2020年の年明け早々から、新型コロナウイルスの影響で世界の株式市場は歴史的な暴落を経験しました。それから約半年、3月・4月のつみたてNISAの対象ファンドの流入は2200億円以上になり、制度始まって以来の水準で資金が流入しているといいます。こうした状況は、今こそ投資を始めるチャンスと言えるでしょうか?

新型コロナウイルスが経済に与える影響

コロナ,NISA
(画像=PIXTA)

2019年末から中国の武漢を発端として世界へと広がりをみせた新型コロナウイルスの影響で、2020年頭から世界の株価はこれまでにない暴落の局面を迎えました。3月16日にアメリカのNYダウ株価(ダウ工業株30種)は3000ドル近く暴落し、過去最大の下げ幅を記録しました。日経平均株価も9日、13日と1000円超えの急落局面がありました。

リーマンショック以上ともいわれたコロナショックは、世界各国の金融緩和を背景に急速な上昇に転じています。しかし、年初の下落の最中は底が見えず、投資に資金をつぎ込んでいた人々はその株価の行方を固唾をのんで見守っていました。このような歴史的な株価の暴落があったとき、どのように対処すればよいのでしょうか。

コロナ不況は投資チャンスになり得るのか

株価はすでに暴落前の高値を取り戻そうという勢いで上昇していますが、世界経済からはまだ、新型コロナウイルスの影響が消えたわけではありません。世界各国の政府が対応する金融緩和も歴史的規模であるなか、株価がどのように動くのかは神のみぞ知るという状況です。これを機に、今から投資を始めようと思っているのならば、今は口座だけを作って次の動きを待つべきときと言えるかもしれません。

しかし、積立投資の場合は事情が異なります。なぜなら、数十年単位の長期投資を目的とする場合、現在の相場の位置が高いのか安いのかはまったく判断がつかないからです。また今後も、今回のような大暴落が再び起こる可能性もあります。積立投資は、そういった大きな相場の上下に左右されることなく、ドルコスト平均法と複利の効果を享受しながら毎月決まった額を積み上げて資産を増やすことを目指しているのです。

証券口座の新規開設が増加

個人投資家から人気の高いSBI証券と楽天証券では、新型コロナウイルスによる株価の影響が大きかった3月までに口座数が急伸したと発表しています。

楽天証券の発表によれば、特に投資初心者、30代以下の若年層、女性の比率がそれぞれのカテゴリーで10%近く増加したということです。また、つみたてNISAのつみたて設定も2020年1月~3月はそれ以前に比べて急伸しています。これらのデータからも、多くの人が新型コロナウイルスの暴落をきっかけに投資を始めたことが分かります。

5月にマネーフォワードが行った「コロナ禍の個人の家計実態調査」によれば、これまで投資をしたことがない人のうち10%がコロナ禍で国内株式や投資信託などの投資を始めています。始めた理由として、53%が「株価の下落」、33%が「将来が不安なため」と答えています。

暴落時にNISAで投資するのがおすすめのワケ

積立投資でなく、一般NISA口座で個別株を買う場合においても、暴落時に購入することは有効です。それは、「投資の神様」ともいわれるウォーレン・バフェットも提唱する優良銘柄の「割安株」が、相場全体の下落の影響で誕生しやすくなるためです。

ただし、暴落時に個別株を買って利益を上げるには、銘柄を選択する能力が必要になってきます。新型コロナウイルスの暴落から2ヵ月が経過した現在、暴落前の株価以上に戻したものから、半値程度戻したもの、ほとんど戻らず横ばいのものなど、銘柄によって状況はさまざまです。

実際、新型コロナウイルスの影響によって恩恵を受けたドラッグストアやスーパー、バイオ、ITなどの会社の株価は特に大きく上がっています。銘柄を選別できなくても、今のところ3月の底値以上に下がっている銘柄はほとんどないため、負けづらいというメリットはあるかもしれません。

しかし、先にも書いたように、新型コロナウイルスの経済への影響は完全に終わったわけではありません。これからも株価が下がる可能性がないとは言い切れないので、状況を注意深く見守る必要があるでしょう。

NISAとはどんな制度なのか?

株式などを売買して出た利益や配当には、通常約20%の税金がかかります。しかし、NISA口座で購入できる非課税枠分については、この税金が免除されます。対応している金融機関にNISA口座開設を申し込めば、誰でも利用が可能です。いくつかの種類があるので、それぞれの違いを見てみましょう。

・NISA

2014年1月にスタートしたNISAは、個人投資家のための税制優遇制度です。非課税投資枠は毎年120万円に設定されており、超過すると特定口座という課税口座に自動的に移されます。利用期間は5年で、合計600万円を非課税枠として投資可能です。投資先は幅広く、上場株式や投資信託から選べます。

・つみたてNISA

つみたてNISAは、2018年1月からスタートした制度です。投資額の上限は毎年40万円で、月額にして3万3333円の積立が可能な長期・少額の投資に向いた設定となっています。投資先は金融庁が定めた主に投資信託で、さらに金融機関によって対応銘柄が一部異なっています。

