2020年4月時点で、金融庁が選んだつみたてNISA銘柄は181本あります。積立投資を始めようと考えたとき、何を基準にいくつ選んだらよいのでしょうか。今回はそのヒントを紹介します。

つみたてNISAは銘柄選びが重要な理由

積立NISA,銘柄
(画像=PIXTA)

つみたてNISAで購入する投資信託を選ぶ前に、注意しておかなければならない点があります。それは、つみたてNISAは銘柄の変更に制限があることです。

2017年に103本でスタートして以降、つみたてNISAの対象商品は増えつつありますが、後から出てきた銘柄に変更したい場合はどうしたらよいのでしょうか。また、新型コロナウイルスの問題などで積み立てている投資信託・ETFが大きく値下がりしてしまったら、積み立てをやめたり、ほかの商品に変更したりできるのでしょうか。

結論から言うと、変更は可能で、積み立てていた投資信託・ETFの新規購入をストップして、ほかの投資信託・ETFの積み立てをスタートすることになります。現在保有している投資信託を売却して、その資金でほかの投資信託を購入することをスイッチングと呼びますが、つみたてNISAでもスイッチング自体はできるものの、買い直した分の非課税枠を消費してしまいます。そのため、つみたてNISAではより最初の銘柄選びが重要となってくるのです。

つみたてNISAで購入できる投資信託は181本

投資信託協会の公表では、投資信託の総数は5月現在のデータを見ると、5945本となっています(2020年5月末時点)。そのうち、つみたてNISAで購入できる銘柄は、投資信託とETFを加えてわずか181本です(同年4月現在)。金融庁の提示した要件、例えば信託報酬が一定以下か販売手数料無料、信託契約期間が長い、といった、投資信託を選ぶ基本的な基準をクリアしたものが厳選されています。

つみたてNISAの銘柄は、安全性の高い長期投資に適した条件がそろっているので、手数料が高すぎるものやハイリスク・ハイリターンな銘柄に手を出してしまう心配がありません。また、長期の資産形成で複利効果が得られない毎月分配型の銘柄も除外されています。投資初心者が失敗することがないよう、厳選された銘柄ばかりとなっています。

口座数が一番多いSBI証券のつみたてNISA口座の月間積立設定数ランキングを見ると、米・S&P指数に連動することを目指した「SBI・バンガード・S&P500インデックスファンド」(SBI)、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」(三菱UFJ国際)、MSCI コクサイ インデックス(配当込み、円換算ベース)に連動することを目指す「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」(ニッセイ)などが人気となっています。

銘柄選びのポイント

つみたてNISAで買える投資信託は、厳選されているとはいえさまざまな種類があります。では、どういった点に注目して選べばよいのでしょうか。

・投資先で選ぶ

投資信託の投資先は、国内の株式もあれば、海外の株式もあります。投資先をアメリカのみを対象としたもの、先進国や新興国というグループでくくったもの、それらを組み合わせているものなど種類はさまざまです。

投資先がどこかに偏ると、その国の経済・社会・政治などの情勢に依存してしまうため、バランスを取るという意味では世界中の株式に投資する投資信託がおすすめです。

また、株式だけでなく債券やREITといわれる不動産を投資先としている投資信託もあります。株式はハイリスク・ハイリターン、債券はローリスク・ローリターンのため、株式はアクセル、債券はブレーキともいわれます。

・インデックス投信とアクティブ投信

投資信託は、投資のスタイルによって「インデックス投資信託」と「アクティブ投資信託」の2種類に分かれます。インデックス投資信託は、日経平均やNYダウなどの指数に連動した運用を目指しており、アクティブ投資信託ではファンドマネージャーが得意な方法で運用するという違いがあります。

アクティブ投資信託は銘柄の入れ替えも多いため手数料が高く、成果の評価も時期によってまちまちとなるため、つみたてNISA銘柄はインデック投資信託を中心に選ばれています。

投資額や銘柄を選ぶ基準とは

いざ、つみたてNISAで購入する際に、投資経験がないと、結局どれを選んだらよいのか悩んでしまうでしょう。そこで、銘柄を決めるためのポイント2点を紹介します。

・資産額

現在持っている資産の額と将来の目標から、必要な増加率を計算します。そうすることで、どれくらいのリターンが必要なのかが分かります。もちろん、無理なリターンを設定するとリスクも大きくなりますし、つみたてNISA銘柄では大きすぎる目標を実現することができません。

・リスク許容度

投資先やリスクのバランスを取った投資は安全性が高いものの、なかなか資産が増えない問題もあります。そこで、自身がどの程度のリスクに耐えることができるのかを踏まえて、ある程度リスクを取った投資をすることも大切です。年齢や投資経験、資産、性格などを踏まえて、どの程度のリスクを取ることができるのかを考えてみましょう。

