本の中から抜き書きして「知識の森」を作る

一方、自分の専門分野のインプットに関しては、とことん「深掘り」を行なう。

「やはり手始めは入門書でいいのですが、なるべく参考文献や引用の多い書籍を選ぶようにします。読み終わったら、今度は気になった箇所についての参考文献を読み、さらにその本に出てくる参考文献をたどっていく。こうして、知識という木をどんどん増やし、『森』を作っていく、という感覚です」

山口氏は手元にメモを常備し、読むべき文献の書名と出版社名をリスト化し、読み終わったものから消しているという。

「ある程度、木の本数が揃ってきたら、枝葉にも目を向けます。つまり、具体的な事例や印象的なエピソード等ですね。そこでよく行なうのが、印象的な個所の『抜き書き』です。1ページ以内の長さであれば、パソコンに打ち込んで記憶を強化します」

その際は、要約や書き換えを行なわず、忠実に抜き書くのがポイントだ。

「正しく理解できているかどうかわからない段階でこちらの解釈を挟むと、バイアスがかかってしまう可能性があるからです。句読点の位置や、『旧仮名遣い』などもそのまま再現します」

仮説を立ててから情報を集めていく

では、インプットした情報をもとに自分なりの意見や見解を持つにはどうすればいいのか。大事なのは「仮説」だという。

「あるテーマと向き合う際、誰しも事前になんらかのイメージや方向性を頭の中に持っているはずです。森を作る過程は、それを確認したり、適宜修正したりしながら仮説を強化する段階とも言えます」

仮説は、大中小の三段構造で成り立っているという。

「仮説と、それを裏づける情報、そして細部のエピソード。例えば『国民は消費税増税に慣れている』という仮説が『大』なら、それを下支えする『中』は、『事業所のうち何%がすでに導入に対応している』といった数的データです。『小』は、『行きつけのネイルサロンのスタッフも、10月に備えてすでに準備していると言っていた』などの、身近な話です。この三つが揃えば、説得力を持って自分の仮説を語ることができます。

ただ、専門分野でないことを語るなら『小』と『大』で事足りますし、そのほうが印象的な話ができます。一方、研究論文の執筆ならば『中』が必須。面白さには欠ける部分ですが、論文作成のためには意識的に集める必要があります。やっぱりここでも、アウトプットを意識して情報を集めることが大事なのです」