・ジュニアNISA

2016年度から始まったジュニアNISAは、NISAの未成年者(0~19歳)版です。非課税投資枠は年間80万円分で設定されており、株式・投資信託などの配当・譲渡益等が非課税対象となります。

・新NISA

2024年からは、新NISAが始まります。現行NISAとの違いは、非課税枠が2階建構造になること。1階部分の非課税枠は毎年20万円となっていて、つみたてNISAと同様に金融庁が選んだ投資信託を中心とした金融商品しか購入できません。

2階部分は102万円の非課税枠となっており、現行のNISAと同様に上場株や投資信託などを購入できます。ただし、2階部分を使用するには、1階部分を少しでも利用する必要があります。

投資をするときにNISAを使うメリット・デメリット

NISAを一言で説明すると、投資の売買益と配当分の税金が非課税になる制度です。この制度のメリット・デメリットはどんなものがあるのでしょうか。

・メリット

配当金や売却益が非課税となるのが一番のメリットです。例えば、50万円で購入した株を80万円で売却し、30万円の利益を得た場合、通常ならば6万円程度を納税して手元に残るのは24万円程度となります。しかし、この株をNISA口座で買っていれば30万円が手元に残ることになるのです。

・デメリット

一見デメリットはないようですが、損失を出した際に注意が必要です。枠を無駄に使ってしまったというだけでなく、通常口座と損益通算できないため、通常口座で利益が出ていた場合に損失を合算できず、その分の納税が必要となるデメリットがあります。NISAのメリットを享受するには、とにかく利益を出す以外にありません。

ほかに、手続きをしないと5年間で強制的に通常口座に移されてしまったり、1人1口座しか開設できず、金融機関は1年単位でしか変更できなかったりなど、その特性をしっかりと把握していないと、効率よく使いづらい制度となっているので注意が必要です。

初心者におすすめの低リスクな投資方法

今回の新型コロナ暴落のようなことが起きたときに慌てないよう、投資においてリスクを下げる方法はいくつかあります。

・ドルコスト平均法を使う

ドルコスト平均法は、一定額の金融商品を定期的に長期継続して購入し続ける投資法の名称です。一定額に設定することで、投資信託の価格が安いときには数を多く買うことができ、高いときは少量しか購入できません。そのため、単価が上がりすぎないように投資信託を買うことができます。

・分散投資をする

投資商品には、国内外の株式、債券、不動産、金などのさまざまな種類があります。どこか1ヵ所に偏りすぎないように心がけましょう。どこかの資産が膨らんだときにはその一部を利益確定し、下がっているものを購入するのもリバランスの1つです。

コロナショックで株は世界的な全面安となりましたが、米国債の債券価格は急上昇(金利は急低下)だったという例もあります。

・リスク資産と無リスク資産のバランスを取る

現金・預金・個人向け国債などの無リスク資産とリスク資産のバランス調整も重要です。リスク資産が多ければ、資産を大きく増やすことができるものの、減るときも大きくなってしまいます。

新型コロナウイルスは投資環境だけでなく、一部の勤労収入にも影響を及ぼしました。そこで、通常時から給料の手取り6ヵ月分から1年分は現金(通常預金など)で持っておくと、暴落局面でも生活を脅かすような状況にはなりません。その後も冷静な対応ができるでしょう。

積立投資はリスクに強いのか?

積立投資は長い目で見て、資産が上下するリスクを減らす方法であることは間違いではありません。といっても、価格が変動する金融商品である以上リスクは伴います。積立が有効であると考えられる投資対象は、投資する資産が「短期的には下がる局面もあるが、長期的には上昇が期待できる資産」です。

投資に正解はありません。強いて言えば、負けたときが不正解です。そのためにも、購入する商品に対する知識はしっかりと持っておくことが最大のリスク回避とも言えるのです。

NISA口座を開設する方法

NISA口座は1つしか開くことができません。先に紹介したように、日本在住の20歳以上の場合は2種類のNISA口座のうちどちらを開くべきかを検討する必要があります。また、金融機関の対応内容もそれぞれに特徴があります。そのため、まずは各金融機関のNISA口座の特徴を把握し、自分に合った金融機関を選ぶことから始めましょう。

金融機関を選んだら、公式の申し込みサイトからNISA口座を開設することができます。インターネットからの申し込みと郵送の2種類に対応している場合がほとんどです。

口座を開設する前に知っておきたい注意点とは

「間違って2ヵ所にNISA口座の申し込みをしてしまった!」そんなときはどうなるのでしょうか?

NISA口座を開設した後で二重開設が確認された場合、使用しないほうの金融機関に非課税口座簡易開設届出書を提出します。もし、そちらの金融機関のNISA口座ですでに株を買い付けていた場合には、もとから一般口座で買い付けたものとして扱われます。その株を売却した場合には、譲渡益について確定申告をする必要があるので注意が必要です。もちろん、配当などがあった場合も同様です。

これまで解説してきたように、NISAを使った積立投資を行うときは、その特性をよく理解することが重要です。NISAを利用する際には、現在の市場環境や口座の利用法をよく検討したうえで、開設を検討してみてはいかがでしょうか。