地方のバス会社が世界最先端のテクノロジーを使いこなせる理由
尾原: そろそろ、まとめなければいけないんですけど(笑)。
冨山: 僕らはローカルでバス会社をやっています。みちのりホールディングスはローカルなプレイヤーにすぎない。スーパーエンジニアなんて一人もいません。でも、世界最先端のバスロケーションシステムや、動的に最適ルートを選択するダイナミックルーティングのテクノロジーは使えるわけです。それを仮にオンプレミスで開発したら、ものすごい金額になってしまう。でも、いまは世界中のめちゃくちゃ賢い天才が、そこらじゅうで開発している。
尾原: それをアライアンスで借りてくればいいんですもんね。
冨山: こっちがやるぞと発信したら、世界中からオファーしてくるわけです。昔はローカルのバス会社がそこにつながることは不可能でした。それをやろうと思ったら、SIer(システムインテグレーター)に「こんなことをやりたいんだけど」と相談して、すぐに何十億円の見積もりが出てきて、やっぱりうちでは無理だと諦めるしかなかった。でも、いまは、世界中のベンチャーやら大企業やらにアプローチできて、たちどころにつながることができるわけ。だから、可能性がめちゃめちゃ広がっていて、ローカルなプレイヤーでもスモールなプレイヤーでも、それを使い倒していくということが、大事になってくるわけです。そのことに気づけない人は、むしろ、退出してもらったほうがいい。
尾原: 前のルールを残すなってことですよね。
冨山: 退出したからといって、雇用は減りません。むしろ、そういう人たちが退出していくことによって、それまでブラックな環境で働いていた人たちが、テクノロジーを駆使したホワイトな会社に移っていくことにもなる。
尾原: そこで地域経済全体が上がれば、結果的に、昔のプレイヤーも潤う。
冨山: この『ネットビジネス進化論』に書いてあることは、ネットビジネスのイノベーションの果実の、民主化論です。
尾原: そのとおりですね。今回おもしろかったのは、僕の本の話をしているように見せかけて、冨山さんのCXの本と融合しながら話しているような感じがしました。
冨山: 会社論でいったら僕の本になるけど、同じことを個人論に微分すると尾原さんの本になるんです。個人を積分したら、今度は会社の話になるし、それをさらに積分したら、今度は社会全体の問題になる。だから、全部連動しているわけです。
尾原: どっちも必読ということですね! 本日はありがとうございました。
(『ネットビジネス進化論』刊行記念 冨山和彦氏×尾原和啓氏対談、全3回おわり)