トランプ支持率が危険水域
トランプ米大統領の支持率が、再選の危ぶまれる水準まで低下している。マーケットにはまだはっきりとした影響が表れていないものの、政権交代シナリオを描く向きは増えつつある。対抗馬のバイデン前副大統領=写真=への意識がマーケットで強まりそうだ。
全米に広がった人種差別への抗議デモを通じ、トランプ大統領の求心力は一段と落ち込んだ。現地の一部メディアが調査会社に委託して行った直近の世論調査では、支持率は昨年1月以降で最低の38%まで下がった(不支持率は57%)。
米政治系サイトのリアル・クリア・ポリティクスによれば、全米でトランプ大統領を選好する人の割合は41・7%と、バイデン前副大統領の49・8%を8ポイント超も下回っている(9日時点)。米大統領選は現職が圧倒的に強いという経験則があるものの、陣営は危機感を募らせている。
11月3日の投票日までまだ5カ月あり、トランプ大統領不利の構図はいずれかの時点で転換する可能性もある。しかし、新型コロナウイルスに対する初動の失敗に続き、白人警官による黒人暴行死をめぐる一連の言動で招いた分断は根深そうだ。「バイデン大統領」誕生の線は簡単には消えない。
「富裕層増税論」も、ウォーレン起用は?
仮にトランプ大統領の再選が阻まれ、共和党に代わって民主党が政権を奪取した場合、市場がまず警戒するのが増税だ。
トランプ政権は新型コロナで落ち込んだ経済の復旧へ向け巨費を投じた。景気回復にメドが立ち次第、「大きな政府」を好む民主党内では財政立て直しのための富裕層への課税強化議論が活発化する見通し。もっとも、そうなるまでには1~2年を要することが想定される。
一方、奔放な言動でたびたび市場を混乱させてきたとはいえ、トランプ大統領は基本的に株式マーケットへの配慮が手厚い。バイデン大統領誕生の場合、少なくとも短期的に株価に逆風が吹くと考えられる。また、新たな副大統領に左派のウォーレン上院議員が起用されるようなことがあれば、ウォール街は嫌気するだろう。
政策面では、トランプ大統領が離脱したTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)やパリ協定への復帰、医療保険制度改革「オバマケア」の再構築といった要素が物色材料になりそうだ。
TPPに絡んでは、日米両市場で農機を展開するクボタ(6326)ややまびこ(6250)が有力。また、食肉卸の林兼産業(2286)や、農薬の日本農薬(4997)などもこのテーマで思惑が向かいやすい。また、商船三井(9104)など海運株も注目される。
パリ協定から離脱したように環境問題を軽視する傾向のあるトランプ大統領が退くことは、CO2(二酸化炭素)削減や再生エネルギーなどの関連銘柄にも追い風だ。ボイラーの三浦工業(6005)は米国で展開。ソーラーパネルの製造装置はエヌ・ピー・シー(6255・M)、穴株としては、太陽光発電システムの田淵電機を擁するダイヤモンドエレクトリックホールディングス(6699)が浮上する。
このほか、医療保険が普及すれば、検体検査機器のシスメックス(6869)やオリンパス(7733)、医療機器のテルモ(4543)などにはプラス影響もありそうだ。また、予防医療拡充の観点から、ワクチンを製造する製薬会社やベンチャーにも商機が広がる。足元で物色人気に沸くテラ(2191・JQ)をはじめ、バイオベンチャーが一段と盛り上がる公算だ。(6月12日株式新聞掲載記事)
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