中小企業が融資を受ける際には、「借入時期・返済期間」を慎重に設定する必要があります。これらの点は今後の経営に大きく関わってくるため、安易に決めるべきではありません。今回は創業時と運転資金に分けて、借入時期・返済期間の考え方を解説します。

困ってからでは遅い!中小企業の融資は「早め」が原則

経営
(画像=siro46/stock.adobe.com)

まずは融資の原則として、中小経営者は常に「早めに申し込むこと」を意識する必要があります。もし借入が遅れると、以下のような弊害が生じる可能性があるためです。

・十分な給与を払えなくなり、従業員が会社から去ってしまう
・運転資金をねん出できない影響で、業績が下がる
・業績の悪化により、金融機関からの貸付条件が悪化する

たしかに無借金経営は理想のひとつですが、それにこだわって融資を限界まで先送りにすると、その後の選択肢は確実に狭まります。たとえば、有利な条件で借り入れることが難しくなるので、仮に融資を受けられたとしても、厳しい返済条件が経営を圧迫してしまうでしょう。

特に資金が限られている中小企業は、短い期間で資金繰りが悪化する可能性があるため、余裕のある段階から融資を考え始めることが重要です。

創業融資に向けた動き出しは、開業の2ヶ月~3ヶ月前が望ましい

では、中小企業が融資を受ける際には、具体的にどのようなタイミングで動き出せば良いのでしょうか。まずは、創業融資について考えていきましょう。

設備資金によって開業の準備を進める場合は、設備を購入するまでに資金を用意する必要があります。利用する制度や金融機関にもよりますが、一般的な創業融資では申し込みから融資実行までに1ヶ月ほど、信用保証協会の創業融資では2ヶ月ほどの期間を要するので、遅くても設備を購入する1ヶ月前~2ヶ月前には申し込みをしなくてはなりません。

また、必要書類を準備する期間や、利用する金融機関・制度を選ぶ期間も忘れてはいけないポイント。これらの点を踏まえると、「開業の2ヶ月~3ヶ月前」には融資に向けて動き出すことが望ましいでしょう。もちろん、ケースによって必要な準備期間は多少変わってくるため、上記のように逆算して動き出す時期を見極めることが重要です。

なお、法人名義で融資を申し込む場合には、基本的に登記簿などの提出が求められるので、事前に会社設立手続きを済ませておく必要があります。

運転資金の借入時期・返済期間の基本的な考え方

運転資金の借入時期も、創業融資と同じように逆算して考えていきます。申し込みの目安は、資金が必要になる「3ヶ月前」がひとつの基準になりますが、運転資金は種類によって借入時期の考え方が変わってくるので注意が必要です。

運転資金の主な種類概要
・経常運転資金現在の売上を維持するために、恒常的に必要になる運転資金のこと。「仕入・販売・入金」の流れを意識し、資金繰りの予測を立てたうえで借入時期を検討することが重要です。
・増加運転資金売上の増加などによって、キャッシュフローに大きな変化が生じた際に必要になる運転資金。経常運転資金と同じく、資金繰りの予測を立てたうえで慎重に借入時期を設定することが重要になります。
・賞与資金従業員へのボーナスを支払うために、夏季・冬季に必要になる運転資金。賞与支給月に合わせて、借入時期を調整することが大切です。
・決算資金納税や株式配当をはじめ、決算の時期に必要になる運転資金のこと。決算の3ヶ月前など、決算期に合わせて借入時期を調整する必要があります。

また、運転資金を借り入れる際には、「返済期間」も慎重に設定することが重要です。返済期間が短すぎると経営を圧迫しますし、反対に長すぎても返済期間中に借り入れられる融資額が減ってしまうため、各ケースに適した返済期間を設定しなければなりません。

返済期間を設定する際には、自社の返済能力はもちろん、「無駄に引き延ばさないこと」を意識する必要があります。毎月のキャッシュフローを把握し、会社に余剰キャッシュがいくら残っているかなど、まずは資金繰りの予測や資金計画をしっかりと立てて、可能な範囲で短い返済期間を設定するようにしましょう。

融資を受けるタイミングは経営を左右する!常に早めの行動を

資金が限られた中小企業にとって、融資を受けるタイミングは経営を大きく左右する要素です。自転車操業になってからでは、業績低下の影響で融資を受けにくくなる恐れがあるので、常に「早めの行動」を意識しなくてはなりません。

どのような状況になっても対応できるように、現時点では資金繰りに悩まされていない中小経営者も、これを機に融資を受けるタイミングを考えてみましょう。(提供:企業オーナーonline


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