資産運用では、日常であまり使われないような専門用語が多く登場します。この傾向は、特に投資信託や株式などの金融商品で顕著です。統計用語も頻出するため、「とっつきにくい」と感じる原因になっているのではないでしょうか。本稿では、特によく使われる3つの統計用語について説明します。

資産運用の効果は数字で測る

資産運用
(画像=takasu/stock.adobe.com)

資産運用は財産を増やしたり、将来にわたって有効活用したりするものです。その結果は、必ず数字で表すことができます。

統計は、あらゆるものを数字に置き換え、その裏に隠された物事の法則性や特徴などを明らかにするものです。統計用語を知って数字に強くなれば、データに基づいた論理的な考え方をすることができるため、より良い結果を手に入れることができるでしょう。

特に投資信託や株式などの金融商品の特性を理解するためには、標準偏差や相関係数などの統計用語を知る必要があります。そうすることで、リスクとリターンの関係を正しく理解できます。

統計は金融商品だけでなく、さまざまな投資判断に役立ちます。たとえば不動産投資をする際、「不動産価格は物価と連動するというが、本当か?」という疑問を持ったとします。この問題を検証するためには、それについて具体的に書かれた論文を探して読むのが近道です。その際、統計用語を知っていれば簡単に理解できるでしょう。計算方法を身につければ、自分で検証してみることもできます。

標準偏差

標準偏差は、数字のバラつき具合を表すものです。

資産運用では、よく「リスク」という言葉が使われます。一般的には「危険性」という意味で使われますが、金融商品では「リターンの振れ幅」を指します。たとえば、価格が毎年10%上昇した銘柄と1%ずつ下落した銘柄では、前者のほうがリスクは高いと言えます。

金融商品におけるリスクは、標準偏差で表されます。「リターンの振れ幅=リスク=標準偏差」というわけです。

標準偏差の計算方法を一言で述べると、「平均からの距離の平均」です。計算のステップは、以下のとおりです。

①:平均値を出す
②:各データから①を差し引き、2乗する
③:②を足し合わせる
④:③をデータの数で割る ⑤:④の平方根を求める

各データから平均値を差し引き、さらにその平均を求めるわけです。平方根の計算があるため、少しややこしく感じるかもしれません。「なぜ②で2乗しているのに、わざわざ⑤で元に戻すのか?」と疑問に思うでしょう。理由は、2乗することで符号(+または-)を取るためです。そのまま計算すると、「平均からの距離」の合計が0になってしまいます。

標準偏差は根気があれば電卓でも計算できますが、表計算ソフトのエクセルで「STDEV.P関数」を使って瞬時に求めることができます。

投資信託におけるリスクは「リターンの標準偏差」

投資信託を選ぶ際に最も重要な指標は、リスクとリターンです。リスクは、各年のリターンの標準偏差で求めます。

価格が以下のように推移した投資信託があるとします。どの年も分配金はありません。リターンは基準価額が1年でどれくらい増加したかを表し、リターン(年率)はリターンを1年前の基準価額で割ったものです。

基準価格リターンリターン(年率)
設定時10,000円
1年後10,500円500円5.00%
2年後9,500円-1,000円-9.52%
3年後8,000円-1,500円-15.79%
4年後11,000円3,000円37.50%
5年後10,100円-900円-8.18%

先ほどのステップに則ってリスクを計算すると、以下のようになります。

①:(5.00%-9.52%-15.79%+37.50%-8.18%)÷5=1.80%(平均リターン)
②:③(5.00%-1.80%)の2乗+(-9.52%-1.80%)の2乗+……+(-8.18%-1.80%)=18.21%
④:18.21%÷5=3.642%
⑤:3.642%の平方根=19.0840%

この商品の平均リターンは1.80%、リスクは約19.08%です。公的年金の管理を行うGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の場合、平均リターンは同じく1.8%程度ですが、リスク(標準偏差)約13%です。これに比べると、例に挙げた投資信託は比較的リスクが高いと言えます。

