中小企業成長促進法案が閣議決定された影響で、中小企業を取り巻く環境は大きく変わる可能性があります。特に事業承継や海外進出を計画中の企業にとって、この法律案は非常に重要な意味を持ちます。制度実施に先立ち、概要をしっかりと確認しておきましょう。

中小企業成長促進法案の実施で何が変わる?制度の概要と目的

事業承継
(画像=ndabcreativity/stock.adobe.com)

中小企業の事業承継問題は、社会全体にとって「喫緊の課題」と言われるほど重要視されてきました。その影響で、これまでも事業承継税制などの制度・支援は拡充されてきましたが、経営者の個人保証をはじめとした障害に悩む中小経営者は未だ少なくありません。

そのような経営者をサポートする目的で閣議決定された法律が、今回紹介する「中小企業成長促進法案」と呼ばれるものです。この法案は中小企業の廃業を防ぎ、かつ事業承継の円滑化や成長を国が支援するための土台作りとして、2020年3月に閣議決定されました。

施行は2020年秋ごろの予定ですが、仮に法案の計画通りに制度の拡充が進んでいくと、将来的に中小企業の事業承継や海外進出がスムーズになる可能性があります。

中小企業成長促進法案の具体的な施策は?チェックしておきたい「4つの軸」

では、中小企業成長促進法案では、具体的にどのような施策が講じられるのでしょうか。同法案の施策は、大きく以下の4つの軸に分けられています。

具体的な施策概要
【1】中堅企業への成長環境の整備中小企業から中堅企業に成長した後も、支援を継続するための制度を新設する。
【2】海外展開支援の強化海外展開を支援するために、信用力が乏しい中小企業の海外子会社に対して、日本政策金融公庫が直接融資をする制度を新設する。
【3】中小企業目線での政策体系の整理よりスムーズな形で中小企業を支援するために、類似の計画制度を統合し、成長段階に応じた体系に再整理する。また、その計画に紐づく補助金を、計画認定なしで申請できるように調整を行う。
【4】経営者保証解除スキームの拡充事業承継の際に、経営者保証を不要とする新たな信用保証制度を新設する。

事業承継に悩む中小企業にとって、上記の【4】は特に心強い施策です。既存の保証限度枠とは別に、最大2.8億円の「信用保証の特別枠」が設定されるため、金融機関から経営者保証を外してもらえる可能性が高まります。この施策により、事業承継自体を進めやすくなるのはもちろん、承継後の融資もスムーズに受けられる可能性があります。

中小企業成長促進法案の実施前に考えておきたいこと

中小企業成長促進法の適用をスムーズに受けたい場合は、事業者側も準備を整えておくことが重要です。たとえば、制度の概要や適用要件を細かく確認しておく、事業承継の計画をあらかじめ立てておくなど、万全の態勢を整えておけば制度実施後の初動が大きく変わってくるでしょう。

ちなみに、上記で紹介した【4】の施策は、親族内承継だけではなくM&Aも対象に含まれます。従来の制度に比べて対象範囲が広がっているため、「後継者が見つからないから…」と言って諦める必要はありません。

また、事業展開や成長を目指している中小経営者は、上記【1】~【3】の施策もしっかりと意識しておきたいところです。たとえば、【1】の施策によって中小企業の定義を外れた後も支援を受けられる形になるので、制度の利用を考えている経営者はこの点を踏まえたうえで、今後の資金計画・経営計画を立てる必要があります。

なお、中小企業成長促進法案では前例にないレベルで中小企業を支援するために、複数年にわたって生産性向上を後押しする「生産性革命推進事業」も措置される予定です。つまり、ほかの支援が拡充される可能性も十分に考えられるので、引き続き政府の動向はこまめに確認をしておきましょう。

まずは目的を明確にし、余裕をもって万全の準備を

中小企業成長促進法は多くの経営者にとって、経営のさまざまな部分をサポートしてもらえる心強い法律です。しかし、要件を満たさないと恩恵を受けられない可能性があるので、中小経営者は適用要件を細かくチェックしたうえで、余裕をもって準備に取りかかる必要があります。

また、事業承継や海外進出など、目的によって利用するべき施策が変わってくる点にも注意が必要です。目的に適した具体的な施策をしっかりと調べて、施行までに必要な準備を万全に整えておきましょう。(提供:企業オーナーonline


【オススメ記事 企業オーナーonline】
事業承継時の「自社株評価」どのような算定方法があるのか?
不動産を活用し、事業承継をスムーズに進める方法とは?
法人税の節税対策をご存知ですか?
職場の「メンタルヘルス対策に関わる課題・悩みあり」が6割以上
経営者必見!「逓増定期保険」で節税する時のメリット・デメリット