いくつ組み合わせたらよいのか

「何種類の投資信託に、どのように積立額を振り分けたらよいのか分からない……」というのは、投資初心者の悩みとしてよく出てくる問題です。しかし、購入する投資信託の数はあまり関係ありません。考えるべきは割合です。株と債券だけで考えるならば、20代はリスクを許容して株80%:債券20%、50代はリスクを下げて株50%:債券50%というように決めていきます。

また、「楽天・インデックス・バランス・ファンド」をはじめとしたバランスファンドならば、株式と債券のバランスが「株よりのもの」「債券寄りのもの」「半々のもの」などから選ぶこともできます。

銘柄選びに迷ったら信託報酬で決める

投資信託への投資において、どうしても外すことができないのが、運用手数料などを含む信託報酬です。インデックス型投資信託の場合は、同じベンチマークのものに投資していれば結果はさほど変化がないにもかかわらず、さまざまな事情で信託報酬に差があります。そのため、固定してかかるコストである信託報酬が安いものを選びます。同様に、近しい投資先の投資信託であれば、最後の選択基準としては信託報酬が安いほうを選ぶのもひとつの手段です。

どうしても自分で選べないときは?

各証券会社では、つみたてNISAの銘柄を選ぶためのシミュレーション機能を用意しています。まずはこちらを活用して決めてみるのもひとつの選択肢でしょう。

・楽天証券の「積立かんたんシミュレーション」

積立投資を始めるときに必要なのが、目標を設定することです。例えば、「65歳までに3000万円をためる」という設定から、必要な月々の積立額やリターン率を計算。さらには、過去3年の運用実績が目標とするリターン率以上の銘柄を検索できる機能も備えています。

・SBI証券の「つみたてNISAシミュレーション」

マイホーム購入や出産などの資金が必要なライフイベントなどいくつかを入力するだけで、おすすめの投資スタイルと資産配分が分かります。さらに、2つの質問に答えるとその意向に沿った投資信託も紹介してくれます。

・松井証券の「松井FP~将来シミュレーター~」

FP(ファイナンシャルプランナー)が対面で行う、ライフプランシミュレーションがWeb上ですべて完結。MILIZE社が保有するさまざまな統計データから「85歳時点での生涯収支」をシミュレーションし、将来の不足資金・余剰資金、月々の貯蓄方法までを知ることができます。

急な暴落が来たらどうしたらよいのか?

2020年の頭から、新型コロナウイルスの影響で市場は大きく下落しました。多くの投資信託も値下がりし、投資をしていて動揺した人も多いのではないでしょうか。これから投資を始めるにあたって、そんなときにどんな対処をしたらよいのかを事前に知っておくと安心です。

未来を保証できるわけではありませんが、積み立てている投資信託はそのまま持ち続けることをおすすめします。バブル崩壊やリーマンショックなど、歴史的に経済が大きく落ち込むことはありますが、永遠に下落し続ける相場はありません。

下がっているときは売るより買うことにメリットがあるときです。また、20年間積み立て投資を続けていくことで、複利効果もあって収益率は上がっていくはずです。

選んだ銘柄を変更すべきときとは?

現在積み立てている投資信託と同じ投資先のものが新たに追加されたとき、入れ替えるべきかどうかも悩ましい問題です。同じような運用成績なら信託報酬の安い投資信託を選んだほうがよいですが、わずか0.01%の違いでも銘柄変更をする必要があるのでしょうか。

期待収益率が年間1%、信託報酬の差が0.3%あるケースと0.1%のケースで、毎月3万円を20年間運用したと想定して利益を比較してみましょう。信託報酬差が0.1%しかないケースでは年間3000円強しか差が出ません。ところが、信託報酬差が0.3%になると20万円以上の差が出てきます。これを考慮すると、信託報酬差が0.3%以上あるようだったら、乗り換えを検討してもよいと言えそうです。

つみたてNISAをするうえでの注意点

つみたてNISAは、あくまで投資初心者が投資の知識がなくても少額から長期間の積立投資を行うための制度です。そのため、最低限の守りに注力しているものの、能動的な守りの体制はありません。

例えば、つみたてNISAの銘柄は金融庁が「一定の条件」を満たしている銘柄を選択していますが、必ずしも好成績を期待できるわけではありません。あくまでハイリスクにならないように選ばれたものです。

また、急落時にリスク回避をする方法も用意されていません。iDeCoに備えられている、定期預金や保険型商品という元本確保型の商品も、つみたてNISAでは選択できません。あきらめて売却するか、嵐が過ぎるのを待つかの2択となります。

つみたてNISAを始める前には、こういった点も考慮するとよいでしょう。