相関係数

相関係数は、異なる2つのものの関連性を把握したいときに使う統計指標です。計算結果は、必ず-1から1の間になります。数字が0に近いほど関連性が低く、1に近いほどよく似た分布であると解釈します(正の相関)。-1に近い場合は、反対の性質があると考えます(負の相関)。

資産運用
(画像=YANUSY編集部)

出典:年金積立金管理運用独立行政法人「2019年業務概況」

GPIFの2019年業務概況によると、国内株式と外国株式の相関係数は0.643と、やや強い正の相関が見られます。外国株式が上がれば国内株式が上がり、外国株式が下がれば日本国内株式が下がるということです。一方で外国株式と国内債券は0.105と、ほとんど相関はありません。

相関の低い商品同士を組み合わせると、分散投資の効果が期待できます。保有資産同士が負の相関にある場合、資産全体の標準偏差(リスク)は下がりますが、リターンも打ち消し合うため、大きな利益が出ることも少なくなります。ただし、分散することでリスクに対するリターンの割合を高められることが、ポートフォリオ理論によって証明されています。

計算方法は、それぞれの「平均値からの距離」を掛け合わせた数値を平均したものを、それぞれの標準偏差で割ります。相関係数をエクセルで計算するためには、「CORREL関数」を使います。さまざまな指標を組み合わせて相関係数を計算してみると、意外な関連性がわかって面白いかもしれません。

仮説検定

統計的仮説検定とは、科学的な根拠を求める際に不可欠な考え方です。金融資産や不動産価格の理論では、仮説検定を用いたさまざまな実証研究がなされています。

ある法則が科学的に証明されるということは、実験や調査によって数字で表されるということです。たとえば、「条件Zを満たす株式はリターンが大きい」という法則(仮説)を証明したいとします。これは、「条件Zを満たす株式のリターンを集めたデータA」と「一般的な株式のリターンを集めたデータB」を比較することで検証できます。Aのほうが全体的にリターンが高い場合は、仮説を証明できたことになります。

ただし、単純に平均値を比較するだけでは正確さを欠いてしまいます。たまたまパフォーマンスが良かった銘柄がいくつかあると、その影響が出てしまうからです。

仮説検定では、確率論を使って数値を比較します。上記の例の場合は、まず「データAとデータBのパフォーマンスは同じである」という仮説を立てます。もしデータAの結果がデータBと比べて明らかに偏っていれば、「条件Zを満たす株式は普通の株式ではない」と言えます。

このことを統計では、「データAとデータBには有意(意味がある)差がある」と表現します。「確率的にデータAとデータBが同じ性質のものとは考えにくい」というわけです。ただし「考えにくい」だけで、ひょっとしたら偶然結果が偏った可能性もあります。細かい説明は省きますが、論文などに「5%水準で有意」と記されている場合は、「実際には有意差がないのに、あるように見えてしまった確率が5%ある」ということです。

科学的な法則というと絶対的に正しいように思えるかもしれませんが、実際には確率論に基づいた「不確かなもの」です。だからこそ、次々と新しい理論が生まれるのでしょう。

仮説検定にはさまざまな種類があり、その多くはエクセルで計算できます。使いこなすには、少し専門性が必要です。ここでは、「世の中に絶対の法則はない」ということをお伝えしたいと思います。同様に資産運用も絶対に成功する方法はないため、いかにリスクを可視化して備えるかが大切なのではないでしょうか。

統計がわかると資産運用のリスクがわかる

金融商品への投資では、リスクや物事のつながりなどを数値化して判断材料にします。計算の成り立ちを知ることで、正しい判断やリスクに対する心の準備ができます。科学的法則に絶対はなく、資産運用にも「必ず儲かる」といった手法はありません。統計的な考え方を知っておくことで、冷静に対処することができるようになるでしょう。(提供:YANUSY

【あなたにオススメ YANUSY】
副業ブームの日本!サラリーマン大家になるなら覚えておきたいこと
2019年以降の不動産投資は「コミュニティ」が欠かせない
賃貸業界の黒船になるか。インド発のOYOの実態
不動産所得での節税に欠かせない必要経費の知識
賃貸管理上でのトラブル対応術とは?