIPO件数87件(REIT除く)のうち、SBI証券が取り扱ったIPOは82件と関与率は94.3%、証券業界全体で第1位だった。
楽天証券の特徴――豊富な情報量が自慢の「マーケットスピード」
ネット証券業界で楽天証券は、口座開設数や預かり資産残高などにおいてSBI証券に次ぐ規模を誇る。
国内現物株式や米国株の取引手数料は、SBI証券と並んで業界最安水準だ。
特徴的なのは、楽天証券のトレーディングツール「マーケットスピード」の機能性の高さと情報量の豊富さである。また、楽天グループの共通ポイントである「楽天ポイント」を使えることも大きなメリットと言えるだろう。取引で貯めたり、投資に使ったりできるので便利だ。
マネックス証券の特徴――米国株のメインストリーム
マネックス証券は1999年の創業以来、ネット証券の中でも夜間取引や貸株サービスなど、独自性と先進性のあるサービスを提供してきた。現在マネックス証券の代名詞となっているサービスは、米国株取引である。米国個別銘柄取扱銘柄数は3,328件(2020年4月1日現在)で、ネット証券の中ではダントツの第1位だ。
米国株国内取引手数料はネット証券最安水準、さらに米国株買付時の為替手数料無料キャンペーンも行っており、米国株取引には欠かせないネット証券と言えるだろう。
松井証券の特徴――トップレベルの「わかりやすさ」
創業100年を超える老舗証券会社でありながら、本格的インターネット取引や定額手数料体系、無期限信用取引などのサービスを証券業界でいち早く取り入れてきた。
松井証券の強みは、従来型のセールスを否定して、顧客中心主義の企業理念のもと、顧客サポートを徹底していることだ。わかりやすく見やすいWEBサイト、シンプルな料金体系などが魅力。50歳以上の顧客が全体の4割を超えているのも特徴である。
auカブコム証券の特徴――究極の顧客サービス、自動売買でリスク管理
auカブコム証券は、証券業界における自動売買のパイオニアだ。創業以来のコアコンセプトは、「リスク管理追求型サービス」。それを追求した結果が、主要ネット証券最多となる多彩な自動売買発注方式である。
特許を取得している逆指値注文、W指値注文、±指値注文のほか、時間指定注文、リレー注文などがあり、取引による損失を最小限に抑える仕組みが充実している。
4,おすすめの組み合わせ3パターンを紹介 外国株投資、手数料、IPO目当てで2口座持つなら?
ネット証券のツートップであるSBI証券または楽天証券ですでに口座を開設している投資家が、ネット証券でもう1つ口座を開設するなら、どこがいいだろうか。
投資家それぞれのニーズに合わせて、代表的なパターンを提案しよう。
外国株投資をしてみたい→SBI証券or楽天証券+マネックス証券
主要ネット証券5社で外国株を取り扱っているのは、SBI証券、楽天証券、マネックス証券の3社。SBI証券あるいは楽天証券でも外国株取引はできるが、とりわけ米国株取引に興味があれば、マネックス証券の口座は持っておきたい。
豊富な米国株取扱銘柄数や米国株取引にかかるコストの安さ、投資情報の豊富さなどで、他社を圧倒している。
とにかく手数料を安くしたい→SBI証券or楽天証券+松井証券or auカブコム証券
取引手数料が業界最安水準のSBI証券と楽天証券に次いで、手数料の安さが際立つのが松井証券。手数料体系は1日定額料金だけだが、国内現物株式の1日の約定代金合計額が50万円以下なら手数料は0円だ。少額取引が多いなら、松井証券は外せない。
auカブコム証券は、手数料無料のETFが豊富だ。さらに「シニア割」や「NISA割」、「auで株式割」などの手数料割引サービスも充実しているので、手数料を抑えたい人には役立つネット証券と言えるだろう。
IPOに挑戦したい→SBI証券or楽天証券+マネックス証券、auカブコム証券も
IPOに挑戦するなら、SBI証券の口座は必ず持っておきたい。楽天証券の口座を持っている人でも、IPOに挑戦したければ、IPO取扱銘柄数証券業界第1位のSBI証券にも口座を開設しておこう。
さらにIPO当選確率を上げたい場合は、マネックス証券の口座もあるといい。マネックス証券は、IPO取扱銘柄数がネット証券ではSBI証券に次いで多い。マネックス証券に配分されたIPO株は、すべてが一般投資家向けの抽選に充てられるため、当選確率が高い。
auカブコム証券では、同じ金融グループの三菱UFJモルガン・スタンレー証券が引き受けるIPO株が優先的に販売される。IPOの抽選回数を増やしたい人は、auカブコムも加えるといいだろう。
5,ネット証券のメリット・デメリットを理解するのが大事
今回はネット証券で複数の口座を作る際のメリット・デメリットを紹介したが、それぞれのネット証券の強みを最大限に活用できるというメリットは大きいだろう。どのようなメリット・デメリットがあるかを理解し、複数のネット証券で口座を開設しても失敗しないよう対策をしていただきたい。
文・MONEY TIMES編集部/MONEY TIMES
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