金融商品の一つに債券(国債や地方債、新興国債、社債など)があります。しかし株式や投資信託と比べて今一つ積極的に債券を活用しようと考えている人は少ないのではないでしょうか。投資の原則である分散投資を考えるうえで債券を投資商品としてポートフォリオに組み込むことは大切です。しかし債券の仕組みをある程度理解していないと売り時や暴落時などの対処方法が分かりません。

そこで本記事では債券投資と長期金利について分かりやすく解説します。

経済全体の中での債券金利と日本銀行の政策

不動産投資
(画像=sum41/stock.adobe.com)

金利は、経済の体温といわれ日本銀行が金融政策で市場金利をコントロールしようとする理由は、経済が悪化した場合、体温を下げる治療をしていることになります。ちなみに金利はすべての金融商品の値付け元となる指標といっても過言ではありません。例えばローンや預金、株式、外国為替、スワップ、デリバティブなど金利が絡まない商品はほとんどないでしょう。

また金融のプロたちは金利を%では表現せずbp(ベーシス・ポイント)で表します。「1%=100bp」のため25bp=0.25%です。一般的に金利が1%動くということは、巨大なインパクトとなるため普段から100分の1単位で呼びます。債券は証券業界でFixed Incomeと呼ばれておりその名の通り金融商品としては固定された利付商品です。しかし売買価格はマーケットで変動します。

そのため金融機関の債券ディーラーたちは、この価格差を狙って国債などを売買しているのです。この場面では、株式ディーラーと同じことを行っています。債券価格は額面100円を基準として表示され2020年5月13日における引値の日本国10年物国債の利回りは-0.005%でした。2020年5月14日時点で個人が購入できる新発10年物金利変動国債は、第122回債です。

新発債として出されるときは、そのときの金利近辺のクーポンレートが付けられます。2020年5月11日発行の10年物価連動国債(第25回)の表面利率は0.2%です。ここで金利と価格の関係を見てみましょう。

  • 金利が下がると国債の価格は上がる
  • 金利が上がると国債の価格は下がる

例えば第○回における0.2%の金利の国債が売り出された後、金利が上がって第△回の新発債の表面金利が0.3%になった場合、先に売り出された○回国債の値段はどうなるでしょうか。期間が短縮されたことを除けば○回より△回の国債のほうが価値としてはあるわけです。その場合、○回の国債の価値は下がります。

このように満期まで保有すれば当初の金利は保証されますが、途中換金すれば価格変動にさらされる商品なのです。

いろいろな債券保有リスク

債券は株式に比べるとリスクは低いものの価格変動リスクがあります。一般には金利が上下する幅は短期のほうが大きい傾向です。しかし同じ大きさだけ金利が動く場合は、以下の3つのような状態ほど価格変動幅が大きくなりリスクも高くなります。

1:債券の保有リスクが長い
2:クーポンが低い
3:低格付け

なお3の格付けとは、民間の格付け会社が市場に発行されている債券をランク分けして債券の「発行体」(国・地方公共団体・事業会社)の信用度の目安を発表しています。

Withコロナ時代の政策金利

2020年に入ってから新型コロナウィルス感染が拡大したため、世界経済は大混乱に陥っています。これに対応するため、各国の中央銀行は、金利引き下げに動いている状態です。2020年4月27日の金融政策決定会合で日本銀行は、お金の流れを潤滑にし企業の資金繰りを支えるために今まであった国債の買入限度額(年間約80兆円)を撤廃しました。

これは中央銀行が政府の財政赤字を穴埋めすることになるため、財政規律が緩むことを懸念する声が上がっています。日本銀行に限らずアメリカFRBや欧州中央銀行ECBも、なりふり構わない金融政策を打ち出しているのが現状です。例えばFRBのバランスシートは2020年4月22日時点で約6兆6,200億米ドル(1米ドル106円換算で約702兆円)という巨体になってしまいました。

また先進国の金利もほとんど0%近辺に張り付いている状態です。以下のグラフは、ECBやFRB、日本銀行のバランスシートが、それぞれの国、地域の名目GDPに対しての割合を示したものです。

YANUSY編集部
(画像=YANUSY編集部)

上記の表から日本銀行におけるGDPに対するバランスシートの大きさが突出していることが分かります。この意味することは「日本銀行がFRB、ECBに先行して国債などの買入を行いバランスシートの巨大化を進めている」ということです。その日本の経済の現状を見てみると物価、金利ともにほとんどフラットな状態が続いています。

したがって今後、FRB、ECBとも国債などの資産の買入を進めていっても「金利や物価の上昇は起きないのではないか」ということが予想されます。その場合、先進国の金利はどこも0%近辺に張り付く状態が今後も続くことが予想されるでしょう。

金利が私たちの生活に具体的にどう影響してくるか

これらを踏まえると今後の私たちの生活に関連してくる金利はどのように変化していくのでしょうか。

1.住宅ローン
以前にも増して金利のフラット化がある一定期間にわたり継続する可能性があります。変動金利の元となる短期プライムレートも動かない状態が続くとしばらくはこの低金利状態が継続する可能性が高いでしょう。

2.外国債券への投資 特に外貨建て一時払い保険など
生命保険においては、少しでも有利な金利を求めて外貨建て(特に米ドル建て)の商品が注目を浴びていました。しかしFRBも大規模な金融緩和策を続ける限り今までのような2%を超える予定利率の商品が出てくることは考えづらく円建てや外貨建ての商品の金利差がなくなる方向に進むのではないでしょうか。

このように従前のマクロ経済の常識が通用しない時代へ突入しているのが現在の状況なのです。先が読めない金融情勢の中ではより一層債券をポートフォリオに組み込みながら運用することの重要性が理解できるのではないでしょうか。(提供:YANUSY

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