自分の興味や違和感から生まれる企画こそがヒットする

プロデュース力,佐久間宣行
(画像=THE21オンライン)

「マジ歌選手権」や「キス我慢選手権」などの名企画を生み出した『ゴッドタン』をはじめ、『ウレロ☆シリーズ』や『あちこちオードリー』など、テレビ東京(テレ東)の人気バラエティー番組を連発してきた名プロデューサーが、佐久間宣行氏だ。お笑い芸人やタレントの意外な魅力を引き出し、ブレイクさせることでも知られている。そのプロデュース力の秘密とは?

マーケティングよりも自分の内面にヒントがある

「お笑いバラエティー番組を作りたい」。1999年にテレビ東京に入社後、そんな希望を抱いた佐久間氏だったが、最初からうまくいったわけではないという。

「今でこそテレ東でも多くのバラエティー番組を放送していますが、僕が入社した当時は制作会社が作ったものを少し放送していただけで、局内にお笑い番組のノウハウを持っている人がいませんでした。自分で考えるしかなかったのですが、企画書を書いても面白くない。しばらくは1本も企画が通りませんでした」

そこから、どうやってヒット番組を連発するプロデューサーになれたのだろうか。

「簡単に言えば、自分が本当に観たい番組を作っているだけなんです。一つ意識しているのは、マーケティングによって売れ筋を追うのではなく、自分の内面に注目することです。自分の興味や違和感から企画を考えています。そうするようになってから、視聴者の方に楽しんでもらえる企画が生み出せるようになりました」

『ナミダメ』で気づいた企画で一番大切なこと

企画を考えるときに自分の内面に注目するようになったきっかけは、2001年、入社3年目に『ナミダメ』という番組を企画したことだ。

「この前年はシドニー五輪があって、とにかく世の中は感動尽くしでした。スポーツ選手は『感動を与えたい』と言い、応援している人々も口を揃えて『感動をありがとう』と言う。テレビではどのチャンネルでも感動系の番組がたくさん流れていました」

佐久間氏はそんな風潮に違和感を覚えていたという。

「皆が盛り上がっているのが、僕は『なんだか気持ち悪い』と思ってしまったのです。それをヒントに企画したのが『ナミダメ』でした。出演者の方に泣けるアイテムを使って泣いてもらい、たくさん泣いた人が賞金100万円を手にするという番組です。『泣くことなんて誰でも簡単にできますよ』と言いたかったんです」

世間一般の感覚と反するような企画を立てたわけだ。ところが、予想もしなかったことに、この『ナミダメ』が制作会社の団体の新人賞を受賞した。

「狙ったわけではないんですけどね。このときに気づいたのが、マジョリティに対する違和感をヒントにすると面白い企画が生まれる、ということ。多数派に対するカウンターとなって受け入れられるのでしょう。思えば僕自身、学生時代から、一部の人しか好まないような作品が好きで、それらが辛い時期の心の支えになっていました。僕みたいな感覚の人は、今も一定数いるのかもしれないと思ったのです」